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エピローグ

<side Hina>



「ただいま」


「おかえりなさい」



 二泊三日の修学旅行を終えて私は家に帰ってきた。帰りの挨拶もそこそこに、私は自分の部屋に行く。

 修学旅行用の大きなバッグを下ろす。片付けるべきなんだろうけど、すぐに実行する気にはなれなかった。

 荷物を置いて私はベッドにうつむけになる。


 私はおかしくなっていた。

 あれはカズ君に案内されて湖で夕日を見たときからだ。あの時から私はおかしい。

 二日目の夜はまた女子で集まって話をした。私も話したはずだけど、何を話したのか覚えてない。

 三日目は朝起きて朝食を食べて、それからバスに乗った。バスに乗ってる間、壊れたビデオテープのように頭の中で同じ光景が何度も蘇っていた。


 ――あの幻想的な湖で、夕日をバックにニカッと笑うカズ君の顔が何度も何度も再生される。


 気を抜くとそのことばかり考えて、他のことは考えられなくなる。

 一体私はどうしちゃったんだろう。


 思考が止まり、再びあの時の光景が浮かぶ。

 …………は!? 駄目だ駄目だ。何かで気を紛らわせないと……。

 私は携帯を取り出して写真のアプリを開く。修学旅行で撮影したたくさんの画像を整理ついでに見ようと思った。

 由香梨、若菜とのツーショット。三人での写真もある。他の女子達との写真もいっぱい。クラスの男子の写真もいっぱい撮った。皆いい笑顔だ。久保田君が笑って、岩垣君が呆れている画像もある。えっと、次は――


 ドクン、と心臓が高鳴る。


 久保田君と岩垣君とそれと――カズ君の映った写真だ。

 彼を見た瞬間、動機が激しくなる。物事が正常に考えれらない。彼だけにしか目がいかない。

 

 何、何、何これ――!? 

 

 体験したことのない感情に恐怖すら浮かんできそうだった。

 携帯を放り投げて、枕に顔をうずめる。


 何なんだろう、この気持ち。夕日が沈んだ後からまともにカズ君の顔が見れなくなった。同時に心の中も彼のことだけで支配される。

 由香梨の話を聞いておかしくなったのかもしれない。無知な私には刺激が強いお話だったから。

 それとも若菜の告白のせいかもしれない。カズ君を好きだなんて、好きだ、なんて――


 瞬間、ギュッと心臓が掴まれたような感覚が襲った。


 私以外の女の子といるカズ君を想像した途端これだ。



「うー……何よ、これ……どうして……」



 少し前からこの小さな芽が出ていることには気づいていた。今回の修学旅行でその芽は開花された。 

 本当はわかってる。そんなことないと目を逸らし続けていた。

 けどもう駄目だ。逃げられない。追い詰められてしまった。なら直接その気持ちに対面するしかない。


 私は小さな小さな声で呟く。自分に宿るその未知の感情の正体をはっきり知るために。








「私、カズ君に恋、してるんだ――」




 





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