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アカゾメノケモノ ~witch is the monster~ [1.3.1]

最近ごたごたして更新できませんでした~~!!

すみませんorz(泣

その分これから五日間、三章をがすっと載せますはい(>_<)

記憶が現実へと戻ってきていた。

 あの時。 緋嵩の宣言が終わってからまず那凪たちの注意を引いたのは、彼の目だった。

 赤い、何処までも紅い目。

 まるで血を連想させる鈍い光に、那凪達は言いようもないざわついた感情を感じ始めたのだ。

 そして、彼の首までしかなかった筈の黒髪が、肩に垂れるほどの赤髪に変わる。

 外見上の違いは、それだけだった。

 なんてことは無い、彼らが普段相手にしているものと比べれば、一般人と言ってお釣りが来る程の僅かな変化だ。

 だと言うのに、彼らは今までこれほどまでに禍々しいと感じた記憶が無かった。

 瞬き一つすることさえ戸惑われる威圧感。 殺気、いや、もはやこれは瘴気と呼んでもいい。

 触れるもの全てを侵して狂わせてしまうような、そんな途方も無い気配。

 今まで化け物と呼んでいたものに比べて遥かに人間で、そして遥かに異常な生き物。 こんな存在など、那凪たちは知らなかった。 考えすらしなかった。

 自分達が戦っている存在以外の異常を、いつの間にか無いと断定していが故に陥る落とし穴。 知らないもの。 その異常性が、存在全てが、彼らの恐怖を揺り動かす要因たり得る。 

 戦うことさえ馬鹿らしく思えてくるほどの存在感を痛いほど肌に感じながら、那凪達は目の前に居る緋嵩だったモノを見る目に、より一層力が入るのを感じた。

 肉体が感じる本能的な恐怖か、それとも生き残りたいと望む生存本能か、それは本人にも分からない。

 彼に変化が見られたとき、那凪達は咄嗟に身構えていた。

 人間が未だに動物の枠を超えていない生き物であるが故に。 理性ではなく、本能で身体が反応したのだ。

 目の前に存在するモノからはどうやっても逃げ切れない事を、無意識下に確信しているから。 だから、構える。 戦って打ち倒すことが目的ではない。 身を守る本能に、ただただ肉体が忠実に動いているだけの行動だ。

 今まで死線を掻い潜り、生存本能を少なからず研ぎ澄ましてきた彼らの肉体だからこそ選ぶことが出来る、最善と呼べる選択だった。

「……やばいね。 これは」

 額に吹き出た汗を拭う隙さえも恐ろしく、高原が緊張と震えに塗り固められた口調で呟いた。 

「高原、虎さん。 ごめん。 やっぱこの方法、止めた方がよかったみたい」  

 那凪の言葉だけが、二人に向けて放たれる。

「済んだことだ。 それより、今はあのバケモン相手にどうするかだ」

 苦々しい轟の言葉。

 構えを取りつつも、一歩でも誤って踏み出そうものなら即首を刎ね飛ばされるようなプレッシャーに全身を固められ、誰も踏み出すことが出来ない現状を少しでも改善させるかのように、轟がわざと弱音を吐いた。

 少しでも、鼓舞の足しになることを願って。

「はは、正直まるで勝てる気がせん。 ……だがな、まだ死にたくないし、死ぬ気もないんだよ。 俺は」

 普段弱音などまるで吐かない轟の言葉は、結果彼の予想以上の効果を生んだ。

 轟の言葉に二人はほんの一瞬、瞳だけで彼を覗き見ると、顔にぎこちない笑みの形を模造する。

「そうだね。 じっとしてても多分殺されるだけだろうし。 店長、何か良い考えはあるかい?」

 高原の言葉を受けて、那凪は数瞬だけ意識を巡らすと、努めて希望を滲ませるように言った。

「一個だけ。 全てをあいつの足一本に集中させて、潰したら即逃げる。 さっきまでのあいつとは何もかもが違うから成功率はなんとも言えないけど、助かる道はそれしか無いでしょうね」

「あるだけでも十分だ」

 成功率などないに等しいと誰もが理解していたが、音に出して言う者は一人も居なかった。

 彼らは今、未曾有の恐怖を目に前に戦う意思を固めているのだ。 わざわざ戦意に水を差す余裕も、必要も無い。

「私が速度強化で行くから、それに合わせて」

「おう」

「了解」

 三人が互いに互いを支え、震え上がった意識と本能を合わせてようやく戦いの形をとり始めたとき、それまで黙っていたモノが見計らったように話し出した。

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