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第七十話:夜の密会と未来への誓い

佐伯麗華さえき れいかという新たなライバルの出現は、蓬田香織よもぎだ かおりの心を再び不安にさせた。彼女は、「かい」の幼馴染であり、彼の家に「繋がり」があると言う。それは、かえでと同じように、二人の関係にとって大きな壁になるかもしれない。


ある日の夜、香織は「かい」からのメッセージで、彼の家に来ないかと誘われた。彼の家。そこは、楓との辛い思い出がある場所だ。しかし、彼と二人きりで話したいという気持ちが勝った。


夜になり、香織は「かい」の送迎車で彼の家へ向かった。広い敷地、立派なお屋敷。やはり、何度来ても緊張してしまう。


玄関では、メイドの猿飛千佳さるとび ちかが出迎えてくれた。千佳は、香織に優しく微笑みかけ、「お待ちしておりました」と言った。千佳がいることに、香織は少しだけ安心した。


応接間に案内され、「かい」と二人きりになる。部屋の豪華な雰囲気に圧倒されるが、彼の傍にいるだけで、心が落ち着くのを感じた。


「ごめんね、こんな夜遅くに呼び出してしまって。でも、どうしても、蓬田さんと、ゆっくり話したかったんだ」


「かい」は、香織の手を取り、優しく握りしめた。彼の指先が、香織の手を優しく包み込む。


香織は、今日の佐伯さんのことを、「かい」に尋ねた。彼女の存在が、香織を不安にさせていることを、正直に話した。


「かい」は、香織の話を真剣に聞いていた。そして、佐伯さんとの関係について、香織に詳しく説明してくれた。彼女の家と山本家との「繋がり」は、ビジネス上の関係であり、佐伯さん自身は、幼い頃から「かい」に好意を寄せているけれど、「かい」にとっては、妹の楓と同じように、家族のような存在であること。


「だから、蓬田さん、心配しないで。僕が好きなのは、蓬田さん、君だけだ。佐伯さんのことも、楓のことも、桜井さんのことも…関係ない。僕が一緒にいたいのは、蓬田さんだけだ」


彼の言葉は、香織の心を温かくする。不安は完全に消えないけれど、彼が自分を選んでくれているという事実が、香織を強く支えてくれる。


「ねぇ、蓬田さん。この夏、二人で海に行こうって約束したでしょう?」


「かい」が、夏の約束について話した。香織は、顔を赤らめながら頷いた。


「あの場所で…蓬田さんと、もっと深い関係になりたいと思ってる」


「かい」の声は、真剣な響きを帯びていた。深い関係。それは、香織が想像していた「大人の関係」へと進むということなのだろうか。


香織は、彼の言葉に戸惑った。怖い気持ちもあった。でも、彼をもっと知りたい。彼に、自分のすべてを委ねたいという気持ちも、香織の心の中で大きくなっていた。


「…あの…」香織は、言葉を探す。


「無理にとは言わない。でも…もし、蓬田さんも同じ気持ちなら…この夏、あの海辺で、僕たちの関係を、もっと特別なものにしたい」


「かい」は、香織の瞳を真っ直ぐ見つめた。その瞳には、香織への深い愛と、そして、未来への希望が宿っている。


香織は、少し迷ってから、こくりと頷いた。それは、彼への信頼と、彼と共に未来へ進んでいきたいという、香織なりの決意だった。


「ありがとう…!」


「かい」は、感極まったように香織を抱きしめた。彼の温かい腕の中で、香織は、これまでの不安や悩みが溶けていくのを感じた。


「この夏、きっと、蓬田さんにとって、忘れられない夏にするよ」


彼の言葉は、香織の心に深く響いた。夏の海辺。それは、二人の愛が、新しい段階へと進む、特別な場所になるだろう。


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