空は汝のものにあらず
某所で「飛行機が別の兵器のために廃れた状況」の話題になりかけたので、参考になればと思いその辺りの考察を。
まず、前提として飛行機が現在なぜ地上及び海上の兵器に対して優位かを。
1)位置エネルギーの優位
高いところにいる、それ自体で発生する優位です。地表からの攻撃は、必然撃ち上げになり、飛行機のいる高度に達するまでに重力による減衰でエネルギーを失います。逆に、航空機からの攻撃は打ち下ろしになり、火器本来のエネルギーに位置エネルギーを加算することになります。
基本的には装甲は地表にいる方が強い(航空機は飛ぶために軽量でなければならず、その他の兵器の基準に照らせば総じて紙装甲)のですが、総重量や重心の問題で上面装甲はあまり強く出来ないことの方が多く、これも航空機が優位になる理由となるでしょう。
2)機動性の優位
戦術機動性。
航空機は障害物のない空中を高速で3次元機動できます。また、地表からは距離があるので将来位置の予測が困難になります。逆に低速で地表を2次元機動する地上兵器や船舶は航空機から見れば将来位置の予測が立てやすく、捕捉しやすいと言えます。したがって攻撃も回避も航空機側がイニシアチブを取ることになります。
戦略機動性。
航空機は広範囲を高速で移動できます。このため必要な場所、必要な時に自力で移動することが容易で、戦術の幅が広く少数で広域をカバーできることを意味します。
以上二つの優位のどちらか、できれば両方の優位を崩さねば航空兵器を衰退させることは説得力を欠くことになります。
具体例
既存の創作物で思いだせる類例を上げてみます。
1)機動戦士式
何とか粒子による電子機器の性能低下でレーダーや誘導兵器が使えない、あるいは当てにしにくい、という状況が設定されました。これで似たような射程でのどつき合いを実現。さらに月チタンの強固な装甲で機関砲程度では牽制にもならないとし、同程度の高度まで跳躍できることにして位置エネルギーの問題をクリア。火砲が光速のビーム兵器で撃ち上げ、かつ予測射撃が難しい案件も緩和しています。ただしファーストでは速度優位は諦めていますし、両陣営とも航空機は依然運用されていました。Zで飛行形態に変形できるMSが設定され、それ以降は明らかに航空兵器は衰退しています。
類似の設定としてはやはり電子装備に悪い環境を設定し、有視界飛行を行うヘリコプター以外はほとんど運用されない設定の太陽の牙Dなどが。
2)聖戦士D式
人型であっても航空機と同等以上の空中性能を持っているので飛行機が必要ない。かなり力技。エウレカとかもこの伝?
3)5星式
分身ができるほど高速機動ができてパイロットも人外の身体能力。なので航空攻撃が当たらない。レーザーの高出力・長射程化でむしろ遮蔽物のない飛行機は戦力にならなくなり衰退。ここだけの話、あまりにメジャーになりすぎて真似はしにくい。