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第五十九話:親友の怒りと支え

蓬田香織よもぎだ かおりは、山本嘉位やまもと かいからのメッセージや電話を無視し続け、彼の婚約者という事実から逃げようとしていた。学校では、彼の姿を見かけることはなかった。彼の姿がないことに、少しだけ安堵したが、同時に、寂しさも感じていた。


放課後、香織は八重やえといつものカフェに行った。八重は、香織の様子がまだおかしいことに気づいていた。


「かおり、大丈夫? なんか、ずっと元気ないよ?」八重が心配そうに尋ねる。

「う、ううん…なんでもないよ…」香織は曖昧に答える。


しかし、八重は諦めなかった。


「なんかあったんでしょ! 私に言えないこと? もしかして…山本嘉位のこと?」


八重の言葉に、香織の心が揺れる。八重には、すべて話している。今回のことも、八重に話せば、少しは心が軽くなるかもしれない。


香織は意を決して、八重に、山本嘉位に婚約者がいることを知ったこと、そして、彼から逃げ出してしまったこと、そして、彼からのメッセージや電話を無視していることを話した。


八重は、香織の話を黙って聞いていた。そして、香織が話し終えると、八重は、まるで自分のことのように怒った。


「はぁ!? なにそれ! なによ、山本嘉位! かおりと付き合ってるくせに、婚約者がいるってどういうことよ!?」


八重は、テーブルを叩き、怒りを露わにした。


「かおりのこと、馬鹿にしてんの!? 傷つけすぎでしょ、あいつ!」


八重の怒りに、香織の心臓は締め付けられる。八重は、香織の気持ちを代弁してくれているかのようだった。


「ごめん、八重…なんか、私…馬鹿みたいだよね…」香織は、涙声で呟く。

「馬鹿なんかじゃないって! かおりは、山本嘉位のこと、本気で好きだったんだから! それなのに、あいつ、かおりのこと、どう思ってんだよ!」


八重は、怒りながらも、香織の手を取った。その手は温かく、香織の心を強く支えてくれた。


「ねぇ、かおり。もし、あいつが本当に婚約者がいるのに、かおりと付き合ってたんだとしたら、最低だよ。でも、もしかしたら、何か、かおりには分からない事情があるのかもしれない。山本嘉位、なんか秘密抱えてそうじゃん?」


八重は、少し冷静になり、香織に言った。山本嘉位の抱える秘密。香織も、彼の世界には、自分には分からない複雑な事情があることを感じていた。


「でもさ、どんな事情があるにしても、かおりをこんなに傷つけるのは、許せないことだよ。だからさ、かおりがどうしたいのか、自分で決めていいんだよ。もし、あいつのこと、もう信じられないって思うなら、距離を置いてもいいんだ」


八重の言葉に、香織は涙が溢れ出した。彼を信じたい。でも、婚約者がいるという事実は、香織の心を深く傷つけていた。


「…私…どうすればいいのか、分からない…」香織は、正直な気持ちを八重に打ち明けた。


「大丈夫だよ。一人で悩まなくてもいいんだ。私がいるじゃん! かおりのこと、いつでも支えるから!」


八重は、香織を優しく抱きしめた。八重の温かい腕の中で、香織は、この辛い状況を一人で乗り越えなくてもいいのだということに、心が救われるのを感じた。


「ねぇ、もし、あいつがちゃんと説明したいって言ってきて、かおりも聞く気があるなら、私、一緒にいてあげるよ。一人で会うのが怖かったら」


八重の言葉に、香織は顔を上げた。八重は、いつも香織の味方でいてくれる。彼女がいてくれるだけで、どんな困難も乗り越えられるような気がした。


「ありがとう、八重…本当に…」


八重との話で、香織の心は少しだけ軽くなった。しかし、山本嘉位の婚約者という事実は、まだ香織の心を重く圧迫している。彼は、香織に何を説明するのだろうか。そして、香織は、彼の言葉を信じることができるのだろうか。


波乱は、まだ続いている。そして、その波乱の中で、香織と八重の絆は、さらに強固なものになっていく。

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