表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

71/340

第七十一話:夏の予感と波乱の序曲

山本嘉位やまもと かいの家での夜の密会で、夏の海辺での「大人の関係」へと進むことを誓った蓬田香織よもぎだ かおり。彼の言葉と温かい抱擁は、香織の心を、期待と、そして少しの緊張で満たしていた。


彼の家を出て、送迎車で送ってもらう帰り道。車窓から流れる夜景を見ながら、香織は夏の海辺でのことを想像していた。彼と二人きりで過ごす時間。それは、香織にとって初めての、そして特別な体験になるだろう。


家に帰り着き、自分の部屋に入った香織は、ベッドに倒れ込んだ。心臓がドキドキと鳴っている。夏の海辺。彼との「大人の関係」。


不安は尽きない。しかし、彼への愛おしい気持ちと、彼をもっと知りたい、彼に自分のすべてを委ねたいという気持ちが、香織の心の中で大きくなっていた。


翌日から、学校生活に戻ると、香織と「かい」の間には、以前よりも強い繋がりが生まれたように感じられた。周りの目を気にしながらも、視線が合うと、お互いに微笑み合う。それは、二人にしか分からない、秘密の合図だ。


桜井さんや、転校生の佐伯さんといったライバルたちの存在は、相変わらず香織を不安にさせる。しかし、香織は、彼の言葉を信じている。彼が好きなのは、自分だけだと。そして、夏の海辺での約束。それは、香織にとって、彼との関係が本物であることの証のように感じられた。


夏休みが近づいてくるにつれて、香織の心臓はドキドキと鳴り始めた。夏の海辺。彼と二人きり。それは、香織の人生にとって、大きな転換点になるだろう。


しかし、そんな香織の期待とは裏腹に、新たな波乱の兆候が見え始めていた。


ある日の放課後、香織が八重やえと話していると、佐伯麗華が二人に近づいてきた。佐伯さんは、香織に冷たい視線を向けながら言った。


「蓬田香織さん? 嘉位様と、親しくしていらっしゃるそうね?」


佐伯さんの言葉に、香織は戸惑った。なぜ、佐伯さんが二人の関係を知っているのだろうか。


「…あの…お友達…ですけど…」香織は、震える声で答える。


「お友達、ですか。ふふ、面白いですわね」佐伯さんは、香織の周りを回りながら、香織を値踏みするように見る。「嘉位様には、もうすぐ、ふさわしい方がいらっしゃるのに。あなたのような方が、嘉位様の邪魔をするのは、嘉位様のためにならないわ」


その言葉は、以前楓から言われた言葉と似ていた。そして、それは、香織に明確な警告を突きつけていた。


佐伯さんは、香織に冷たい視線を投げかけ、何も言わずに立ち去っていった。香織は、その場に一人残され、佐伯さんの言葉の意味を理解しようとしていた。彼女もまた、楓と同じように、二人の関係を邪魔しようとしている。


さらに、別の日の放課後、香織は学校の廊下で、桜井さんと佐伯さんが話しているのを偶然耳にした。


「ねぇ、麗華。聞いたんだけど、あの地味な子と山本君、なんか怪しいらしいよ?」桜井さんが佐伯さんに話している。

「あら、そうなんですか? ふふ、嘉位様も、面白い方ですわね」佐伯さんが冷たい声で答える。


二人の会話を聞いて、香織の心臓が冷たくなった。二人の関係は、クラスメイトたちの間で噂になり始めているのだろうか。そして、桜井さんと佐伯さんが、手を組んで二人の関係を壊そうとしているのだろうか。


波乱は、すでに始まっている。それは、香織が想像していたよりも、ずっと大きなものになる予感。そして、その波乱は、夏の海辺での約束を、揺るがしかねないものだった。


夏の予感は、甘いだけではない。それは、波乱の序曲を奏で始めていた。二人の愛は、この波乱を乗り越えられるのだろうか。夏の海辺への道のりは、険しいものになるかもしれない。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ