表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/340

第七十三話:仕組まれた罠と公開された秘密

夏の海辺への約束を胸に、蓬田香織よもぎだ かおりは、山本嘉位やまもと かいと共に、迫りくる波乱に立ち向かう覚悟を決めた。桜井さんと佐伯麗華さえき れいかが何か企んでいることを知っていたが、それがいつ、どのように仕掛けられるのかは分からなかった。


ある日の放課後、香織が八重やえと一緒に昇降口へ向かっていると、数人の女子生徒がざわざわと何かを話しているのが聞こえてきた。


「ねぇ、聞いた? あの地味な子と山本君のこと…」

「えー! マジで!? なんか、信じられないんだけど!」


香織は、自分のことだと直感的に悟った。周りの生徒たちの視線が、香織に集まっているような気がした。


不安になりながらも、昇降口へ向かうと、そこに、一枚の紙が貼り出されているのが見えた。多くの生徒たちが、その紙の周りに集まっている。


「何だろう…?」


香織は、八重と一緒にその紙に近づいていく。そして、そこに書かれている内容を見て、香織は息を呑んだ。


それは、香織と「かい」が、学校の裏門近くの木陰で抱き合っている写真だった。写真には、二人の姿がはっきりと映っている。そして、その写真の下には、こう書かれていた。


「和井田学園高等部のプリンス、山本嘉位くんと、地味な蓬田香織さんの、衝撃スクープ! 放課後、二人きりで一体何を…?」


その写真と文章を見た瞬間、香織の頭の中が真っ白になった。二人の秘密の場所での、秘密の時間。それが、白日の下に晒されてしまったのだ。


周りの生徒たちのざわめきが、香織の耳に届いてくる。「マジかよ…」「あの地味な子が…」「山本君、こんな子と…?」好奇心と、そして香織に対する侮蔑の視線。


香織は、その場から逃げ出したかった。しかし、足が動かない。恥ずかしさと、そして、彼に迷惑をかけてしまったという思いで、香織は立ち尽くすしかなかった。


八重が、香織の隣で怒りに震えているのが分かった。「なにこれ! 誰がこんなこと!」


その時、八重の視線が、昇降口の隅にいる二人の女子生徒に向けられた。桜井さんと佐伯さんだ。二人は、香織たちの様子を見て、冷たい微笑みを浮かべている。彼女たちが、これを仕組んだのだ。


香織は、桜井さんと佐伯さんの方を見た。二人は、香織と目が合うと、フッと鼻で笑った。その姿は、香織に明確な勝利宣言をしているかのようだった。


「山本嘉位と付き合ってるなんて、あなたには、分不相応なのよ」


佐伯さんの声が、香織の心に響いた。そして、その言葉は、楓から言われた言葉と重なる。


香織は、心が締め付けられるような痛みを感じた。二人の秘密が、公開されてしまった。そして、それは、桜井さんと佐伯さんの策略だった。これから、どんな波乱が待ち受けているのだろうか。


その時、ざわめきの中を掻き分けて、一人の男子生徒が香織たちの元へやってきた。山本嘉位だ。彼は、昇降口の貼り紙を見て、怒りに震えているようだった。


「…これ…誰がやったんだ…!」


「かい」の声は、低く、そして怒りに満ちていた。彼の瞳は、桜井さんと佐伯さんの方を向いている。二人の顔から、笑みが消えた。


波乱は、すでに始まっている。そして、それは、香織が想像していたよりも、ずっと大きなものになる予感。二人の秘密は、白日の下に晒され、彼らの関係は、試されることになるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ