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第四一話:帰路と胸に秘めた想い

修学旅行四日目。帰宅の日を迎えた。ホテルで朝食を済ませ、荷物をまとめる。三泊四日という短い期間だったけれど、香織かおりにとっては、忘れられない、そして人生が大きく変わる旅となった。


バスに乗り込む前に、生徒たちは校庭に集まり、解散式が行われた。引率の先生からの挨拶、生徒代表の言葉。香織は、ぼんやりとそれらを聞きながら、昨夜の山本嘉位やまもと かいとの誓いを思い出していた。一生涯のパートナー。両親への挨拶。彼の言葉は、香織の心の中で、確かな重みを持って響いている。


解散式が終わり、それぞれのバスに乗り込む。香織たちの班は、行きと同じバスだった。窓際の席に座り、香織は窓の外の景色を眺めた。数日前まで見慣れない景色だったけれど、今は少しだけ、この場所に愛着が湧いているような気がした。


バスがゆっくりと走り出し、ホテルを離れる。修学旅行は終わった。これから、日常に戻るのだ。彼との、秘密の逢瀬があった夜も、ドキドキしながら過ごした昼間も、すべてが過去になる。


しかし、香織の手の中には、彼との繋がりを示す、キーホルダーがある。小さなスマートフォンの形。そして、四つの「i」。それは、彼が自分にくれた、秘密のアイテム。そして、二人の秘密の逢瀬を可能にしてくれた、大切なものだ。


バスの中では、生徒たちが旅の思い出を語り合ったり、お土産を見せ合ったりして賑わっている。香織は、八重やえと隣の席だったが、あまり会話に入ることができなかった。香織の心は、彼との思い出と、これから始まる未来への不安でいっぱいだったからだ。


「ねぇ、かおり、どうしたの? なんか元気ないじゃん?」八重が香織の顔を覗き込む。

「う、ううん、大丈夫だよ…ちょっと、疲れただけ…」香織は誤魔化す。


八重は、香織の様子がいつもと違うことに気づいているようだったが、それ以上は追及しなかった。


バスは順調に進み、だんだんと見慣れた景色になっていく。修学旅行の思い出が、走馬灯のように香織の頭の中を駆け巡る。彼との出会い、デート、そして修学旅行での秘密の逢瀬。すべてが、香織の人生に、新しい色を加えてくれた。


しかし、同時に、彼の周りにいるライバルたちの顔も脳裏に浮かぶ。美少女の桜井さん。そして、彼の妹であるかえで。彼女たちは、きっと二人の関係を簡単に許さないだろう。これから、どんな困難が待ち受けているのだろうか。


不安は尽きない。でも、彼への想いは、その不安を乗り越えるだけの強さを持っている。彼は、自分を選んでくれた。自分の一生涯のパートナーになってほしいと言ってくれた。その言葉が、香織の心を強く支えてくれる。


バスが学校に到着し、校庭に入っていく。見慣れた校舎。そして、校庭に集まっている先生や家族らしき人々の姿。日常が、すぐそこまで来ている。


バスを降り、荷物を受け取る。生徒たちは、それぞれ家族や友人の元へと散っていく。香織は、八重と別れの挨拶を交わした。


「じゃあね、かおり! 修学旅行、楽しかったね!」

「うん、八重もね! ありがとう!」


八重と別れ、香織は一人、家路を急ぐ。手に持った旅行カバンは重かったが、それ以上に、心の中には、彼との思い出と、これから始まる未来への希望と不安が詰まっていた。


家に帰る途中、香織はスマートフォンを取り出し、「かい」とのトーク画面を開いた。修学旅行中、彼とのメッセージや電話は、香織にとって、何よりも大切な時間だった。


何かメッセージを送ろうか迷ったが、結局何も送れなかった。彼も今頃、家に帰っているだろう。


しかし、香織が歩き出したその時、スマートフォンが鳴った。メッセージの通知。差出人は、「山本嘉位」。


「今、大丈夫かな? 家に着いた?」


彼のメッセージを見た瞬間、香織の心臓は大きく跳ねた。彼は、もう香織に連絡してくれた。修学旅行が終わっても、二人の繋がりは終わらない。


「はい、大丈夫です。今、家に着いたところです」


香織は急いで返信した。そして、これから彼とどんな会話をするのだろうか、次にいつ会えるのだろうか、という期待と不安が、香織の胸に広がった。


修学旅行は終わった。しかし、山本嘉位と蓬田香織の物語は、まだ始まったばかりだ。波乱に満ちた日常が、二人を待っている。そして、二人は共に、その困難を乗り越えていくことになるだろう。


(つづく)

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