プロローグ
「皆さんこんばんは。まだ緊張が取れない香月比奈です」
「同じくアイドルの彼氏として、かつこういったラジオが初で緊張している高城和晃です」
「……テレビで堂々とあんなことしたくせに緊張してるの?」
「何度も言うけど、あれは勢いとノリでだな……。それに外に人がいるとはいえ、放送室にアイドルと二人きりって男として緊張するんだぞ!」
「そ、そんな二人きりだなんて言い方は駄目だよ! なんか私も違う意味で緊張してきた……」
「と、とにかく流れを戻そう。な?」
「う、うん。えっと……このラジオは現在公開恋愛中の私、香月比奈とカズ君こと高城和晃がお送りする番組、通称公開恋愛ラジオです」
「番組名そのまんま過ぎるよなほんと。さてこの公開恋愛というのは、スキャンダルが原因で発覚してしまった自分達の関係をあえて大っぴらにし、恋愛してる様子やいちゃいちゃしている様子を見せびらかしてしまおうという、とってもお馬鹿な企画でございます」
「ほんと公開恋愛をするって聞いたときは驚いたよね」
「まず失敗する未来しかなかったもんな。よくやろうと思ったよ」
「だよね。でも案が出た当時は私達も焦ってて、思わずね」
「切羽詰った時って怖いな。冷静な判断してるつもりでも実はそんなことなくて。比奈との公開恋愛がまさにそれです」
「案の定失敗したしね……」
「ああ……。このラジオをやるためだけでも色々苦難の道があったんだ。スキャンダルの発覚、公開恋愛最初の仕事のデートに、公開恋愛宣言……。思い出しただけで泣けてくる」
「記念すべき第一回ラジオはここまでの道のりを振り返ることにしよっか」
「やめよう。ラジオが終わったとき自殺する勢いで鬱になってる俺たちの姿が目に浮かぶから」
「それもそうだね。じゃあ、台本どおり進めていこうか」
「そうだな。えーっと、この物語、じゃないや、この番組はこんな二人がお送りするラジオです」
「まだ拙い私達ですけど、どうかよろしくお願いします」
『それではごゆっくりお楽しみ下さい』