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第四十三話:ライバルの視線と彼の約束

放課後、蓬田香織よもぎだ かおりは、山本嘉位やまもと かいとの待ち合わせ場所へと向かっていた。学校の裏門近くにある、あまり人が通らない場所。そこは、彼と香織の、秘密の場所になりつつあった。


少し早く着いてしまった香織は、待ち合わせ場所で彼を待つ。五月の終わりの、少し暑くなった空気が肌を撫でる。学校の校庭からは、部活動の声が聞こえてくる。


数分後、「かい」が姿を見せた。彼は、周りを警戒するようにキョロキョロとあたりを見回しながら、香織の元へ近づいてくる。


「ごめん、待った?」

「い、いえ…私も今来たところです…」


「かい」は香織の顔を見て、少しだけ安堵したような表情になった。


「あのさ、昼間、メッセージありがとう。嬉しかったよ」


「あの…こちらこそ…」香織は顔を赤らめる。


二人の間に、少しだけ気まずい沈黙が流れる。学校で会うのは、修学旅行中とはまた違う緊張感がある。


「あのさ、蓬田さん…昼間、桜井さんのこと、気にしていたでしょう?」


「かい」が香織の心を見透かすような言葉を言ったので、香織は驚いた。


「えっ!? なんで…」

「なんとなく、分かったんだ。蓬田さんが、僕たちのことを見てるって」


彼の言葉に、香織は顔をさらに赤らめた。やはり、見られていたのだ。そして、自分の嫉妬心に気づかれていたのだ。


「…ごめんなさい…」香織は俯きながら謝った。

「謝らなくていいんだよ。蓬田さんが、僕のことを気にしてくれてるんだなって思ったら、嬉しかったから」


「かい」は優しくそう言うと、香織の手を取った。彼の指先が、香織の手を優しく包み込む。


「あのね、蓬田さん。桜井さんのことは、本当に大切な友達だよ。彼女のご家族とは、生まれる前からの付き合いで、行事等あるたびに、家族ぐるみで来てくれ、仲が良いんだ、楓とは特に仲が良いかな。」


「かい」は、桜井さんとの関係について、正直に香織に話してくれた。彼の言葉は、香織の心を温かくする。彼を信じたい。彼の言葉を信じよう。


「それに…」と「かい」は続けた。「僕が好きなのは、蓬田さん、君だけだ。他の誰でもない」


彼の真っ直ぐな言葉に、香織の心臓は大きく跳ねた。何度聞いても、彼の「好きだ」という言葉は、香織の心を震わせる。


「蓬田さんには、僕の周りの色々なことで、不安な気持ちにさせてしまうかもしれない。特に…妹の楓のこととか…」


「かい」は、妹の楓の存在が、香織にとって大きな壁になる可能性があることを、改めて香織に話した。楓は、兄である「かい」に異常なほどの執着心を持っており、他の女性が彼に近づくことを決して許さないだろう。


「楓は…少し、特別なところがあるんだ。だから、もしかしたら、蓬田さんのことを…」


「かい」は言葉を選びながら話す。楓が、香織に対してどんな行動に出るか、彼にも予測できないのだろう。


「でも、安心してほしい。どんなことがあっても、僕は蓬田さんを守る。そして、蓬田さんと一緒に、この困難を乗り越えていきたい」


「かい」は香織の手を強く握りしめた。彼の力強い言葉に、香織は勇気をもらった。不安はあるけれど、彼が一緒に乗り越えていこうと言ってくれるなら。


「だから、もし、僕の周りのことで、何か不安なことや、辛いことがあったら、すぐに僕に言ってほしい。一人で抱え込まないでほしいんだ」


彼の優しさに、香織の目から涙が溢れそうになる。自分は、彼にこんなにも大切に思われている。


「…はい…」香織は、頷くのが精一杯だった。


「かい」は香織の涙に気づき、香織の頬に手を添え、優しく涙を拭った。


「泣かないで。蓬田さんの泣き顔を見ると、僕も辛くなるから」


そして、「かい」は香織の唇に、優しいキスをした。放課後の学校の裏門。誰かに見つかるかもしれないというスリルの中で交わされるキスは、香織の心をさらに燃え上がらせた。



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