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出席番号4番 エンドウ サヤカ

声優志望のエンドウは、レンタルショップでアルバイトをしながら、小さなライブスタジオで歌ったり、演劇や朗読会に出たり、アイドルもどきの活動をしていた。


念願の声優の仕事は、アダルト系のアニメぐらいしかこない。

それでも、当分は声優を目指して頑張るつもりだ。



エンドウのルックスは、美形で、胸が大きい。

それでいて、太っているわけでもなく、脚は細くて長い。


しかし、駅伝をやっていたのが原因なのか……。

太ももだけが極端に太いのが残念なところだ。


そして、もっとも残念なのが、ちょっとした仕草に親父っぽさが満載なところだ。



エンドウは、アイドルもどきの活動の一環として、ブログを立ち上げている。

可愛く撮れている自分の写真と親父っぽいプライベート写真。

可愛い日記と親父っぽいコメント。

と、ブログには、ごちゃごちゃと混ぜ合わされてアップされている。


そのため、ブログだけを見た人からすると、エンドウはよくわからないキャラになっていた。


しかし、そのギャップがウケているのだろうか。

ブログ自体の人気は悪くない。

アクセス数や書き込み数はいい数字だ。



「サヤカ、相変わらず気ままにしかブログ更新していないのに、なんで人気があるのだろうね。」


フルタが、エンドウの横で団子を頬張りながら言う。

中学のこのクラスには、ズケズケとものを言う女子が多かった。

古田は、その代表格に挙げられる。


駅伝部で体育会系だったエンドウは、女子の上辺だけの会話というのが苦手だった。

だから、ストレートに言ってくれるフルタとは、気が合った。

2人でいるときは、お互いに思ったことを口にするのは、あのときから何も変わっていない。


「あんた、食べるか、しゃべるか、どっちかにしなさいよ。

 ブログって面倒だから、つい更新を怠っちゃうのよね。

 それでも見てくれるなんて、ありがたい話だよね。

 見てくれている人たちに感謝だよ。」


「セクシー写真が載っているわけでもないのに、何であんなに人気なのだろうね。」


「それは私の魅力でしょう。私は脱がなくても魅力的なのよ。」


「珍獣として見物しがいがあるからか。見ていて飽きないもんね。」


「口のまわりにタレつけたアンタに言われたくないわよ。」


エンドウに指摘をされ、フルタは慌てて口を拭う。

そんなフルタを見て、エンドウは吹き出し笑いをしてしまった。


「でも、男より女に人気なのでしょう。

 女子高だったとはいえ、女子のファンクラブがあったというのは……。

 なかなかの男性ホルモンですわな。」


「あんた本当にムカつくわね。

 でもね、私のファンはどちらかといえば男っぽい女の子だったわよ。

 私を女の子としてファンがついていたの。」


「そんなの、どうでもいいわよ。

 男にモテないのは変わらないじゃない。

 どうせオタクの男ぐらいしか引き寄せられてこないのでしょう。

 その顔と胸がもったいない。」


エンドウとフルタは、高校から別々になった。

それでも、中学卒業後から現在まで、頻繁に連絡を取り合っていた。

今でも休日に会ってショッピングしたりカラオケに行ったりする関係だ。


エンドウとフルタは、今日もいつものように軽口の応酬を楽しんでいた。


それなのに、エンドウは突然真顔になる。


エンドウからの返事が止まり、フルタは怪訝そうにエンドウの顔を覗き込む。


それでも口を開こうとしないエンドウに、フルタは持っていた団子の串でエンドウの頬を突こうとする。


「あんた、いい加減にしなさいよ。

 私のことを何だと思っているの。」


エンドウが、団子の串で突こうとしたフルタの手を叩き、噛みつくような勢いで言う。


「もちろん珍獣。

 それで何か悩みでもあんの。

 口内炎でもできたか。」


「あんた、人の悩みを本気で聞く気あんの。

 私は深刻に悩んでいるのよ。

 今の私の表情を見て、よくそういうことをしようとするわね。」


フルタは、エンドウの肩をポンポンと叩く。


「リエ姉さんに話してごらん。スパっと解決してあげるさ。」


フルタのふてぶてしい態度に、エンドウは大きな溜め息をついた。


出発して早々に名物の団子屋に足を止め、ホンダたちとはぐれたグループに漏れることなく、フルタとエンドウは入っていた。

しかし、立ち止まって食べているグループを置いて、団子を片手に歩き始めたエンドウとフルタは、2人だけ孤立した状態だった。

ずいぶんと離れた前方に、クラスメイトたちの背中がやっと見える感じだ。

後ろは、まだ団子屋の前で止まっているようだ。


エンドウは、周囲を見渡してフルタの他には誰もいないのを確認する。


なんだかんだといっても、古い付き合いのフルタには、いつも何でも話してしまう。

それでずいぶんと肩の荷が楽になるというのは、毎度のことだ。


自分の中にため込んでいないで、誰かに話すというのが大事なのかもしれないと思いながら、フルタの毒舌を覚悟し、エンドウは悩みを打ち明け始めた。

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