8/31
第二章・序
青年は小さなくたびれた一軒家の玄関に立ち、暫時の思考に耽る───
拝啓。まだ見ぬ父さん、母さん。お元気でしょうか。僕は元気です。
今はどこで何をしているんでしょうかね。てか、生きてるんすかね。
写真も何にも無いし、他人に育てられた俺に、あんた達を知る術は無いよ。
あんた達も、俺がどんな人間になってるか知らないんだろうがな。
もう俺は別に父さん達に会いたいなんて思っていないさ。
んま、もしもどっかで会えたのなら、そん時はハイタッチくらいしてやるよ。
───青年は鼻で自嘲気味に笑うと、自慢のノートパソコンが入った大きなリュックを背に、旅立ちの門をくぐった。
「俺……戦って来ますわ。けーぐ」