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エピローグ

「ふぅ……疲れた」



 ふかふかのソファに身を投げ出す。柔らかい反発が背中に返ってきてとても心地いい。


 今日、比奈が恵ちゃんの説得を行った。なんとか恵ちゃんの意思を変えることが出来て二人の友情も更に深まった。そして俺は裏でちょちょいと工作させてもらい、恵ちゃんの復帰第一歩として、ラジオにゲスト出演することが決定した。


 ハッピーエンドで終わってよかった。どこかで一歩間違えていたら三人で再び笑い合える日は来なかっただろう。



「俺も比奈も……あと協力してくれた皆もお疲れ様だ」



 今回は俺一人の力じゃ到底解決に導けなかった。誰か一人でも欠けていたらバッドエンドに直行していただろう。

 姿はなくとも感謝と労いの言葉を彼等に心から発した。


 全て終わった。きっと誰もが望んだ結末で。

 ただ自分には少々心残りがある。

 それは恵ちゃんのあの突然の変化のことだ。あの急変した彼女の様子を理解することは最後まで出来なかった。いやそれだけじゃない。恵ちゃんの夢を追いたい気持ちと、諦めの気持ちの相反した二つの想いもだ。

 人間として理屈ではわかる。が、彼女が何故そのように思い至ったのか、どのような心模様だったのか……そういった詳細や過程を『理解』することが出来なかったのだ。

 更にいえば恵ちゃんだけじゃなく、比奈についてもわからないかもしれない。今回の件で彼女の意思の強さを以前よりはっきりと知ることが出来た。だが同時にどうして『夢』に対してあんなに強く思い入れが出来るのかという疑問が生じた。

 これらに関してはきっと話を聞いたりするだけじゃ『理解』することは不可能だろう。実際に明確な夢を持ち、それに向かって全力を捧げた時にようやく『理解』できるんじゃないだろうか。

 もしそうだとしたら……俺には一生知ることの出来ない深淵の思考であるかもしれない。


 ……少々しんみりとしてしまった。久しぶりに親父と話した影響もあるかもしれない。あいつと話すと嫌でも時期が迫っていることと俺が背負っているものを痛感させられてしまうから。



「今日はもう暗いことは考えるのをやめよう」



 折角明るい雰囲気で終わったのだ。今日ぐらい幸せな気分で一日を終えたいじゃないか。

 でももし……もしもだ。限りなく無理に近いが俺が今回の彼女達を完全に『理解』することが出来たなら。つまり夢を見つけることが出来たなら。果たしてそれは幸せなことなのだろうか……?

 これ以上考えるのはもうやめよう。願わくばその「もしも」が訪れて、それが幸せでありますように。

 

 俺は思考を遮断する。

 近い将来、来るかもしれない『その時』に思いを馳せながら――。




これにて三章完結です。四章は番外編をいくつか挟んだ後に開始する予定です。また、更新間隔についてですが、数日おきに戻します。

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