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赤沢武琉(あかざわたける)

 白が行方不明になったことを知った黒たちはその後、行方不明になった白を捜索しようとはせず、青に警察の情報網を使って、とある人物の居場所を調べてもらった。


「ここに赤が」

「ああ、間違いない」


 黒、青、銘の三人がやって来たのは、とある地下駐車場。


「赤って、先生や海(かい)さんのお仲間ですよね」

「仲間、か」

「まあ、そうだな」


 駐車していた時間に対応した料金を払いさえすれば、誰でも駐車できる地下駐車場内部を徒歩で突き進む、無免許三人。


「今は赤沢武琉(あかざわたける)って名前で、定職にも就かず、ぷらぷら、その日暮らしをしているな。時々、チンピラとかと揉め事起こして警察の厄介になってたみたいだから、居場所を突き止めるのはそこまで難しくなかったぜ」

「相変わらずだな、赤は…………」

「…………」


 銘の様子が普段と違うことに担任である黒は気づいていた。


「銘さん」

「っ、は、はい」

「大丈夫ですか。気分がすぐれないのであれば、赤のことは青に任せて、家まで送りますよ」


 いつもなら、突っ込んでほしくないことにも自身の好奇心のまま、無鉄砲に首を突っ込んでいくというのに。今はどこか一歩引いて、全体を俯瞰で見ているような気がする。


「だ、大丈夫です。私も行きます」


 銘が黒たちの捜査に同行を申し出た目的は二つある。


 一つはもちろん、この怪物という、この世と思えぬ存在が関わる事件の真相を究明し、解決すること。


 もう一つは、黒たち、人類が未知の生命体について生態や考え方を知ること。


 彼らは、人間と共存できるような存在であるのか。それとも人間を脅かす、危険な存在であるのか。


 銘はこの事件を通して、それを見極めようとしていた。


「ここだ」

「「っ――」」


 入り組んだ迷路のような地下駐車場を歩いていった先、壁とほとんど見分けがつかないコンクリートの壁とほとんど同化した一枚の鋼鉄の扉があった。


「開けるぞ」


 ぱっと見、三人の中で一番屈強そうな青が見るからに分厚そうな鋼鉄の扉をゆっくり開いた。


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 扉が開くと同時に、凄まじい音圧の歓声が三人の体を圧(お)し潰した。


「やれぇええええ」

「ころせぇえええええ」


 扉の先、部屋の中央にある鉄格子で囲まれた円形のフィールドには血まみれになりながら殴り合う男たち。その周囲では血の気の多い観客たちが男たちの戦うフィールドを取り囲み、怒号や悲鳴、歓声を上げていた。


「ここが」

「ああ――」


 ルールは一対一のタイマン。相手を戦闘不能にすれば勝利。それ以外は相手が降参しても続けられる。事前に申告していれば武器の使用も可。勝者には多額のファイトマネー。敗者は何も得られず、最悪命(全て)を失う。


「ヤバい組織が運営する、地下闘技場だ」

「…………」


「ああああああ、俺の金がぁあああああ」

「よっしゃ、大金ゲットッ」


 観客たちも勝敗に金を賭け、選手たち同様、自分の人生を賭けられる。


「ここに赤が」

「ああ、いるはずだ」


 しばらく、黒たちは悪趣味極まりない、現代の汚いコロッセオを観戦した。


「…………」


 幸い、観客たちから一歩離れた位置で観戦している黒たちには鉄格子のなかで行われている試合の様子はよく見えなかった。


 それでも、人が本能剥き出しに殴り殴られている様を見て熱狂する観客たちを見せるのは、銘の教育上よろしくないのではと内心、黒は思っていた。


「それでは次が本日のメインイベント」


 わざとらしいほど仰々しいアナウンスを聞き、観客たちの熱気が一層高くなるのを三人は肌で感じた。


「我が闘技場、最強のチャンピオン――燃える狂戦士――赤沢、武琉(あかざわたける)ゥウウウウウウ」

「「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 赤の名前を聞いた瞬間、観客たちが一斉に沸きあがった。


「対するは、過去に暴力事件を起こし格闘技の世界からは永久追放された元アジアチャンプ。ドラッグに溺れ、ギャンブルに溺れ、ついにはこの地下闘技場にまで身を落とした、堕天使ファイター。コロネルゾ・ルシファァアアアアアアアア」


 紹介され鉄格子に囲まれたリングに上がったのは、赤髪の若い男と、筋肉ムキムキの全身日焼けしたスキンヘッド男。


「ヘイ、ボーイ。サレンダーするなら今の内だぜ」

「…………黙ってろ、ザコ」


 体格差は圧倒的。子供と大人ほどの体格差がある二人だが、赤の正体を知る黒たちはもちろん、赤の正体を知らずとも赤の戦いを何度も見てきた観客たちも赤が負けるとはこれっぽっちも思っていなかった。


「レディ、ファイト――」


 試合開始の合図と同時に、赤に殴り掛かるスキンヘッド。


「ガッ――」


 それよりも早く、クロスカウンターのような形で赤の拳がスキンヘッドの顎を捉え、男の脳を激しくを揺らした。


「……………………」


 勝負は、一瞬で決した。


「勝負あり。勝者、チャンピオンンンンンンンンン」

「「「「「っ、うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」


 大方の予想通り、この勝負は赤の圧勝(勝利)で終わった。


 これが、この闘技場で行われる今日最後の試合だった。



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