第二四八話 決意
恐る恐る…あの、まだ、宜しいのでしょうか
乙葉が先に、リビングに入っていった。
かずきは、トイレに行くから、乙葉に先に行っていてと
かずきの父
「もちろん、さ、さ、座って、座って」
かずきの母
「オードブルも来たから、食べてね」
「いきなり、お産を、付き合わせてごめんなさいね」
「かずきと、家で待っていた良かったに」
かずきの父
「かずきが行くと聞かないからな、あれは天才だから、勉強だけは、出来る。勉強だけはな」
乙葉!?違う、違う、そうではない
「…」
とりあえず、座ることにした。
かずきも、リビングに来て、乙葉の隣に座った
かずきの母
「かずき、判断が適切でしたね」
かずき
「幾ら経産婦さんといえども、40歳、筋力が衰えているし、そのまま気を失っては、母子ともに危険だから」
「幸いにして立ち合い出産であったことで、ご家族の了承も得られると判断したまで」
乙葉には、意味が解らなかったが、お産についての話であることは、なんとなく。
かずきの父
「かずきは、産科には行かないと言っていたが、考え直さないか?、かずきには、天職に見えたぞ、わたしの後を任せらえる」
かずきの母
「本当に、私から見ても、そう思うわよ」
かずき…いや、そうではない。そうではないのだ
「いや、病院は継がない、何より兄が居るし、姉も居る。二人とも既に医療の道を進んでいるからね」
「そして、僕はもう、働いている 株式会社 八重 取締役 として」
少し、そう1,2分、間が開いた
かずきの父
「株式会社 八重 、あれか、自然災害を未然に防いだ、4,000人の犠牲者が出る、大災害を未然に防いだという、民間のハイパーレスキュー会社」
「そこの、取締役だと!そうだ、勲章、内閣総理大臣賞を授与されたのも、和井田学園の生徒さんだったな、確か、御手洗君、中曽根さん」
乙葉は、まだ、黙っていた。
かずき
「株式会社 八重の代表取締役 社長が、 和井田学園野球部の副キャプテン、その奥さんになる方が、和井田学園野球部、女子マネージャーのキャプテン、中曽根さん」
「そして、僕も野球部。乙葉も野球部マネージャー」
「あの災害シミュレーターのシステムを扱っているのが、僕。」
かずきの母
「す、すごいじゃない!あの大災害は、かずきが防いだということ?」
かずき
「それは、ちょっと違うな。確かにトンネル落盤については、僕だが、土砂災害の死傷者ZEROには乙葉が不可欠だった」
「乙葉が居なければ、集落は流されて、災害は免れなかった。乙葉はキャプテンが言うには、世界で極めて希な素質、性質、特異を持っていると」
かずきの父
「2つ聞かせてくれ、まず、キャプテン?先ほどは、副キャプテンといっていたが、キャプテンは?もう1つ、その乙葉ちゃん、極めて希なとは」
かずき
「まず、キャプテンの事だけど、山本財閥 代表取締役 副社長 筆頭株主 であり、株式会社 八重の非常勤取締役」
かずきの父と母
「ええええ!!!世界の山本財閥!!副社長様!」
かずき
「乙葉の特異性質は、聞いたことはあるはず、絶対音感。その絶対音感の中でも、周波数の範囲がけた違い、さらに遠い音まで、判別が可能」
「キャプテンが言うのは、世界を探しても、何処にも居ないとのこと」
「正しくは、和井田学園に2名いるのだけれどね」
かずきの母
「絶対音感は、もちろん知っているは。産まれて備わっている子も居ましたし、それが特異、世界に一つとは、どういう違いが」
乙葉は、やっと口を開いて
「あの、宜しいでしょうか?小銭をお持ちであれば、このフローリングに複数枚、投げてもらえますか?」
かずきの母、財布を開けて、これで良いのかしら、せっかくだから、全部。
「これを、床に投げて見ればよいのかしら?いくわね」
乙葉は心穏やかにして、集中すると
「500円玉が、3枚、100円玉が4枚、50円玉が2枚、10円玉が8枚、5円玉が1枚、一円玉が、2枚」
かずきの父と母は、床に散らばっている、コインをかき集めると、テーブルの上にひろげてみた
「500円玉が、2枚、100円玉が4枚、50円玉、2枚、10円玉、8枚、5円玉が1まい、1円玉が、2枚」
かずきの父と母
「えええええ!!!!」
乙葉、ちがう、ちがう
「あの、お母さまの靴下の上に、500円玉がもう1枚」
かずきの母が足を見ると、確かに500玉が1枚乗っていた。酔っていた事もあり、気が付かなかった
かずきの母
「えええ!!音しないでしょう、靴下の上よ、この500円玉」
かずき
「それが、絶対音感の上をいく、超絶対音感らしい。」
乙葉は、かずきの腕をとり、得意げに、にこやかに
「はい!」
かずき
「その超絶対音感が、僕たちでは聞き取ることのできない、シミュレーターのごくごく僅かな音を聞き分け、それが落雷のデータ音」
「落雷のデータをさらに解析することで、土砂災害地域を特定でき、部隊を編成する事が出来た。結果的に乙葉が、集落を守ったのだよ」
かずきの父と母…。信じられない。でも、確かに、今こうして、目の前で見ると、酔いが一気にさめた気分であった。
かずきの父は、背筋を伸ばしてから
「かずき、乙葉ちゃんを連れてきたというのは、この話だけではあるまい」
かずきは乙葉に1度視線を向け、そして
「乙葉を生涯の伴侶とします。彼女を手放す事は出来ません。僕にとって唯一無二です。高校に通いながら、株式会社 八重 取締役を務め、そのまま和井田の大学に、学生と会社を両立します」
かずきは、一呼吸おいてから、大きな声で
「僕は、乙葉と結婚します」
(この瞬間、僕の未来は、乙葉の笑顔で満たされていた)
かずきの母は、涙ぐんでいて、かずき、女の子に感心がなかったのに、どちらかというと、おとなしい男の子だったのに、成長したのね、たくましく、そして、こんなにかわいい女性を捕まえて
かずきの母は、父を見て、頷き
かずきの父
「かずきの気持ちは、良く分かった。だが、かずきの気持ちも、そうだが、乙葉ちゃんはどうなのだね?かずき、ほら、ぱっとみ、おとなしそうな、子だろう?」
乙葉は立ち上がり、言いたいことが沢山あった
「まず、かずきは、大人しそうという事は、まったくありません。和井田学園の先輩で、なんでもこなせる、優秀な方です」
「そして、何より、わたしがはじめて、全てを委ねられると確信した、男性であります」
「私からも、お願い致します。かずきさんと結婚させてください。私は、一生かずきさんに、ついていきます」
かずきの父と母は、少し、間をあけて、お互い目で、そして頷き
「わかった。結婚を認めよう、ただし、うちは良いとしても、乙葉さんの御父さん、お母さんの事もある、聞かせてくれないかね?乙葉ちゃん」
乙葉は、安心したせいか、涙が、ボロ、ボロとこぼれながら
「うちは、高知です。裕福な家庭とは程遠いといえばよいでしょうか、父は編集者、新聞記者で朝早く、夜遅くまで仕事をし」
「母が、私たち子供3人を、わたしは中学校まで音楽の習い事でコンクール優勝したこともあり、吹奏楽部の推薦を受けました。」
「一方で、成績有鬚で、野球部、特待生マネージャーという話もあり、費用がかからない、和井田野球部マネージャー特待を選び、和井田学園に進学しました」
「下に弟が二人います」
かずきの母
「それは、おかあさん、大変だったのでしょう」
乙葉は、涙を拭いて
「はい、辛かったと思います。一人で家事育児、もちろん、わたしも家事はやります。ところが」
かずきの父
「ところが?・・・どうしたのだね?」
乙葉
「今回の選挙で、父が出馬し、与党です。初当選しました」
かずきの父、母
「えええ!すごいじゃないか、高知、あ、香曾我部さん?」
乙葉
「はい。貧しかった生活も、少しは改善していくのだと思います」
かずきの父
「それは、それは、おめでとうございます。先生ですか、これはどのように、お話すれば良いのだろうかね、乙葉ちゃんの御父さん、お母さんに」
かずき
「まず、近いうちに僕が会います。」
かずきの母
「かずきが、どうして?」
かずき
「どたばた劇があり、再任命で、国土交通副大臣に香曾我部さんが就任しました。株式会社 八重 取締役として、会話をする場がありますので」
かずきの父、母????
乙葉
「かずき、凄いのですよ、首相、国土交通大臣と政府対策本部と堂々と、指示、指揮、意見をかわし、それが的確で、高校生の、それではないのです」
「あの姿を見たら、わたしは、胸が熱くなって・・・」
かずきの父と母
「災害対策本部に指示、指揮!!!」
かずきの父
「かあさん、もう1度、お酒、お酒のもう!祝杯だ」
かずきの母
「そうね、もう、何も言うことはありません。乙葉ちゃん、かずきを宜しくね、幸せになってね」
乙葉は、その言葉を聞くと、声にならない嗚咽が、フローリングに落ちていく。今度は、泣き止むこと等出来なかった
かずきの父と母は、嬉しくなって
「乾杯!」
かずきの父
「ところで、かずき、すませたのか?その、なんだ」
かずき
「もちろん」
かずきの母
「あら、うちきで、奥手だと思っていたのに、それは過去なのね、たくましくなって、かずき、乙葉ちゃん、お風呂わいているから、一緒に入ってらっしゃい。お布団しいてあるから、パジャマもありますから、週末ゆっくりしていってね」
かずき、乙葉は、目を見あって
心の中で
えええええ、お風呂、一緒に入るのーー!!!
そうして、かずき、乙葉の、金曜日、土曜日、日曜日の大冒険は見事に、意を決したのであった。




