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プロローグ
プロローグ
生まれて初めて満天の星空をみた。
あの夜を例えるならそんなかんじだろうか。
真っ黒な空が光で埋め尽くされてしまうほど輝く星たち。
こんなに美しい空なのにいつかは忘れてしまうのではないか。
自分の中でちっぽけなできごとになってしまうのではないか。
そんな不安の中で、逆らうように必死に星空を目に焼き付ける。
忘れてしまいたくないという気持ちで泣きそうになりながら。
あのとき、まさにあたしはそんな気持ちで、まるで小さな子供のように彼を苦しいほど抱きしめて、浴びせるようなキスをした。
幻のような儚くて美しい夜。
忘れてしまいたくなかった。
だって、彼はまるで夜空のような男だったから。
何にも誰にも染まらない。たとえ輝く星でさえも太刀打ちできないような、
そんな人だったから。