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ツカノマノクビキ ~a slight contract~ [2.1.10]

初・節番号二桁入り。

ず、随分長くなっちゃいましたねえ……

 さて、那凪が三人をよそに三つ目の饅頭を頬張ったのと同時刻。 彼女の機嫌を地へ叩きつけた元凶はと言うと、夕焼けの訪れ始めた街中の真っ只中に居た。

「……くぁ」

 大道路の交差点で赤信号に引っ掛かりながらも暢気に欠伸なんかをしている様子は、あの後那凪がどれほど荒れたかなど気にも留めていないのがよく分かるというものだ。

 平日の夕方、それも田舎ではなく都会のものともなればそれなりの人口密度がある場所である。 そんな中、徐々に彼の後ろに待ち人が増えてくると、あっと言う間に人ごみが完成する。

 ようやく信号の色が変わると、まるで決壊した堤防のように人ごみが緋嵩を飲み込み、横断歩道の縞模様を塗りつぶすかのように侵食を始めた。

「慣れないな、こればっかりは」

 すれ違い、追い越され。 何十の他人と刹那の邂逅を繰り返しながら、緋嵩がポツリと呟いた。

 服装にも容姿にも、特にこれといった特異点は無い。 そこらにいる一般人となんら変わらない彼の空へ向けた透明な呟きは、誰に聞き取られるでもなく周りの靴音に掻き消されてしまう。

「じゃあさっさと引っ込めばいいのに」

 ふわりと、瞬く間に飲み込まれた緋嵩の言葉に柔らかな声が重ねられた。 何処から聞こえてきたのか、誰が発したのかのかも全く判別の付かない応答だというのに、緋嵩の顔には動揺の色は浮かんでいない。 それどころか、口元を僅かに吊り上げている様子はどこか笑っているようにさえ見えた。

 ポケットに手を入れたまま、緋嵩がまた空に向かって話しかけ始める。

「そういうわけにもいかないだろ? フォーチュンテラ」

 fortuneteller。

 『占い師』、と最後に投げかけた緋嵩に対して、ゆったりとした笑い声が彼を中心に四方から木霊した。

 一体どうなっているのか、群衆の中を反響する声はどういう訳かその軌跡を明確に現しているのだ。

 人から人へ、空間から空間へ、反響する声は波紋を残して辺り一帯に響き渡る。

 しかも、音が反響するたびに人が消え、車が消え、周りの音さえも消えた。

「今度は亜種じゃなくてオリジナルの方か。 相変わらず、何処で見てんだか」

「ふふ、それは企業秘密って事で」

 道路に一人残された緋嵩の正面の景色が一瞬歪んだように見えたかと思えば、次の瞬間、そこには一人の占い師の姿が。

 ありがちな水晶球を乗せたテーブルに顔まで隠した紫色のローブを纏う彼女の姿は、誰に聞いても占い師と答えるだろう。 そんなあからさまな印象を全面に滲ませる女性が、テーブルに両肘をつき、掌にあごを乗せたまま緋嵩のほうを見つめていた。

いったい彼女はなんなのかっ!?


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