第二九六話 救出
チャンスは、1回のみ、いくぞ。
以前腹部を刺されたジャーナリストは、スクープを探しにこの豪雨の中、カメラを持って歩きまわっていた。
通常ならあり得ない行動であるが、そこに、目にしたのは、地下鉄で暴漢から救ってくれた3人であった。
これは、何かある、必ずと、本部に伝え、彼らを追った。
由良
「ここしか、開けられないのですか?」
駅員
「いえ、もう1か所あけられます。道路の反対側の出口です。ハイパーレスキューの方を、誘導したのが、ここになります」
連
「狭いし、真っ暗ですね」
由良
「暗さはこのサングラスで、そう、連それを押すと、ほら」
辺りは真昼のように明るくなった。
嘉位
「先に、僕が中を探ってくる」
「せんさん、聞こえますか」
せんさん
「EC受信、聞こえています。常時監視しています」
嘉位
「リンクしていますよね、この映像、ご覧の通り狭い、せんさん、救急車を3台、こちらに、1台は本田産婦人科に手配を、まず、僕が中を見てきます」
せんさん、かずき
「了解」
まだ道路は濡れていて、泥も湧き出ていた。大横川の氾濫は止められたが、道路側、道端の排水は追いついていない。
嘉位は地下鉄の階段を下りて行くと、ぐらぁっと。危ない。危ない。
「せんさん、階段が途中で、無い。中を見ると、ホームなのかな、見えるが、これ4メートルくらいで、地面、計測できますか」
せんさん
「EC受信、サングラスで中を投影してください。かずき、割り出して」
かずき
「4メートル50。底は固い、駅のホームに降りられます。」
嘉位
「飛び降りる事も出来るが、これだけ濡れていると、救出に影響が出る、何かポールみたいなものが見えるが、解析を」
せんさん
「中に配線が入っています。それ、間隔事に、金具で固定されています」
由良
「嘉位、この持ってきた災害救助用のバックに縄とフックがあるから、それを結んで、ひっかけよう」
嘉位
「了解、連、由良が作り終えたら、僕に投げてくれ」
連は上から、嘉位に縄を投げる。嘉位は、受け取るがバランスを少し崩し、危ない、ふぅ、ちょっとずれると、このまま、真っ逆さまに5メートル落下するな。
問題は、この幅の狭いところで、どうやって、投げ込むか。振りかぶる事は出来るが、足場が、無い
嘉位
「由良、縄は何本ある?」
由良
「連のところに、あと2本」
連
「何をやるのですか?」
嘉位(これしか、やりようがない、いや時間さえあれば、色々あるのだが、この崩れ方だと、ここもあとどれくらい持つのかが、わからない)
嘉位
「せんさん、金具のデータを送ってください。」
かずき
「もう、送ってあります。何をするのですか、キャプテン」
嘉位
「飛び降りながら、縄を金具に」
せんさん
「それは、危険すぎる、かからなければ、キャプテン、死にます」
かずき
「キャプテン、別の方法をシュミレーションします。まっててください」
嘉位(ありがとう、せんさん、かずき、ただ、現場は時間が無いのだ。ここが崩壊したら、要救助者もろとも、助からない、誰も死なせやしない、ここをきつめに2重に縛って、良し)
嘉位(よし、決意を固め)
「由良、後は頼むは」
由良
「断る、断固として、断る、そして、嘉位、嘉位なら出来る。思い出してくれ、出る時に香織さんの言葉を」
嘉位(香織の言葉、そうだ、「嘉位なら、大丈夫、絶対にできる」、香織が言うと、必ずうまく行く。どこか安心する。良し)
(行くよ、香織)
嘉位は意を決して、まっさか様に飛び込み、俺の腕、完璧に捉えろーーーーーーーーーーーーーーぉ
ガチャ
うおうおうおうお、、、バーン
嘉位(危ない、危ない、成功、いや、壁側に引っ張られるとは、予想外、フックのかかり方が、ま、なんとかセーフ、この安全靴凄いな。よし、スコープ。明かりさえともれば大丈夫)
嘉位
「せんさん、由良、成功。」
由良(じゃ、俺もいくかね)
由良
「せんさん、俺もいってくるわ」
由良、良し、1段低くできた。
由良
「飛び込んで来ても良いぞ、縄をかけても、良い、好きな方で、俺と嘉位でキャッチするから」
連(簡単に言うよな、この現状で、よくも平然と、していられる。と、いう僕もなんでだろう、こんなに冷静なのは)
連も、縄をかけて、ふわっと、浮いて、ゆっくり着地
嘉位
「せんさん、3名降下完了」
連
「うわーー!」
せんさん
「どうした、連君、連君」
連
「いや、少し驚いただけ、僕の真横に、隊員が居ます」
「正確には、がれきの下敷きに」
嘉位が状況を確認し、
由良(あ、この隊員、大阪で綱を渡り切った人だ)
隊員
「社長、すいません、救助に来たのですが。突然、上が崩れてきて。身動きが出来なくなり、それより、その奥に3名要救助者です」
「そして、その先に、隊員が1名」
連が隊員にかけよると、左腕から血が出て居て、鉄のパイプで、鉄ポールを打ち続けていた。連の光に気がついていない
連
「助けにきました」
連、もう1度
「助けにきました」
連、もう1度大声で
「助けに着ましたー」
隊員は、一心不乱で、鉄ポールを、打ち続けている、小声でもれて、2.休止、5、休止 2
2.5.2
連は、隊員の両肩の下から腕を入れて、
もう1度大声で
「助けに着ましたーー!!!!」
隊員は、何か、憑りつかれていたかのように、ゆっくりと、連の方を向いて
隊員(た、助かった)
と、がくりと、膝をついた
連
「大丈夫です、助けに着ました、届きました、2・5・2、救難救援信号」
隊員はうわーーーと、泣き出して、
「もう、ダメだと思いました」
連
「大丈夫です、良く、2・5・2、続けてくれました。諦めずに」
隊員は、落ち着いて
「自分は、元東京消防庁パイパーレスキュー、今年より函館で訓練を受け、現場に入ったものです」
「あちらに、居るのは、え、社長?」
連
「はい、ゆらさんです」
連は隊員に肩をかして、ゆっくりと由良のもとへ
隊員
「社長、すいません、救助に来たのですが、上からがれきが落ちてきて、エンジェル、落としてしまい、流されてしまいました」
由良
「無事で良かったです。2・5・2、しっかり受け取りました。」
嘉位
「せんさん、救助者3名、70代女性2名、妊婦さん1名、救助します。妊婦さん、破水しているとの事、救急車は」
せんさん
「救助は反対側、ホームを渡ったら、上にあがってください、そちらは、広いです」
かずき
「本田産婦人科受け入れできます。救急車、現場に待機中」
嘉位のもとに、由良、連が来て、それぞれをおんぶし
嘉位
「これ、僕のエンジェルです。」
ポールを叩き続けた隊員は、左腕から出血しているが、幸い傷は浅い
がれきの下敷きになって居る隊員は、旨く空間が出来ていて、打撲はしているものの、身動きが出来ない
由良
「すぐに、戻ってきます。待って居られますか」
がれきの下敷きの隊員
「社長、大丈夫です」
隊員
「武田 連さんですよね、娘が大ファンでした。サインを、サインを」
連
「わかりました、必ず、戻ってきますので、まっていてください」
そう言い残し、3人は救助者を背負って、外に
嘉位
「眩しく感じますので、目を閉じていてくださいね」
階段を駆け上がり、外に出ると
報道陣
嘉位は、
救急隊に状況を説明し、低体温が2名
外傷はない
妊婦さんは、破水し、すぐに産婦人科に
ここではお産は、困難
引き渡し、応急処置が迅速におこわ慣れ、毛布でくるみ、3台の救急車が現場を離れていく。周りのギャラリーが一斉に相手、道路は全て開放され、救急車を最優先にと
普段は混雑極まりない、道路であるが、奇麗に道が切り開かれていた。
嘉位が戻ってきて
嘉位、由良、連は目で会話を
嘉位
いくぞ
由良
もちろん
連
もう1度
嘉位、由良、連は走り出すと、
入口で、部隊長である
両手を広げて、侵入を阻止してきたのである
由良
「部隊長、中に、まだ隊員が2名、2名、うち1名は、がれきに埋もれています。行かなくては」
部隊長
「行かせません」
連
「必ず戻ると約束したのです」
部隊長
「行かせません。振り返ってください」
連は後ろを振り返ると、
そこには、隊員2名が、止血を済ませ、肩を抱き合わせて立って居た。
部隊長
「我々も駆けつけ、全員で突入し、既に2名救出済みです」
嘉位
「せんさん、救助完了。死者0」
せんさん(泣きながら)
「E.C.受信、 キャプテン、了解」
瞳さん、乙葉、佐伯、桜井も泣いていた。
かずき
「こちら、株式会社八重、災害対策本部へ通達、死者0.全員救出完了。目黒川、大横川氾濫阻止、コンプリート、後はお願い致します」
国土交通副大臣(涙目になり、目頭が熱くなっていた、息子になるのだ。かずき君)
総理
「ありがとう、本当にありがとう。後は任せてください」
せんさん、かずき、ハイタッチ
そして、振り返り、立ち上がると、瞳さんと、乙葉が抱き着いてきて
悟、光も泣いていて、桜井、佐伯も抱き合って、泣いた。
せんさん
「悟、光、これが、和井田、和井田学園だ、キャプテンと、副キャプテンの想いそのものが、和井田学園」
「和井田の想い、繋いでいくんだぞ」
悟、光(涙が止まらない)
「はい!」
こうして、目黒川、大横川の大氾濫は約1年間に及ぶ、山本財閥と株式会社 八重 民間ハイパーレスキュー、そして、政府との連携により、未然に防ぐことが出来たのであった。




