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第二三話:修学旅行説明会と班決め

一緒に行きたかったのに


山本嘉位やまもと かいと手を繋いで登校した月曜日。蓬田香織よもぎだ かおりの心は、温かい幸福感で満たされていた。彼が自分を大切に思ってくれていること、そして自分の誤解を解いてくれたこと。すべてが、香織にとって、彼への想いをさらに強くする出来事となった。


午後の授業は、いつも以上に集中できなかった。彼の隣の席ではないのに、まるで彼の存在が、教室中の空気を満たしているかのようだった。休み時間廊下に出て、彼の教室を除くと彼の周りに集まる生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。彼の手の温かさや、優しい声、笑顔を思い出すたびに、香織の胸はドキドキと鳴った。


その日の午後のホームルームは第2体育館で行われ一年生が集まっていた。担任の先生から今後の行事について説明があった。修学旅行についてだ。三泊四日の修学旅行は、四月末に行われるらしい。


「修学旅行では、各班に分かれて行動する時間があります。班は一人六名で構成します。来週中に班を決めて、提出するようにしてください」


先生の説明を聞きながら、香織は八重やえと顔を見合わせた。もちろん、修学旅行は八重と同じ班になりたい。そして…できれば、「かい」とも同じ班になれたら…。そんな淡い期待が、香織の心に芽生える。


しかし、その期待はすぐに打ち砕かれた。班決めの際、生徒たちは自由に組み合わせを決めることになったのだが、「かい」は、すでに男子生徒たち数人と固まっており、女子生徒が近づきにくい雰囲気だった。しかも、彼の周りには、彼と同じくらい目立つ、スポーツ万能な男子生徒や、容姿端麗な女子生徒たちが集まっている。


香織は、八重と一緒に班を決めることにした。他の仲の良い女子生徒たちに声をかけ、すぐに六人の班ができた。八重も香織と同じ班になれたことに喜んでいる。


「ねぇ、かおり、山本嘉位とは同じ班になれそう?」八重が少し面白がって香織に尋ねる。

「う、うん…難しそう…」香織は正直に答える。彼の周りの華やかな雰囲気と、自分の地味な班とでは、あまりにも世界が違いすぎる。


「ま、そうだよねー。あいつの周りは、なんか別世界の住人ばっかだし」八重は納得したように頷く。「でもさ、修学旅行中も、きっと会える機会はあるよ! 頑張ってアピールしなよ!」


八重の励ましに、香織は顔を赤らめた。アピールなんて、自分にはできるだろうか。


結局、「かい」の班は、彼を中心に、学年の中でも目立つ存在の生徒たちで構成された。男女比は三対三。彼の隣には、学年一の美少女と噂される女子生徒が楽しそうに話しかけている。


香織は、自分の班のメンバーと話しながらも、時折「かい」の班の方に視線を送ってしまう。彼の周りだけ、空気が違うように見える。輝いていて、自分からは遠い世界。


修学旅行の説明は続くが、香織の頭の中は、班が決まってしまったこと、そして「かい」と同じ班になれなかったことへの寂しさでいっぱいだった。三泊四日。彼と離れて過ごす時間。それは、香織にとって少しだけ憂鬱な現実だった。


修学旅行という大きなイベントが、二人の関係にどう影響するのだろうか。香織は、漠然とした不安を感じていた。



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