エピローグ
マイクを握り、閉じた目を開ける。
一瞬で開けた視界には数え切れないぐらいの観客達。
皆が皆、緊張した表情でステージ上を見てくる。
最初はバラバラで、まとまりなんてものなかったのに。気がつけば心は一つになっている。
――だから俺は演劇が好きなんだ。
皆で作り上げた舞台で、観客をも一つにすることが出来る。
俺は一人じゃないんだと感じられる。
思えばこの劇を思いついた発端の出来事も根本的な思想は同じだった。
憎悪や妬みに満ちた心を違う方向に導こうとした。
ただあの時は実行したのは俺一人。
比奈ですら関わっていない。
でも今回は、違う。
直弘や久志、由香梨に若菜ちゃん。
それから恵ちゃんや慶さん、伊賀さんにマネージャーさん。
犬猿の仲だった祥平や、梨花さんも。
他にも記者さんや、博美さん。
間接的には親父や沙良も助けてくれたはずだ。
そして――比奈が隣にいてくれる。
こんなにもたくさんの人が俺達の馬鹿な計画に乗ってくれた。
そして目の前の観衆達が馬鹿な俺達を応援してくれた。
ここにいる全員のためにも。
関わってくれた人達のためにも。
俺と比奈の物語を見せてやろう。
息を深く吸う。
ステージの上で一歩前に出る。
観客達の前に悠然と立ち向かう。
そして、あの時のように言い放つ。
「――宣言する!」
次回からいよいよ最終章に突入いたします。記念に第二回人気キャラ投票を行います。
完結後のおまけ話に関する質問もございます。
今回もよろしければご協力お願いいたします。
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