少女と猫
やっと三話を投稿できました。
今回は少し短め。
日が沈む夕暮れ時。
我は眷属であり我が家族の魔獣 黒狼と一緒に街を徘徊していた。
「朝や昼より夜の方が好き」
ふっふっふ、何故かと聞くか我が友 黒狼よ。
そんなの決まっておる我の名はヴァンプ・グランロード。
吸血鬼の始祖なり!
我は吸血鬼だからな……太陽は敵だ、だから夜しか行動が出来ないのだそんな当たり前の事も忘れたか黒狼。
何、今は夕暮れだと?
夕暮れは太陽の力が衰える だから我もこうして外に出ることが出来るのだ。
決して夜に散歩するのが怖いわけではない。
「くぅ〜ん」
そうかそうか。
謝るなら許そう我は寛容だからな!!
すると急に黒狼が立ち止まった。
「グルル〜バウ!」
黒狼が威嚇をしている……敵襲か!
視線を移し黒狼が見つめる草むらを見るとガサガサと草むらが揺れ動き何かが飛び出してきた。
「にゃ〜ん……」
「なっ!」
そこには泥だらけの灰色の魔獣が居た。
とても可愛らしい見た目をしておる。
確かこの人間世界では猫と呼ばれていた筈だ。
我は猫に近づくすると猫は警戒してか距離を取る。
「チッチッチ」
手を動かすが依然、警戒したままだ。
どうしたものか……。
ぬっ。
黒狼が袋を引っ張る。
そういえば我には最終兵器があるのを忘れていた。
小魚を煮て干しカルシウムたっぷり味噌スープの出汁にもなるこの煮干しが。
煮干しを所持しといて本当に良かった。
今日の晩御飯の献立に使うつもりだったがしょうがない。
「おいで~ 煮干しだよ 美味しいよ〜」
耳をぴくぴくと動かしこちらを凝視する。
お、反応した。
猫は恐る恐る近づき我の手に乗せた煮干しを頬張る。
おお、愛いやつじゃの。
首輪はしてないか……。
まだ子猫だというのに。
猫種はアメリカンショートヘアだろうか。
脱走したか捨てられたか……後者だとしたら腸が煮えくり返る思いだ。
まだ生まれてからそんなに経っていないだろうに。
「うちにくる?」
とっさにそんな言葉が口から出た。
この猫に自分の存在を重ねてしまったのかも知れない……。
偽善だと分かっている だが我は放っておく事など出来なかったのだ。
「にゃん」
心なしか頷いたように見えた。
「本当にいいの?」
「にゃん」
そ、それならまずは此奴を我の家に連れてかないとな。
子猫を抱きかかえ黒狼のリードを持つ。
黒狼も分かってくれてるようで我が居城の方向へ真っ直ぐ歩いて行く。
我が居城はとある一軒家だ。
昔、勇者に敗れた我は仕方なくこの世界へ転生し母君と父君と暮らしていたが少し前に両親が事故により亡くなり、我は両親の残した遺産で生活している。
我はじいじ……じゃなかった父上のお父様のお陰でまだこの家に住めている。
成人すればこれ以上迷惑は掛けられないからこの家を売り払いさっさと出て行くつもりだ。
我にはこの家は大きすぎる……。
おっといかんいかん……少し感傷に浸ってしまった。
今日、我の家族となるこの猫……名はなんとしようか。
「ねえ、名前は何がいい?」
「んにゃ?」
問いかけてみるがやはり答えてはくれない。
「じゃあ白虎とかどう?」
灰色だが頑張れば白に見えなくもないからいいだろう。
「ふにゃ?」
お、白虎という名に反応したか。
「なら君は今日から白虎 一緒に暮らす」
「んんにゃあ〜」
か、かわゆい……。
「今日から家族だからね お母さんだと思ってくれても構わない」
と、取り敢えず帰ってこの子を置いて買い物に行って色々買い揃えてやらないと。
首輪は何色にしようか……あ、今日は一緒にお風呂に入ろう。
この子との今後を思うと顔がにやけてしまう。
今の私を鏡で見たらとてもだらしない顔をしているだろう。
でも今日は自分を騙す仮面を脱いでしまいたい。
お父さん、お母さんそれにじいじ……大切な家族がまた出来たよ。
私はもう一人じゃない 黒狼が居てそして白虎が居てお母さんとお父さんと過ごしたあの家がある……私にはこれだけで十分。
家に着き太田と書かれた表札をなぞる。
「ねえ、白虎 君も今日から太田白虎 私の大切な家族で友達だよ」
そういうと白虎は意味を知ってか知らずかにゃんと鳴いた。
ふふっ。
家の鍵を開け黒狼を犬小屋に繋ぎ白虎を私の部屋へ入れておく。
「じゃあ直ぐに帰ってくるから待っててね」
「んにゃん」
か、かわゆい。
あまりの可愛さに抱きしめたくなったけどここは我慢。
苦渋の思いで部屋から出て階段を駆け下りる。
直ぐに帰ってくるから待っててね。
自転車に乗り全力で走る。
目標は近所のホームセンターだ。
猫は飼った事がなかったがあんなに可愛い生物だとは思わなかった。
あの僅か数十分で犬派だったが猫派にもなってしまった。
猫……恐ろしい。
私は小さな家族の事を思い自転車を走らせるのだった。
自分も昔は犬を飼ってて犬派と呼ばれる人種でしたが小学校低学年ぐらいの頃に親戚の家に泊まりに行った時、親戚が猫を飼っていましてそれで猫の可愛さに目覚めてそれ以来猫派ですね。 猫最高です。