やり残した事
翌朝、目が覚めると、見知らぬ部屋のベッドに寝ていた。ゆっくりと部屋を見渡すと振り子時計、レコードプレーヤー、大昔の海外映画のポスター。なんだか昔にタイムスリップした様な部屋だった。隣では、ニーナが小さく寝息を立てていた。どうやらニーナがここまで連れてきてくれたらしい。
「んっ……」
やがて彼女はゆっくりと目蓋を開け、夢亜の方を見て微笑んだ。
「おはよう夢亜。 よく眠れた?」夢亜はコクンと頷く。
「そっか、良かったぁ」
「ここはどこ?」
「ダリアの部屋。あたしも一緒に住まわせてもらってるの」
目が覚めてくると、ある感情がはっきりとしてきた。その正体は罪悪感だった。
「ねえ、ニーナ」
「うん?」
「ごめんなさい!」
夢亜は大きく頭を下げた。ニーナは驚いたように目を丸くした。
「わ、どうしたの?」
「私、あなたに今までひどい事を言ってきた」
「あぁー、その事ね。全然気にしてないよ」
「でも!」
食い下がる夢亜にニーナは優しく告げる。
「だって夢亜は友達なんだから、そんなの全然許せちゃうよ」
――友達。
その響きに、心臓の鼓動が鳴る。それはきっと世界で一番素晴らしい言葉だ。
「あのねニーナ。私、やり残した物が見つかったわ」
キョトンとする彼女に夢亜は告げる。
「ニーナ、あなたと一日一緒に遊びたい。それだけでいいの。だからお願い。私と――遊んでくれる?」
天使の少女はその問いに答えるように、向日葵の様な顔をほころばせるのだった。