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第三五話:深まる夜と二人の距離

月の光が降り注ぐ屋上で、山本嘉位やまもと かい蓬田香織よもぎだ かおりは、初めてのキスを交わした。それは、優しくて、温かくて、そして香織の心を震わせるような、特別なキスだった。


唇が離れた後も、二人はしばらくの間、見つめ合っていた。月の光に照らされた「かい」の顔は、優しさに満ちていた。香織は、顔を赤らめながら、彼から目を離すことができない。


「…蓬田さん…」


「かい」が香織の名前を呼ぶ声は、どこか甘く、そして切ない響きがあった。彼は、香織の頬に手を添え、そっと撫でた。その指先の温かさに、香織の体は熱くなっていく。


「ねぇ、蓬田さん…もう少しだけ…このまま…」


「かい」は、香織を再び優しく抱きしめた。今度の抱擁は、先ほどよりも少しだけ強く、そして、香織の体に密着する。彼の心臓の音が、香織の胸に伝わってくる。


月の光だけが二人を照らす屋上。周りには誰もいない。この空間には、彼と香織、そして二人の間に流れる特別な空気だけが存在している。


「かい」は、香織の髪に顔をうずめ、深く息を吸い込んだ。そして、香織の耳元で囁く。


「蓬田さんのこと、すごく好きだよ…本当に…」


彼の言葉が、香織の心の奥深くまで響き渡る。彼に、こんなにも愛おしい言葉を囁かれるなんて。香織は、嬉しさと恥ずかしさで、顔を彼の胸にうずめる。


「ねぇ…蓬田さん…もっと、近くに…いてもいいかな…?」


「かい」の声は、どこか誘うような響きがあった。その言葉の意味を、香織は直感的に理解した。もっと近くに。それは、体の距離だけではない。心の距離、そして…


香織は何も言わずに、ただ彼の抱擁に応えるように、彼の背中にそっと腕を回した。それは、香織なりの、彼への同意の意思表示だった。


「かい」は、香織の意思表示を受け取ると、ゆっくりと香織の体を持ち上げた。香織は、驚きながらも、彼の首に腕を回し、しっかりと彼にしがみつく。


彼は香織を抱き上げたまま、屋上の隅にある、少しだけ人目から隠れる場所に移動した。そこには、小さな物置のようなものがあり、その陰になって、外からは二人の姿が見えにくくなっている。


「ここでなら…もう少し…二人きりで…」


「かい」の声は、少しだけ掠れていた。彼は、香織を壁に優しくもたれかけさせると、香織の体にさらに近づいた。


二人の体は、月の光の下で密着する。香織は、彼の体の温かさ、そして彼の強さによって、自分の体が熱くなっていくのを感じた。


「ねぇ、蓬田さん…もう、我慢できない…」


「かい」は、香織の顔に再び近づき、今度は情熱的なキスを始めた。それは、先ほどの優しかったキスとは違う、深く、そして香織のすべてを求めようとするようなキスだった。


香織は、彼のキスに応えながら、彼の腕にしがみつく。初めて感じる、体の熱、そして、彼に求められることへの、本能的な喜び。


二人の体は、月の光の下で一つになろうとしていた。修学旅行の夜。二人の関係は、新しい段階へと進んでいく。そこには、青春の甘さだけでなく、少しだけ危険な、大人の世界の扉が開かれようとしていた。

え、え、え、、、修学旅行で一線を越えちゃうの?つづく

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