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第三一話:明かされる秘密と月の誓い

開けられた部屋のドアの向こうに立っていたのは、山本嘉位やまもと かいと、メイドの猿飛千佳さるとび ちかだった。千佳の姿を見た香織は、昨夜の電話で聞こえた女性の声の正体が、本当にメイドさんだったのだと悟り、安堵と同時に、またしても自分が勝手に勘違いして彼を疑ってしまったことに顔を赤らめた。


「蓬田さん…! やっぱり来てくれたんだ!」と「かい」は香織の手を取り、部屋の中に招き入れた。

「あ、あの…どうして、私がここにいるって…?」香織は戸惑いながら尋ねる。


「かい」は優しく微笑みながら、香織の手にあるキーホルダーを指差した。


「あのキーホルダー、気づいてくれたんだね。あれ、実は僕が作ったんだ。ミニチュアのスマホに見えるでしょ? あれに、GPS機能と、簡単なメッセージ機能をつけてあるんだ」


「えっ!?」香織は驚いてキーホルダーを見つめた。ただの飾りだと思っていたキーホルダーに、そんな機能がついていたなんて。


「GPS機能で、僕が今いる場所に蓬田さんを誘導できるようになってるんだ。そして、数字の0526は…僕の誕生日。あれが、メッセージを開くためのパスコードになってるんだ」


「かい」はそう言うと、香織からキーホルダーを受け取り、小さな画面に0526と入力した。すると、画面に短いメッセージが表示された。


「このメッセージを受け取ったら、矢印の方向へ来て。話したいことがある」


「かい」は、そのメッセージを香織に見せた。「これを、夜間の使用可能時間以外にも、蓬田さんと連絡を取るために作ったんだ。修学旅行中は、スマホが使えない時間が多いから」


香織は、彼の thoughtful さと、自分と連絡を取るためにそこまでしてくれたことに、心が温かくなった。


「でも…どうして、こんなことを…?」香織は尋ねる。

「あと、部屋に千佳さんが居たのは?」重ねて尋ねる。


「蓬田さんと、二人きりで話したかったんだ」

「ほら、ここのホテルも家が経営しているわけで、千佳さんは修学旅行中、非常勤の救護班に同行しているんだよ」


「かい」は千佳に目配せをした。千佳は頷き、静かに部屋を出て行った。


部屋には、「かい」と香織だけになった。窓の外からは、月の光が差し込んでいる。香織は、彼の真剣な眼差しに、ドキドキが止まらない。


「あのね、蓬田さん。昼間にサービスエリアで、あのキーホルダーのこと聞かれた時、ちゃんと答えられなくてごめん。話したいことが、たくさんあったから」


「かい」は、香織の手を再び取り、優しく握りしめた。


「修学旅行が始まる前に、蓬田さんにこれを渡したのは、この旅行中に、君ともっと深い話をしたいと思ったからなんだ。班が違っても、こうして、君と二人きりで会えるように」


「かい」は、香織の瞳を真っ直ぐ見つめた。


「蓬田さん。僕は、君のことが…好きだ」


その言葉に、香織の心臓は大きく跳ね上がった。期待していた言葉。でも、実際に彼から聞くと、想像以上に嬉しくて、胸がいっぱいになる。


「入学式で会った時から、ずっと君のことが気になっていた。君の、地味なのにどこか惹きつけられる雰囲気、芯の強さ、そして…君の笑顔。すべてが、僕の心を強く惹きつけるんだ」


「かい」は、自分の正直な気持ちを、香織に伝えた。今まで、多くの女性から好意を寄せられてきたけれど、人を好きになるという感情が分からなかった「かい」にとって、香織への気持ちは、初めての、そして特別なものだった。


「僕の世界は、君にとって、少し複雑かもしれない。色々な問題や、しがらみがある。特に…妹の楓のこととか…」


「かい」は、楓の存在や、彼を取り巻く環境が、香織にとって重荷になるかもしれないという懸念を、正直に話した。


「でも、僕は、蓬田さんと一緒にいたい。どんなことがあっても、君を守りたい。だから…もしよかったら、僕と…付き合ってくれませんか?」


月の光が差し込む部屋で、「かい」は香織に告白した。香織の目から、喜びの涙が溢れ出した。


「…はい…! 喜んで…!」


香織は、彼の告白を受け入れた。「かい」は香織を優しく抱きしめた。彼の温かい腕の中で、香織はこれまでの不安や悩みが溶けていくのを感じた。


「ありがとう、蓬田さん…! 嬉しい…!」


「かい」は香織の髪を優しく撫でる。


「僕、本当に蓬田さんのことが大好きだよ」


月の光の下、二人はお互いの気持ちを確認し合った。修学旅行の夜に結ばれた二人の絆は、きっとこれから、様々な波乱を乗り越えていくことになるだろう。しかし、この夜に交わした月の誓いは、二人の心を強く結びつけるものとなるだろう。




(つづく)


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