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ラスタバン王の給仕  作者: 平 啓
第三部
20/38

6.中月(なかつき)の宴

<旅程>

32日目 夜

  エルシャロン


挿絵(By みてみん)

 エルシャロンまであと一つという街道の宿場町。その一番外れにある酒場兼飯屋が、昼休みの看板を外し、夕刻時の開店を知らせるため、窓のカーテンを開けた。店内では使い走りの少年が、掃除の最後とテーブルを拭いている。そこへ外から激しい蹄の音が近づいてきて、店の前で止まった。扉が乱暴に開き、汗みずくの息の荒い男が飛び込んでくる。

「おい、飯をくれ!!」黒髪の男は大股にテーブルに着くと、懐から財布を取り出し、金貨をびしりと置いた。「とにかく、すぐ食える物を出してくれ! 酒はいらない。急げ!」

 勢いに押された店の主人は、あわてて返事をすると厨房に飛び込んだ。男は更に、ぼんやり突っ立っている少年を手招きし、その手に銀の小粒を握らせた。

「外に馬二頭がいる。水と飼葉をやって、汗を流してくれ。終わったら、もう一つやるぞ」

 目を丸くした少年が大きく頷き、外に飛び出して行く。男は腰に付けた革の水筒に口をつけたが、空だと知ると店の奥に声をかけた。

「親父! 水だ! 水を持ってこい」

 両手で持つ花瓶の様な大ジョッキに、井戸の汲み立ての水が運ばれ、それを一気飲みする。息の続く限りそれを呑んだ彼は、ジョッキをテーブルに置くと、吹きだすような息をついて満足げに唸った。

「ぶはあ! 生き返るぜい!!」

 ヴァルドの男カラックは、丸一日ぶりの食事に旺盛な食欲を見せて取りかかった。

 食べながら、店の主人にエルシャロンの様子を聞くと、毎日お祭り騒ぎだと言う。ここの細君が、昨日都でラスタバンの姫君を見たそうで、その美しさにほれぼれし、早く嫁いできてくれないかと力説した。その平和な様子に、カラックは内心胸をなでおろした。

――今のところ無事らしいな……


 先日、若夫婦を草原に送り届けたカラックは、仲間の遊牧民から大歓迎を受けた。にこやか父さんのユースフは、なんと長の孫であり、彼らが救われた顛末を聞いた彼の祖父は、涙を流して感謝した。盗賊のいる危険な台地に彼らだけを置いて行ったのは、実は婚姻前に子どもができてしまったことに対する、彼らの掟の罰のためでもあった。カラックの呆れる前で、若夫婦は赤い顔をして幸福そうに笑った。もちろんアステラの両親も大喜びで、簡単ではあるが正式な婚礼が開かれることになり、カラックは主賓として下へも置かれぬもてなしを受けた。夜を徹した祝宴の後、二日酔い頭でした雑談の中で、思わぬ事実を知る。

 べト・シェアンの周辺に詳しい彼らは、デドロン谷やアムダルカ村にも通じており、カラックの話を聞いたひとりが首を傾げて言ったことには――

「熊族の猟師頭だって? おかしいな、あそこは鹿族だけの村のはずだが」

 周囲の面々も酒で赤らめた顔で何度も頷き、カラックの酔いはいっぺんに醒めた。

 では自分達と話し、ラスタバンと契約をした連中は何者であったのか。人の良さそうな猟師頭や、友人の死に涙したあのカモシカ族のヤヌムは村人ではないのか。もっと慄然とさせたのは、この正体不明の輩が空中船にやってきたことだ。知らぬこととはいえ、重大な失態を犯した事には間違いない。長が付けてくれた替えの馬と共に彼はすぐさまエルシャロンへと発ち、以来丸一昼夜駆け通しで、ここまで来たのである。


「西だと?」

 エルシャロンの夜景が遥かに輝きだした山の中腹で、見習いの頭の包帯を替えていたエナムスが訊き返す。

「あの朝、空中船から出発したアムダルカの人達は、西へ向かったんです。アムダルカ村は東なのに……」アシェルは遠くの都に目を馳せた。「彼らは、アムダルカへは向かわなかった。……帰る必要がなかったから」

「それは、どういう――」

 訝しむ親方に、見習いはゆっくり顔を向けた。

「……彼らの帰る先がアムダルカではなかったから。彼らがアムダルカの者でなかったからです」

 エナムスは若者を見詰めた。

「じゃあ、アムダルカの者はどうしたんだ?」

「わかりません。アムダルカ村には村人はいなかった。何がおこったか――俺にはわからない」

 アシェルは苦しそうに顔を歪ませ、首を横に振った。

 人の良い獣人の笑みが目に浮かぶ。玩具を受け取った時、子どもが喜ぶと細めた優しげな瞳。そのすべてが偽りだとしたら、あの青い船はどうなったのか。

 若者はしばらく口を引き結んで目を落としていたが、再び決然と顔を上げた。

「でも、彼らが空中船の重機兵を狙っているのは確かです」

 その蒼天の瞳にまっすぐ捉えられ、エナムスは怯んだ。思わず開きかけた唇を閉じ、奥歯を噛みしめて視線を逸らす。アシェルの息が小さく漏れ、それに――と言葉が続く。

「あの竜も気になります。眠ってばかりいる竜、眠りの竜。親方は聞いたことがありますか?」

「あ、ああ……いや、ない。そんな竜がいるとは初めだ。まったくイディンも広いな。眠ってばかりで動かないせいで、今まで人目に触れなかったのかもしれんが」

 相手を直視できない屈託を隠すためか、妙に饒舌な答えが返った。

「俺は……夢見の竜を思い起こすんです。どちらも眠りに関係しているせいで」

「夢見の?」

「俺達がウリトン川で竜に遭った後、親方は言いましたよね」

――ごくたまに、人を眠らせ夢を見させる竜がいるんだ。何のためか分からんがな。

「『何のために』――人を眠らせ、竜を眠らせるため」

 更なる理由はわからない。しかし、もし夢見の竜の本来が竜を眠らせることにあったなら、そしてその眠りを無理に妨げたなら。

「何が起こるか」

 苦しげな呻きが起こり、アシェルは我に返った。

「それは……夢見の竜も来るということか?」

 低くしわがれた声に見習いが顔を向けると、エナムスが険しい表情を浮かべていた。ベゼク河畔で見せたあの眼差しが見据えるのは、眼前の若者を通り越した先。その中に微かに過る敵意は、ウリトン川野営の夜、夢見の竜に向けられた山刀の切っ先に通じている。

 握りしめられた右の手をアシェルがとる。

「親方、急ごう。俺達は調達人だ」


 半月が中天にかかる頃、王宮庭園で中月なかつきの宴が始まった。

 陽が落ちた夕空は晴れているのでやや肌寒いが、その分豪華に肩を覆った婦人達のドレスが華々しい。そこへラスタバンの上の姫とファステリアの上の王子が登場すると、話題のすべては彼らとなった。人々が口々に姫の美しさをほめそやすので、王弟は自慢顔である。片や王子の方も、ラスタバンの称賛を受けるにふさわしい美丈夫だ。この若者は騎士としての腕も確かで、公開果仕合の相手となる竜騎士を探していた。

 実は暗にタニヤザールに打診があったのだが、彼は固く辞退しており、これも王弟が彼を快く思わない理由の一つであった。八個のイディン一竜石を持つ、この竜騎士との果仕合を望む者は多い。しかし今まで彼がそれを受けたという話はなく、そのためファステリアも強く言ってくることは無かった。

 光沢のある白い幕で囲まれた会場には花が飾られ、灯りが煌々と隅々まで照らされている。足元にはこれも絨毯が敷かれているので、上を見なければ屋内と見まごうばかりである。それでも、器楽隊が演奏しているステージの向こうには広場が開けていて、噴水の滴が月の光を煌めかせていた。

 周囲に警戒の目を配りながら、タニヤザールはゆっくりと歩を進ませた。竜使いたちのいる控えの広場には、ファステリアの衛兵が配備されていて、何か起こればただちに連絡が来るようになっている。また空中船の周囲には、ヴァーリックを中心とした警護兵が厳戒態勢を敷いており、重機兵は配備されたものの動力が切られ、警護兵が監視を続けていた。

 来客の着席が済むと、ファステリア、ラスタバンの王族がそれぞれ挨拶を行い、乾杯を控えてラスタバンの誇る給仕たちが、整然とそれぞれのグラスに酒をついで回る。料理の配送口には、セヴェリが真っすぐな姿勢で給仕一人一人に目を走らせていて、最後に自分も王族のグラスを満たすべく進み出て役を務めた。

 子どもも出席する非公式な会は堅苦しいこともなく、宴は和やかに進んでいく。

――とにかく、戦いは始まった……

 タニヤザールは、大剣を忍ばせてある花台にちらりと視線を走らせた。


「まいったな、こりゃ……」

 空中船の警護に当たっていたヴァーリックは、思わず呟いた。『給仕』の死に場所を聞いた給仕長は、それが空中船の航路に近いことに気付き、急遽空中船の警備を強化するよう言いつけたのだが、厨房に出入りする人数が半端ではない。主要料理人はラスタバンの者であるが、細細こまごました雑用に関してはファステリアから多くの人員を借りている。中には獣人もいて、見知った顔と容易に確認することができない。ラスタバンの確認札のついている人物を捕まえては、書類の名前と照合するが、その多さについ溜息が出てしまうのだ。

「全部の確認が取れる前に、宴が終わっちまいそうだな……」

 傍の部下に愚痴ったつもりが姿がなく、どうやら裏の出入りを確かめに行ってしまったようだ。

 ヴァーリックは気を取り直して己の作業を続行した。


――竜が来た。

 会場の話し声が一斉に収まり、檻の車輪が回る音だけが静かに響いて、それはやってきた。

 一通りの催し物が終わり、女性と子ども達が席を離れた後、テーブルを立った男達はステージ前の開けられた場所に集まり、この時を迎えた。

 本物の野竜。――ファステリアは別名『竜の国』といわれるほど、イディンでは竜が多い土地である。子どもですら殆ど野竜に出会ったことがあり、そのため竜の恐ろしさは幼い頃から叩き込まれている。目にしたら決して近づかずに逃げろ、万が一近くに来た時は、動くな、騒ぐな、その目を合わせるな。恐怖さえ暴走させなければ竜の返る怒りを買わずに済み、なんとかやり過ごす事が出来る。

 だからファステリアの男達は、檻の中のとはいえ野竜を目にした時、本能的に後ずさった。竜騎士である王も身構えて、無意識に王子を庇う位置に立つ。一方ラスタバンの方は、怖いもの見たさという好奇心の方が大きい。半分は地竜しか見たことがない貴族なので、檻の中の野竜はその延長上にあった。


 その頃、空中船から一番遠くの森陰に配備された重機兵の前で、二人の警護兵が警備に当たっていた。と、空中船の方の暗がりから、警護兵の制服を着た者が近づいて来た。隊長が四苦八苦しているから手伝いに来いと声をかける。

「無理もないよな。分かった俺がいく」

 一人が苦笑しながらそちらへ足を向け、伝令と並んで行きかけたが、ふとその顔を見て眉をひそめた。お前、誰――と言いかけたところで、腹と首筋を殴られ昏倒する。それを見たもう一人が剣を抜く背後から、黒い影が同じように一撃を加えた。警護兵を襲った者らは、空中船から盗み取ってきた重機兵の入力鍵を懐から取り出した。


「え? 何だって?」

 空中船の裏手に回り、周囲に目を光らせながら確認作業を続けていたヴァーリックは、ファステリアの門番が来たことを告げられた。急いで裏門へ通じる通用口へ行くと、待っていた衛兵が、ラスタバンの調達人と名乗る者が裏門に来て至急会いたいそうだが、入れていいかと訊く。差し出された印はラスタバン製で、取引契約によく使われるものだ。

「エナムスと名乗っていますが」

 ヴァーリックは、彼と調達人のもう一つの使命も心得ていたので、すぐに裏門へと向かった。


 会場が不穏などよめきに包まれ、給仕長はきつく眉を寄せた。竜使いがゆっくり頷いて、タニヤザールに銀の視線を送る。その目が微かに笑っていた。

 その少し前、一同が檻の中の竜を見終わった時である。王弟が、後ろを向いたまま眠っている竜に対し、動いている姿を見たいと不満を口にしたのだ。それで竜使いが竜笛を奏でると、ゆらゆらと首をもたげて、半眼の瞳を周囲に向けた。ファステリアの面々は恐ろしさに緊張したが、すぐにまた竜が眠ってしまったので、ほっと胸をなでおろす。しかし再び王弟が言う。

――稀代の竜使いが野竜を使うと聞いて楽しみにしていたが、これが『竜を使う』とはとても思えない。本当に使えるのかどうか見せてもらわねば、ファステリアの推薦も随分眉唾ものになるのではないか?

 さすがに危機感を持った側近が、万が一竜使いの技が未熟であったらあまりに危険と諫言かんげんした。だが、王弟は聞かない。顎を反らせ底意地の悪い笑みを浮かべて、給仕長に視線を向ける。

――何を恐れることがある。稀代と言うのなら、我らには稀代の竜騎士がいるではないか。彼なら、必ず命に代えて守ってくれるに違いない。

 タニヤザールは目を細めた。王弟は何も分かっていない。竜騎士が竜と闘うのは、何かを守るためではなく、純粋な力の遣り取りだ。互いに相手しか見えず、他の者など――他の者の命など気にしている余裕はない。傍でのんびり見物していては、たちまち巻き込まれ、命を落とすのが関の山である。もし、その闘いを見ようとするなら、その者も命を賭けなければならない。

 一方ファステリアの方も、王とその側近との間で、揉め事がおこっていた。王が危険を思って中止させようとしたが、重臣の誰かが、竜使いの腕は確かでその必要はないと言った。ここで竜使いが野竜を操れると証明できれば、『竜の国』としてのファステリアの威光は否が応にも高まるというのが、その主張である。巨大な空中船で乗り付けられ、ラスタバンの豊富な物資をまざまざと見せられた彼らの中には、複雑な思いを持つ者がいるようだ。竜は恐ろしいが、その竜を操れる力を持っていると知らしめたいのだろう。

 タニヤザールは、密かに王に同情した。

 そのファステリア王がタニヤザールに視線を送る。今は病で衰えているとはいえ、彼も五つの竜石を持つ者である。こちらを気遣う眼差しに微かに頷き、顎を軽く上げて示すと、王はその意味を悟った。もしやの危険に傍らの王子に退場を言いつけるが、息子は首を横に振る。これから竜騎士を目指す者が、ここで引く訳にはいかないのだろう。それも無理のないことだがと、竜騎士達は互いに見交わした。

 そしてタニヤザールは竜使いの高慢な視線に気づいたのだ。僅かに覗く銀の目が細められ、笑っているのが分かる。

――馬鹿な野心家だ……

 内心呟いて、上着を脱ぎながら花台に近寄り、隠し置いた大剣を取り出した。シャツの袖をたくしあげ、開いた足で地を踏みしめ、大剣を片手にかしらを反らす。腰には竜騎士の証しの碧絹の帯がきつく巻かれている。

 と、セヴェリが空中船の幕間から走ってきて、何事かを早口で囁いた。タニヤザールは眉を上げると給仕頭に強く言った。

「馬に乗ったまま、すぐに来いと伝えろ!」


 オフィルは周囲を見回し、おもむろに竜笛に唇をつけた。


 王宮裏門に到着したヴァーリックが、エナムスとアシェルのもたらした情報に頬を強張らせた。すぐさま調達人達に空中船へ行くよう指示し、自らは門の詰所にいたファステリアの衛兵と共に、重機兵の配置場所へと馬を走らせた。

 示された通路を走りながら、アシェルは笛の音を聞いた。いや、感じた。先日の気持ちの悪い気配がぞくぞくと背中を伝わり、首筋まで這い上ってくる。竜使いの村で竜笛を聴いて気がついたのだが、これはただの竜笛でなさそうだ。奏でられる音と共に、何か別のものが発信されている。体にまといつき、思わぬ方へと誘う力。しかし、これを竜が喜ぶとは思えない。


 笛の音が流れる中、人々は固唾を呑んで檻の中を見詰めていた。それでもじりじりと後ずさりし、檻からなるべく距離を取ろうとする。しかし王弟だけは檻の中の竜に目を取られ、その動きを見逃すまいと、迫る危険を顧みようともしない。

 竜が動いた。

 それまで背中に張り付いたままの翼が、すうっと立ち上がる。重たげに引きずられるだけだった尾先が、ぴくりと上へ跳ね上がった。なにより沈んだ赤黒い体が、内に火がともったように輝きだし、肌から染み出すように朱の光の粒がこぼれ出す。

 ファステリアの中にはもう幕の外へ逃げ出す者も出てきたが、ラスタバンの王弟は竜の変化に目を奪われ、身動き一つできない。その危険をいち早くファステリア王が気付いたようだが、タニヤザールは彼に静止の合図を送ると、するすると王弟に近づいて行った。他のラスタバンの重臣達は、驚愕のあまり王弟の安全をまったく忘れてしまっている。

 いきなり竜が首を伸ばした。気付くと、灼熱色の瞳が見下ろしている。

 そこで初めて恐怖が襲ったのだろう、王弟はよろよろと後ずさり、地面に腰を落とした。強張る口が悲鳴の形に開かれ、喉が声を発する直前、覆いかぶさったタニヤザールがその口を塞ぐ。

 竜の唸りが頭上から響き出す。すると竜使いの笛の音が一段と高くなり、竜は伸ばした首を震わせて、また床に下ろした。しかし唸りは高まるばかりだ。


 前を走る見習いが、突然胸を押さえて立ち止まった。エナムスが何事かと顔を覗くと、激しく肩を上下させて喘いでいる。

「やめろ……オフィル。なにをしているのか、わかっているのか……」

 歯を食いしばり眉をしかめていたが、ふとその肩の動きが止まり、正面の見えない何かを見詰める。口がゆっくり言葉を刻む。


「や・め・ろ」


 鋭くぜる音が走った。

 タニヤザールが目を向けると、竜使いが茫然と手元の笛を見下ろしている。それには、深い亀裂が入っていた。今まで自信に満ちていた銀の瞳に、初めて狼狽が浮かぶ。思いがけない事態に、所在なく彷徨った視線が檻に止まり、明滅を始めた竜の輝く体に釘付けとなった。身を強張らせて後ずさる足がよろめく。操る笛が壊れて、手の出しようが無くなったに違いない。

 そこへ蹄の音が響き、馬に乗った男が会場に現れた。幕内に入ったヴァルドは直ぐに鞍から降り、走りながらきょろきょろと周囲を見回した。その目が竜の檻に止まり、驚きの声を上げる。

「なんだ、ありゃ!」

「カラック!」王弟を抱えたタニヤザールが叫んだ。「お前が竜と闘え!」




第三部 了


第三部終了で、このまま怒涛(?)の第四部へと続きます。

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