主人公にツンデレ幼馴染は必要不可欠
本当は一日で更新するつもりだったんですけどね……。
太田さんを家まで送り届けた後、僕たちは帰路に着いた。
時刻はもう四時を回っている。
「どうしましょうか……」
「どうするも何も僕たちはこれを柴田さんに報告するだけだろ それからは当人たちの問題だ」
外野が口出す必要はない。
どうせまた全員が幸せになる方法とやらを模索しているのだろう。
「ですが……私は太田さん家族を奪ってあげたくないです 勿論、柴田さんからも」
「無理 クローン技術がもっと進んだ未来なら可能だったかも知れないけど」
家族か……。
太田さんはどうやら本当にスイの事が好きなようだ。
スイの話している時の笑顔は印象に残っている。
「確かに酷な事かも知れないがこちらも頼まれてやっているからな」
「ですが……」
「ですがもヘチマもない」
また雪の悪い性格が出た。
こうやって何でも首を突っ込んで掻き乱そうとする。
だがそれが終わった後は何故か関わった人間が幸せになっている事が多いのが癪だ。
それはよくあるファンタジー作品での勇者を彷彿とさせる。
「私、明日にでも太田さんの家に行ってみようと思います!」
「またお前はそうやって……」
「でもここで選択肢を間違えて後悔はしたくないので」
「やっぱ主人公だよなー」
「何か言いました?」
心の中で喋ったつもりが声に出てたようだ。
「別に、あー、もう分かった 行ってこい どうなっても僕は知らんからな」
「はい!」
嬉しそうにしやがって。
パタパタと揺れる尻尾の幻覚が見える。
「これがツンデレというやつですか」
「どういう事だ?」
「いえ、何でもないです……自覚がないのが更に……」
最後の方は小声で言ってて聞き取れなかった。
それにしても寒いな……。
「雪は薄着だけど大丈夫か?」
「少し寒いですけど大丈夫ですよ ほら雪なので」
雪だから寒いのは平気らしい……な訳あるか!
「ほらコート掛けてやるから」
雪にコート掛けるが少し大きい。
小学生が少し大きめの合羽を着ていると言ったらそれっぽいな。
「今、失礼な事を考えられた気が……」
「気のせい」
雪は腑に落ちないといった顔でこちらを見ている。
自販機で何か買おうか。
「お、コンポタある」
やっぱ冬の自販機といったらコーンポタージュだよな。
「ほれ」
雪に買ったコンポタを軽く投げ渡す。
「ありがとうございます」
コプコプとコンポタを飲む雪を見ていると小さい子をこんな時間まで連れだしてる事に罪悪感が湧いてきた……。
警察に職質されても文句言えないな。
……あ、おっさんの事すっかり忘れていた。
もうそろそろ夜が明けそうだ。
雪を家まで送り届けたら所謂朝帰りというわけだ。
あの親馬鹿に何されるか分かったもんじゃない。
「事情聞いてくれるかな……」
「何がですか?」
「いや、雪が朝帰りする事であの親馬鹿が事情も聞かずに襲いかかってくる可能性がな」
頭の上にはてなマークを浮かべる雪。
そのまま純粋に生きてくれ。
「……なっ」
ようやく、答えに行き着いたのか顔を林檎のように真っ赤にする雪。
顔を赤くした無表情娘の出来上がりだ。
「というわけで事情説明よろしくな 正直に話すのもあれだし嘘を織り交ぜながら」
「こほん……はい 分かりました 夕とカラオケに行っていて遅くなったと」
「いや、それだと二人で居た事には変わらないから大勢で居た事に……あ、無理だな」
大勢だと孤立してしまう病の雪には無縁の話だった。
「何ですか その何か察した表情は」
と言われても事実なんだからしょうがない。
「でも夕は父から信頼されていますし大丈夫だと思いますけどね」
しんら……い?雪に何かある度真っ先に僕のせいにして襲い掛かってくるような人間に信頼なんてされてないだろう。
今日もルアまで行くと家前で待ち受ける筋肉に絞め落とされる未来が見える。
かといってまだ四時を少し過ぎた時間だし雪に一人で外を歩かせるわけにはいかないし家までは送り届けるつもりだ。
「おっさんには連絡入れているんだろ?」
「はい 友人と一緒に居るので今日は遅くなると……私もここまで遅くなるとは思ってなかったもので」
スイの写真を見てどうしようか悩んだ挙句、カラオケでノリノリで歌ってたからな。
そりゃあ遅くもなるだろう。僕も人の事言えないけど……。
「面倒臭いしちょっと相談があって僕と他の人二人ぐらいで徹夜カラオケしたとでも言っとけばいいんじゃないか?」
「そうですね 一々、考えるだけ無駄ですね 尊い犠牲です」
え?僕に危害が及ぶの確定?
「骨は拾ってあげます」
「雪さんやっぱ少しぐらいは説得お願いします」
さっと目を逸らす雪。
「はい……」
「絶対する気ないだろ!」
駄弁りながら歩いていたら雪の家が見えてきた。
なんか家の前にゴリラが見える。
あ、こっちに気づいた。
「クソ最上……一緒に帰ってきたってこったら覚悟出来てるんだよなあ?」
拳を鳴らしながらゆっくり近づいてくるゴリラ。
雪の後ろに隠れる。
「いや、これには深い事情がですねー……」
「そうですよ 事情を聞かずにいきなり手を上げるのは駄目ですよ」
「うっ」
娘には弱いゴリラであった。
「分かった 話してみろ」
「夕と他の女の子とカラオケに行ってました」
正直に言っちゃ駄目だろ!
「さてと最上 覚悟出来てるよな?」
「……はい」
この日、僕は筋肉に締め上げられ星空で輝くこととなった。
さて行きますか。
太田さんに大事な話があるとメールをして会って貰えるようになりました。
夕が言ってた事も尤もだと思います。
だけど私はこのまま終わらせたくはない。
いつか私を助けてくれた照れ屋な主人公みたいに少しでも皆が幸せになれるように全力を尽くしてみせます。
もっと話が進んでる筈だったのに全く進んでない……。
スイの事が終わるまでは大きなプロローグのようなものなのでそう思ってくれれば。
次の投稿は少し遅れるかも?
一週間以内には頑張って投稿できるように頑張ります……(必ずとは言えない