第二三一話 尊さ
シートベルト着用サインが消えると、
香織は嘉位の手を放して
「嘉位、あの、ですね、ですから、嘉位、ついてきてください」
香織は立ち上がり、嘉位も付き添い、トイレに
すると、かずきと乙葉が先に。
乙葉は香織に耳打ちして
「漏れちゃいました」
香織
「わかる、わかる、私も。あれ買っておいて良かったでしょう。着陸の時もたぶん、だから同じものをね、油断は禁物」
乙葉
「え?着陸の時も、ですか」
香織
「大丈夫、あれをつけていれば」
乙葉
「ありがとうございます。先に入りますね」
乙葉、香織はそれぞれ、トイレに
外でかずきと嘉位が待っていた。
かずき
「キャプテンは飛行機どれくらい乗っているのですか?」
嘉位
「数えきれないほど、ほら、僕は産まれてから海外を転々としていたから」
かずき
「あ、そう言っていましたよね。」
そんな会話をしていると、乙葉が出てきて、香織も交代で、出てきた
それぞれ、席に戻ると、
八重がガッツポーズ!
どうやら、八重、楓、瞳さんは大丈夫であったみたいだ。
かずき
「乙葉さん、眠ったほうが、気が楽になるのでは?」
乙葉
「あの、出来れば、かずき君、何かお話をしてください、あと、手を握っていてよいですか?怖いのです」
かずき
「うん、もちろん。」
かずきは、緊張がとけるように、話を始めた
「僕も初めて、北海道、札幌、函館に行くのだけれど」
「この時期、調べたらね、札幌、函館、桜が見ごろなんだって」
乙葉
「え?桜は、入学式が終わったら、すぐに散っちゃいました」
かずき
「札幌で自由行動の時に、行ってみようか!桜!」
乙葉は、段々と怖さが消えて行った。
「はい!」
そのまま飛行機は順調にすすみ、モニターでは、本州を抜けるあたりであった。
せんさん
「もう少しで、シートベルトのアナウンスが流れるのかな?」
瞳さん、大きな声で
「そうね、せん、ガーターベルトって知っている?」
せんさん
「うーん、突然?ガーターベルト、知識的には知っている、お笑い芸人がつけていたりするやつだよね」
瞳さん、大きく聞こえるように
「せん、あのようなものが、好きなのかと、思ってね、買ってあるの!」
「今晩!見せるね!」
「今、見てみる?」
瞳さんは、せんさんの手を取り、ここ、と手を誘導しながら、大きな、大きな声で
「せん、ここと、ここにね、何色だと思う?見てみる?せん?」
せんさん?え、ここで?機内?
瞳さん、さらに大きな声で
「ブランケットを借りて、隠して、どう?見たい?せん?見たい?」
せんさん、予想外の攻撃に、そして想像してしまい、色?何色?
せんさん・・・ここで、稼働停止
C.Aさんがクスクスと笑っていて
楓、うわ!やっぱり、瞳さんだ!
八重、流石瞳さん、飛行機の中でも全開だ
乙葉は、え?どういうこと?あれ、せんさん、固まっている。
せんさん、上空で稼働停止していた。
その時である
アナウンスが流れて
「お客様の中で、お医者様の方、おられませんか?・・・・」
嘉位が手を挙げ
CA:
「お医者様ですか?」
嘉位は、身分証を出して、CAさんに見せて
CAは、連絡を取り
CAさん
「妊婦さん」
嘉位
「わかりました、由良、かずき、一緒に来てくれ」
「あの、緊急医療キット、アルコールとお湯、ゴム手袋等はありますか?」
CAさん
「はい、すぐい」
嘉位と由良とかずきは、ファーストクラスから、一般の席に
CAさん
「奥のこちらです」
一部の方は、動画を撮影しており、流石に配慮をしたSNSで配信をはじめていた。
嘉位と由良とかずきは、すぐにかけより
嘉位は、改めてライセンスを見せて
「医師です、今何週目ですか?」
夫の方は、そうとう、焦っており
「何週目とは」
「週目?」
「なにを、どうすれば」
かずき
「落ち着いてください、僕は産科の息子です。母子手帳があると思います、それを出して頂けますか?」
夫の方は、どうしてよいのか、わからず、指をさして
由良
「CAさん、開けますよ?いいですね?」
由良返答をまたずに、荷物をあけて、取り出し
由良、これだ、ファイルもある。嘉位と、かずき
嘉位
「すこし、回り、席をあけてもらえますか?後ろの席の方、リクライニング、全部倒します」
CAさん
「こちらが緊急医療キットと、先ほど依頼されたものです」
嘉位
「新千歳空港に救急車を、早産です。32週目と伝えて」
CAさん
「わかりました」
嘉位
「このスエット、脱がしますので、宜しいですね?」
夫の方は、おろおろしてしまい、首でうなずくだけ
かずき!!!すでに、頭が
かずき
「初産ですか?」
夫の方、パニックになっていて、答えられない
かずき
「ご兄弟は、居ますか?この子の、お兄ちゃんか、お姉ちゃん」
かずき
「お兄ちゃんなら、頷いてください」
夫の方は、呆然としていたが、頷かない
かずき
「お姉ちゃんは、居ますか?いるのであれば、頷いてください」
夫の方は、あ、娘の事、だ、頷いた
後ろに居た、女の子、3歳位であろうか?
かずきは、にっこりと笑いながら
「大丈夫だからね、ママね。」
女の子は泣きながら
「ママ、痛い、痛い、している」
かずき
「ママ、大丈夫、痛い、痛い、もう少しだから」
嘉位
「CAさん、このままでは、圧迫してしまう、ここでお産します」
「着陸までは、何分ですか?」
CAさん
「20分くらい、まもなくシートベルと着用サインが」
嘉位
「機長に、旋回を、頭が出ているので、初産ではないが、念のため、確認を5分後に再度、確認をします」
夫の方、今更ながら・・・気が動転しており
「32週目で、妻の実家で出産をと、里帰りで札幌に」
嘉位はアルコールで消毒し、ゴム手袋をつけて
「かずき、ぬるま湯を」
「由良、タイムを」
由良
「問題ない」
嘉位
「奥さん良いですか、頭が出ていますので、このまま、産みます、いきんでください。」
「お姉ちゃんが産まれた時のように」
「りきむのではなく、冷静にね、いきんでください。いきますよ」
かずき
「もう一度、いきんでください」
かずき!良し!来た、来た、あと1回
嘉位
「いきますよ、もう1度、いきんでください、せーの」
赤ちゃんが、出てきたが、泣かない。泣いていない
嘉位は、赤ちゃんを持ち上げ、肩甲骨あたりから、背中を数回、たたくと
びちゃーと、何かが飛び出し
「おぎゃーーーーおぎゃーーーー」
嘉位
「2NDタイム、由良」
嘉位
「奥さん、まだ、まだ、耐えて。そのまま」
「CAさん、機長に産まれたので、旋回不要、新千歳に救急車を切迫早産」
CAさん
「わかりました」
嘉位
「タイム?」
由良
「30,31,32,33,34,35」
嘉位は、医療用クリップで臍帯を2カ所固定
「由良、そのまま、続けて」
由良
「36,37,38,39,40」
嘉位、切断
「お母さん、無事に産まれましたよ、大丈夫です。」
かずきが、タオルでくるみ、
かずき
「2000くらい」
嘉位は、おかあさんの胸元に、あかちゃんを
遠くから見ていた、香織、八重、瞳、乙葉は大泣きしていた。
嘉位、由良、かずき、ふーーーーーーーと、息をはく
由良
「ご主人、おめでとうございます、立派な男の子です」
「着陸後、救急車で病院へ」
かずきは、女の子に
「良かったね、ママのいたい、いたい、大丈夫だよ、おねーちゃんになったね。弟が出来たのだよ」
女の子は、泣きながら
「ママと」
奥さんは、疲れていたが
「ありがとうございます。ありがとうございます。」
嘉位
「おめでとうございます。あとは、着陸してから、病院に、救急車が待機していますので」
嘉位は大きな声で
「皆さま、ご協力ありがとうございます、無事に産まれました」
乗客とCAは、拍手しながら、泣いていた。
嘉位
「奥さん、着陸時に、あかちゃん、びっくりするかもしれませんが、大丈夫です」
CAさん、泣きながら
「ありがとうございます、ありがとうございます。いつかは、このような事にあると、訓練はしていたのですが」
「何も出来ませんでした。本当にお医者様がいてくださって、ありがとうございます」
由良
「御父さん、産まれましたよ、もう大丈夫ですからね、あとは着陸後、救急車で病院で」
夫の方は、泣きながら、ひたすら
「ありがとう、ありがとう」
嘉位と由良とかずきは、席に戻り
機長
「皆さま、ご協力ありがとうございます」
CAアナウンスで
「当機はまもなく着陸します」
香織、八重、楓、瞳さん、乙葉は泣いていた。
連は、凄い、連携だ。
「お疲れ様です」
嘉位、由良、かずき も
「問題ない」
飛行機は新千歳空港に到着すると
機長からアナウンスが流れ
「救急車を優先します」
その後、皆一同、飛行機から、外に出て、新千歳空港に
嘉位、由良、かずきたちが、現れえると
何故か、大きな拍手で出迎えてくれていた。
かずき?どうしてだろうか?拍手?出迎え??
嘉位達は、何事もなかったように、通り過ぎて行った。
途中、スーツ姿の方に、名刺を渡され深く感謝をしていたが
嘉位は、責任者であろう方の耳元で、私用です。山本財閥副社長、山本 嘉位と申します
と告げ、
その場を後にした。
嘉位と、由良、かずきは
そのまま電車のホームに移動し、電車を待つことに
香織、八重、楓、瞳さん、乙葉ちゃん、一斉に
「どうして、平然としているのですか!!!!」
嘉位、由良、かずき
「普通でしょ」
せんさん、連・・・普通じゃないよ。
香織、八重、楓、瞳さん、乙葉ちゃん
「普通じゃなーーーーーい!!!」
それぞれが、それぞれに、飛び込んで、抱き着いていたのであった。
< つづく >




