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第六十七話:雨上がりの誓い

激しい雨が降りしきる中、山本嘉位やまもと かいと再会し、彼の苦悩と真実を聞いた蓬田香織よもぎだ かおりは、彼の言葉を信じ、共に困難を乗り越えていくことを選んだ。雨の中の抱擁は、二人の絆をさらに強く結びつけた。


「送っていくよ」


雨が小降りになった頃、「かい」は香織の手を取り、待ち合わせ場所を出た。濡れた髪から滴が落ちる。「かい」は自分の上着を香織にかけたままだ。


「ありがとう…」香織は、彼の優しさに心が温かくなる。


二人は、静かに歩き始めた。雨上がりの空気は澄んでいて、街の明かりが水たまりに反射してキラキラと輝いている。香織は、彼の隣を歩きながら、心の中にあった不安が、少しだけ和らいでいるのを感じていた。婚約者のこと、彼の家のこと、かえでのこと。すべてが消えたわけではないけれど、彼が一人で苦しんでいるのではないという安心感、そして、共に立ち向かえるという勇気。


「ごめんね、雨の中、長い時間待たせてしまって…」と「かい」が香織に言った。

「ううん、大丈夫…山本君に会えて…嬉しかったから…」香織は顔を赤らめる。


「ありがとう」と「かい」は優しく微笑む。


香織の家の近くまで来ると、「かい」は立ち止まった。雨はほとんど止んでいる。街灯の明かりが、二人の影を長く伸ばす。


「蓬田さん…」と「かい」は香織の手を握りしめた。「僕のこと、信じてくれて…ありがとう」


「…はい…」


「不安にさせてしまうことも、辛い思いをさせてしまうことも、きっとこれからもたくさんあると思う。でも、一人で抱え込まないでほしい。どんなことでも、僕に話してほしいんだ」


彼の真剣な言葉に、香織はこくりと頷いた。


「…はい…山本君も…何かあったら、私に話してください…」


「かい」は、香織の言葉を聞いて、安堵したような、そして心から嬉しいという表情になった。


「ありがとう。約束する。どんなことでも、蓬田さんに話すよ」


そして、「かい」は香織を優しく抱きしめた。雨上がりの夜。街灯の明かりの下で交わされる抱擁は、二人の秘密の誓いのようだった。


「また、明日、学校でね」

「うん…またね…」


「かい」は香織を抱きしめる腕を緩め、香織の唇に、短いキスをした。そして、香織の家から離れていくのを見送った。


家に帰った香織は、心の中に温かい光が灯っているのを感じていた。彼を信じるという選択。それは、香織にとって、大きな勇気が必要なことだった。しかし、その選択をしたことで、香織の心は、以前よりもずっと強くなれたような気がした。


彼の婚約者のこと。彼の家のこと。楓のこと。これから、どんな困難が待ち受けているのだろうか。不安は尽きない。しかし、彼と一緒に乗り越えていける。そう思うと、どんな困難にも立ち向かえるような気がした。


スマートフォンを見ると、「かい」からのメッセージが届いていた。「家に着いたよ。今日は、本当にありがとう。蓬田さんに会えて、心が温かくなったよ」


彼のメッセージに、香織は顔を赤らめた。そして、メッセージを返信する。「私も、山本君に会えて、嬉しかったです」


雨上がりの夜。二人の物語は、新たな章へと進んでいく。それは、波乱に満ちているだろう。しかし、二人の愛は、この雨によって、さらに強く結ばれた。


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