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虹翼の天輝鳥  作者: 緒野泰十
第三章 金剛の翼巨人
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十話 巨大なる顔

 フードを取るとそこからは特徴のある男が出て来た。顔は美形で肩に着きそうなほどの長さの亜麻色の髪をもった男。目は吊り上がっており、一見すると怖く見られそうだが、それでも女の心を掴んで離さない様な顔立ち。初めて見たときは思わなかったが、アダルはその顔を見てどこかヴィリスを思い出した。それは彼女と彼が血を分けた兄妹だから。言ってしまえば顔の造形がどこかしら似ているのだ。しかし一点だけ人ではあり得ないような特徴を持っていた。それは両頬からこめかみの辺りまでが鋼色の竜の鱗で覆われていると言うこと。

「・・・・・・、ちっ!」

 フードを被っていた彼。ヴァールは自身に集まる視線に気付くと舌打ちを鳴らす。そして鋭い目つきでアダルを睨む。

「そう睨むなよ。お前が最初に遊んできたんだろ? というか睨まれる訳無いよな、俺」

 呆れつつも自分の言うことが正論であるような言いぶりをする。勿論自分の言っていることが矛盾していることだってアダルも理解している。何せ投げ飛ばしたのは自分であり、その拍子にフードが外れてしまうのは必然なこと。それを分かっていてもアダルは今の言葉を口にした。何せ彼はフードを外すように促し続けた。それを無視したから強硬手段をとったまでなのだから。

「・・・・・・。まあ、いいだろう。お前の促しに答えなかったのは自分なのだからな。しかしそれでも・・・・」

 立ち上がると同時にヴァールは一度竜人達を見渡す。睨めつけられた者達は一瞬にして体を強直させて、さらに震えだす者さえもいた。それを見たヴァールは溜息を吐いた。

「乱暴すぎるのではないか? 一応久々にあった共だろう。自分は」

「お前のおふざけに付き合うほど今は余裕がないんだよ。状況を見ろよ」

 そうかもしれんがと呟きながら曖昧に笑う。

「それに今来る敵対者の実力は未知数だ。もしかしたらお前の力が必要になるかも知れない」

「・・・・・・っ! 反論できない正論を振りかざしおって。お前のそういうところは変わって欲しかったぞ」

 そうかいと返しながらアダルはある方向から目を離さなくなった。

「それで? 参加してくれるって事で良いんだよな?」

「ここまでバレてしまえば参加せざるおえないだろう。だが、自分が参加するのはお前が苦戦を強いられたときだ。それまではお前の実力を見極めさせて貰うぞ。鳥人」

「・・・・・・・。ああ、もういい! 好きに呼べよ!」

 投げやりな返事をしながらアダルは非戦闘員が潜ったくぼみに結界を何重にも張った。

何があっても安全にそこに入れるように。ちなみにその結界には防音防視の加工に加え、衝撃も伝わらないように施した。それは中にいる者達が心配為ないようにというアダルの配慮であった。

「アダル殿。敵はあとどのくらいで?」

 レティアの問いかけに彼は一瞬目を合わせた。そしてその後直ぐに顔を上げて、空に目をやる。

「あと・・・・・・・。一分ほどか」

「!? 一分ですか!」

 驚愕で自分が想定していた物よりも大きい声が出てしまった。しかしそんな事は気にして入られず彼女はアダルに近づく。

「・・・・・空を見ていたと言うことは敵は空からの襲撃と言うことですか?」

「可能性があるだけだ。まあ、悪魔種の攻撃がどこから来るって言う確証なんてもてないがな」

 言い終わるとアダルはレティアのもっている剣に目を向けた。

「それにはどんな能力が付与されているんだ?」

 アダルの言葉に彼女は絶句する。だが状況が状況なだけに直ぐに気を持ち直して、簡素に答えた。

「これは物理に影響する光を出すことが可能です」

「・・・・・・。そうだったな。じゃあ今すぐにその光で自分の周りを囲っておけ。いいか?」

「分かりました」

 鬼気迫る声にレティアは何故とは聞けずに剣を抜き、光を自身の周りに展開させた。自分の周りに光の膜を展開させ終えたと同時に彼女は突如辺り一面が暗闇に包まれた。突然の事で半ば混乱しつつもアダルの方に目をやった。腕が光っていたから彼の居場所は一発で分かった。しかし正直言って見なければ良かったと後悔もした。何故なら彼の表情が固まっていたのだ。額からは冷や汗が数滴たれてもいた。だが、自分でもそうなっていたのを気付いたのか直ぐに気合いを入れ直すかのように顔を引き締めた。

「彼奴ら。本気で大竜種の殲滅に乗り出すつもりかよ!」

 そう呟くと翼を展開させた。暗闇の中だとその輝きは一層に輝いた。それこそ今光のないこの状況においても周辺を明るく照らし、暗かったことなど嘘のような昼間のような光を提供した。

「ヴァール!!! 残念ながらお前にも参加されざる終えなくなった!」

「・・・・・・・・。仕方があるまい。あれほどの巨体なのだからな。お前一人で対処も苦労するだろう」

「その通りだ! あの様子だとあいつは世界樹に向かっている。ここで止めないと大変なことになる。いきなりだが、全力で行くしかねえ!」

 叫びながらもアダルは飛翔し、自身を発光させた。次の瞬間には元の姿になっており、両腕を眩く発光させていた。

『これでどうにかなれば一番良いんだけどなっ!』

 猛スピードで上昇する彼は発光していた両腕にさらに光を集めて肥大化させていた。

「ぐぅ!」

 空には何かが覆い被さっていた。アダルの光によって地上からでもそれが確認出来た。

「あれは・・・・。なんだ?」

 その場にいた誰もがそれを見て固まった。上昇し続けていたアダルでさえ、それを確認為ると急停止したのだ。困惑もあまり出た声も誰の物か判断することすら出来なかった。

『これは・・・・・・。ヤバいな!』

 アダルすらも思わずその場で体が震えだした。彼らは絶望と言っても良いほど感情を抱いた空に覆い被さっていた物。それは巨大な人の顔だった。勿論ただの人の顔などではない。目が三つあり、口が裂け、そこからは鋭利な歯並びの良い歯が見えている。肌はヘドロを思わせるほど澱んでおり、髪も不潔そうだった。時折口から出る舌は二又に分かれていた。言ってしまえばそれは巨人といっても過言ではない。しかしそれはあり得ない。この世界において、巨人という種族は一切確認されていないのもあるが、何よりも大きすぎるのだ。ただの頭部でさえ、ここら一体の光を遮断できるほどの大きさを誇る。その顔の大きさからその体の大きさを想像するのはある意味で容易である。だがそれを安易に想像すると皆が絶望する。こんなに大きい敵にどうやれば勝てるのだろうかという事を考えてしまうためだ。

「なるほど。本気で世界樹を倒そうとしているな」

 そんな巨人を目にしてヴァールは関心したように頷いた。

「あれほどの巨体であれば世界樹をどのようにも出来るであろうな!」

 周りの空気を読まずに何故か愉快げに笑い出す始末。彼の周りにいた者達は不思議で不思議仕方なくなった。世界樹を倒そうとしていると言うことは彼の故郷を破滅させると言うこと。それなのになぜヴァールは笑っていられるのだと。

「本気でそう思い込んでいるのなら片腹が痛いぞ」

 急に感情が反転したようにその表情から笑みがなくなり、冷たくすました顔を作った。

「おーーい! 鳥人! 観察してみたが! そのデカ物は体の筋肉があまり発展していないようだ! 狙うのなら間接部を狙え!」

 ヴァールは助言を大声で叫ぶ。だが、いくら大きな声を出したところで上空にいるアダルには正確には届いていない。微かに声が聞える程度だ。だがそれで良かった。アダルはヴァールガ何か言っているのを気付くと彼の方に目を向けて、目をこらした。

『・・・・・。筋肉が発達していない・・・・か。なるほど、確かにそう言えるか。だがそれでもこいつは大きすぎるんだけどな。あいつ俺一人でやらせるつもりかよ』


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