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夢はみんなの心へ

作者: 姫沙羅

 ぼくはたびネコです。


ぼくの夢はいろんな村での話を集めて、本を作ること。


えんぴつ、ノートを持って新しい村へ。

字も書けるし、どんな言葉も話せるんだ!


山を2つ越え、橋を渡ったらアリサ村という村に着いた。

並木道を進むと広場があり、その真ん中には大きな泉があった。


でも、泉の水はかれ果てていた。


広場を抜けて並木道をさらに進んだ。

奥には木でできた、村長の家があった。

そこで、たびネコは訳をきいてみた。


「何でこの村の泉の水はかれ果てていて、人や村人もあまりいないんですか?」

「それは・・・ある言い伝えがあるのだよ。

 今から百年前、アリサ姫という姫がいた頃は、泉も清らかな水でみたされていたし、

 木々は果実をいっぱい実らせていた。

 花は村中に咲き乱れ、いい匂いがあふれていたそうだ。


 しかし、村人の幸せをねたんだ、化けネコが術をかけて姫を封印してしまったのだよ。

 それからというもの、泉の水はかれはて、実は実らなくなり、花は消え失せた。


 そうなると、村人の生活は苦しくなり、人もいなくなったのだ。

 

 この村のどこかに今も、姫は眠っていると言い伝えられているのだよ」

 


たびネコはノートにこの言い伝えを書きとめた。

村長の家をでて、さらに奥に進むと、大きな城が現れた。


きっと姫のしろなんだろう。

その城は 立派だが黒く汚れていた。


「お前はだれだっ?」


 低い声がした方を振り向くと、大きな黒ネコが仁王立ちをしていた。


「ぼくはたびネコさ。君は誰なの?」

「オレは化けネコだ。何をしている?」

「村長にきいたんだ。この村の言い伝えを。何で君は姫を封印したの?」


  たびネコは化けネコに一歩近づいた。


「うらやましかったんだ!楽しそうな家族を見ているとっ!

 オレは独りぼっちなんだ!」


 そう叫ぶと、化けネコは消えた。

 たびネコは少し遠い目をしていたが、すぐに歩き出した。


 城の庭を歩いていると、木のトンネルを見つけた。


「小鳥さん。この向こうには何があるの?」


木にとまっていた小鳥にたずねた。


「その向こうにはアリサ姫がねむっているんっすよ。

 でもね、百年前その中に入っていった村人はみんな戻ってこなくなって、村に人がいなくなった。

 ちゅう噂ですわ」

「あれっ?言い伝えとは少し違うんだ」

「言い伝えなんて、伝言みたいなものなんだから、違ってたりするわよ」


  いつの間にかたびネコの前には、花の妖精がいた。


「あなたなら・・・化けネコやアリサ姫を救うことができるかもしれないわ。ついてきて」


 たびネコは妖精につづいてトンネルの中に入って行った。

 トンネルを抜けると、そこには花の絨毯があたり一面に広がっていた。

 

「別世界だね」 そう話していると、


「この花は百年前の村人たちよ。私が花に変えたの。

 あのままだと、みんなうえ死んでしまっていたわ」


  花の妖精と別れてしばらく歩くと、大きな、それは大きな花の上に少女が眠っていた。

その少女の側には、あの化けネコがいた。


「姫。どうか起きてくれよ。オレの永遠の命なんてくれてやるからさ・・・」


 姫にそうつぶやいていた化けネコに、たびネコは話しかけた。


「ねぇ。なぜ君は化けネコという名前なの?」

「あぁ。なぜって、みんながそう呼ぶからだ」

「ぼくと同じだね。ぼくもそうなんだ。それに独りぼっちさ。


 独りで寂しいときもある。


 ぼくの夢はね、いろんな村での話を集めて本を作ること。

 独りで寂しいとき、遠くはなれていても、誰かの心を温かくできると思うんだ。

 だからぼくは、旅をするたびネコだ。


 君も一緒に旅をしょうよ。  仲間になろうよ」


 化けネコは、大きな瞳をさらに大きく開けておどろいた。


「オレは・・・ずっと誰かに・・・そう言ってもらいたかったんだ・・・

 ・・・ありがとう」


ぽろり・・・と化けネコの涙が姫のほっぺに落ちた。

すると姫は目を覚まし、花たちは村人に戻り、泉の水は清らかな水であふれだした。


木々には果実が採りつくせないほど実るし、村中に花はあふれんばかりに咲きほこった。

城は輝きを取り戻し、姫のほっぺたは紅く色づいた。


「さぁ。えんぴつ、ノートを持って新しい村へ話を集めに行こう!」


夢を叶えるために ぼくは旅をする。



僕たちはたびネコです。

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