八話「公開恋愛宣言 ―Answer―」
『「えーっと、まずはこんにちは。
覚えている方も多いと思いますが、数年前この度新婦として参加している香月比奈と公開恋愛をやっておりました高城和晃といいます。
まず、私がこれからお話しする事は神聖なる式において言うべきことではないと思います。完璧な私情です。それでも伝えたいことがあるからこうしてここにやってきました。
私と香月比奈は高校生の頃、公開恋愛に則って清く正しい交際をしておりました。行き過ぎた行為はなかったものの、私と比奈は確かに好きあっていました。しかし二人道のりを歩んでいる過程で壁にふさがれ、私たちは決別せざるを得ない状況に陥りました。
あれから数年、知ってのとおり、香月比奈は河北慶と交際し、結婚するまでに至りました。
私は私でとある会社のトップとして君臨し、日々仕事に磨耗する毎日です。
今日まで私はそんな自分を大人だと思いこみ、仕事に明け暮れていました。
だけどそれは大人ではないと、感情を押さえ込むのは人間ではないと思い違いに気づかされました。
このような道のりを歩めたのも結果的には比奈と俺が公開恋愛をしていたからに他なりません。
俺達はあの時、少しずつながらも夢に向かって進むことが出来ました。
恋もすることが出来ました。
かつて公開恋愛宣言をした時、自分はこういいました。
――恋と夢は両立することは出来ないのか、と。
たったの二年間、されど二年間も公開恋愛を続けました。その後もたくさんの経験をしました。それらを省みて、この問いは果たしてどれが正解なのか考えました。その結論はこうです。
――恋と夢を両立する事はできます。
今思えば恋と夢は似てるものだと思うんです。恋とは相手を想って相手のために何かしてあげたいという気持ち。夢とは自身の目標に向かって努力するための原動力。どちらも一つの物に向かって突き進むという点では同じなのです。
俺は思い知らされました。
恋とは相手を想うこと。
夢とは想いそのもの。
同じものであるこの二つが両立できないなんてこと、あるはずがありません。
残念ながら俺は夢に敗れて、親に決められた道を歩むはめになってしまった。
けれど、夢に敗れても恋はまだ残っています。
俺にとって恋とは、夢と同じものなんです。そして、二人で歩むうちに夢は素敵なものであると気づいた自分は夢を簡単に棄てることが出来ないのです。
だから俺は、俺の夢を取り返しに来た!
かつて寝取られに略奪愛歓迎と言いました。
それはまだ正式に終了していない公開恋愛においてまだ有効であるとみなされる。
だから、俺が比奈を略奪しに来た。
この場で異議があるやつがいるならかかってこい。まとめて相手してやる。
決闘だって何だってしてやろう。――香月比奈を巡ってな!
もし彼女が河北慶に惚れているというのであれば、俺はもう一度彼女を俺に惚れさせてやる。
それが嫌なら止めてみろ。異議を申し立てる奴は今から俺の敵だ。
全力で奪いに来い! 略奪愛に寝取られ大歓迎だ!
宣言する!
香月比奈のことが大好きだ!
香月比奈を愛してる!
香月比奈は誰にも渡さない!
香月比奈は俺のもんだああああああああっ!!」』