少女は初めて大人に憧れた。
しばらくすると、ダリアがやってきた。昨日の服装とは違い、ニーナと似た、白いワンピースを着ていた。
「あ、ダリアおかえり!」 とニーナ。
「おかえりなさい」 と夢亜も言う。今までほとんど使わなかった言葉なので、少し恥ずかしい。
「ただいま。よく眠れた?」
「はい、ダリアさんはどこに?」
「私はあの後仕事。これでも成績トップなのよ。この家だって、優秀な天使にしか貰えないプライベートルームなの」
という事は仕事中に酒を飲んでいた事になる。それでも優秀な成績を取れるダリアに、夢亜はなんだか可笑しくてクスリと笑った。
「そうだダリア、夢亜のやりたい事が見つかったんだよ!」
ダリアはニーナから聞くと、「それは素敵ね」微笑を浮かべた。
「行くところは決まっているの?」
夢亜とニーナは顔を見合わせ笑い、せーのの掛け声で同時に言った。
「「遊園地!」」
ダリアが来る前、二人で決めたのだ。
「それで、ダリア。やっぱり実態化したいのだけど、あたしは翼を隠せばいいけれど、夢亜はどうしよう? バレたら死人が生き返ったってパニックになっちゃう」
「なるほど、それなら良い方法があるわ」
「なんですか?」
夢亜が尋ねるとダリアは笑みを浮かべ、こう答えた。
「簡単よ、髪を切って化粧すればいいだけよ。私がやってあげる」
夢亜は戸惑った。それで本当に分からなくなるだろうか?
「大丈夫でしょうか?」
「女は化粧で変わるのよ。それこそ魔法みたいにね。そこが女のすごい所なの」
「ダリアは髪を切るのがとっても上手いんだよ! いつもあたしの髪を切ってくれるの」
ニーナ少し自慢げには自分の長い金色の髪を手ですくって見せた。
化粧や髪形なんて、いままでほとんど気にしたことが無かった。髪は無造作に伸ばしっぱなし、使っていた物はリップクリームくらいだ。
――彼女の様な、大人の女になりたい。強い憧れの気持が夢亜の背中を押す。ダリアの目を真っすぐに見つめ言い放つ。
「ダリアさん、よろしくお願いします」
「任せなさいな」と彼女は力強く言い放った。




