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アカゾメノケモノ ~witch is the monster~ [1.3.2]

「ふん。 準備は出来たようだな」

 軽い、何の感情をぶちまけるでも無い言葉。

 あからさまな余裕が滲み出ているその音には、まるで警戒の様子が見られなかった。 那凪達を到底脅威と感じていない。 その事実が嫌と言うほど読み取れる程に。

 いや、よく見ればそれは言葉だけではない。 那凪たちはここに来て、始めて目の前のふざけた現実に気が付いた。

 両手をだらりと下げ、無造作に立っている様子はどう見ても構えているとは言えない。 だが、その見た目から滲み出る気配が那凪たちの意識に叩きつける恐怖のなんと重いことか。

 見た目など、何の気休めにもならない。 それとも、まさかこれで気を抜いている状態だというのか。

 だとしたら、それは、なんて馬鹿げた存在なのだろう。 

「全力で来い。 貴様等の行為の果てを刻んでやる」

 変化する前とは違って、完全に相手を見下した言葉を投げつける緋嵩。 彼は言い終わると同時に、おぞましい程に赤いその目を静かに閉じた。 

「行くよ!」

 言葉と共に、那凪の身体が地面を砕いて消えた。

 あからさまな誘いだったが、これ以上緋嵩を見ているとようやく灯した戦意が根元から消えてしまいそうで、それが何より彼女を行動へと移させた。  

 恐怖に震えて無様に死ぬよりも、足掻いて足掻いて生を求めて死ぬほうが何倍もましだと、そう思ったからだ。

「シッ!!」

 那凪の姿が消えた瞬間には、高原は既に腰に挿してあったものを緋嵩に向けて構えていた。 彼の細い両腕に不釣合いなほど大きく、禍々しい黒い物体が鈍い光を反射する。

 規格外れな威力の組み合わせの二丁拳銃。 それらが彼の掛け声と共に一斉に咆哮した。

 人間など一撃で即死に至らしめるような弾丸が、凄まじい轟音とマズルフラッシュを率いて緋嵩に放たれる。 一発ではない。 五発、十発、いやもっと。

「もらったぁ!!!!」

 気合十分に叫んだ那凪。 彼女の位置は既に緋嵩から三十センチも離れていなかった。

 しかし、緋嵩に逃げ場は無い。

 高原の能力の真骨頂がそこにあったからだ。

 反射と、衝突。

 全ての弾丸の軌道とタイミングを合わせ、緋嵩の逃げ道を塞ぐ。

 前後左右、全方位から。 銃撃の際の反動の大きさゆえ本来連射など不可能な筈の大口径の銃弾が緋嵩に向けて彼を囲うようにその身を狙っていた。 

 的確に四肢の関節、人体の急所を狙いつつも、その数は右足に迫るものがやや多い。 那凪の向かった先を予測しての、絶妙なコンビネーション。

 瞬きをするより早く、那凪の目には全身蜂の巣になった緋嵩が映ることだろう。 そこに彼女が追い討ちをかける。

 逃げられるはずなど無かった。 為す術もなく、緋嵩は全ての弾丸を全身に叩き込まれる。

 腕に、足に、顔に。

 関節に、心臓に、脳味噌に。

(勝った――)

 勝利を確信して尚、那凪の動きはもはや止められない。

 緋嵩の右足を切断するべく斜め上から振りかぶられた手刀は、勢いよく叩きつけられ彼の血を撒き散らさ――なかった。

「……え?」

 彼女に瞳に映ったのは、黒い、塊。

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