第二一二話 嘉位 野球が他の球技と決定的に違うところを解く。知るか、知らないかで、野球の上達度が断然違うのだと
嘉位
「ただいまー」
玄関に、香織、楓、千佳、一夜たちが出迎えてくれた。
香織は、良かった。嘉位の顔を見てそう感じていた。
香織
「おかえりなさい、旦那様!さ、中へ」
嘉位
「香織、一回、スーツから着替えて、広間に行くね!」
香織
「かしこまりました、お供します」
嘉位と香織は部屋に行き、
ルームウェアーに着替えると、メイドさんたちがノックをして、中に入り
スーツを持って行ってくれた。クリーニングに出すとのこと。
香織はあえて、ここでは聞かずに、一緒に広間に行った。
嘉位と香織も席について
嘉位
「楓、早かったのだね。どうだった?そうだ、ここ二日間の報告を聞きたい」
楓、私の話、和井田の話で良いのかな、それもそうですね。政治的な部分は、お兄様達ですから。
楓
「はい、まず23日入寮し、それぞれの部屋に、女バス、吹奏楽部、そして我々野球部と」
「各部屋に荷物は運ばれていまして、この日は男女関係なく、荷物の整理で終始しました。」
「お昼は男性寮の食堂で済ませ、せんさんが、午後は、整理をする前に、この場で改めて」
「寮の説明を1時間程、その後、再度整理整頓で、終わりました」
「今日は、入寮式で、寮の施設管理の方々が改めて、紹介があり、体調管理等の説明」
「その後、せんさん、瞳さんが、新一年生の男女寮リーダ、副リーダを決め、その後昼食」
「午後から、吹奏楽部は練習とのことで、部室に、女バスと、野球部は寮の中で自由」
「女バスは、トレーニングルーム、野球部もトレーニングルームで汗を流していましたわ」
「それを見届けて、わたくしたちは、帰宅となりました。」
「せんさんが、明日8時にグラウンドインだから、7時30にはグラウンドに居る事と、伝えて」
食事を済ませて、香織の約束通りに、嘉位と露天風呂へ
風呂からあがり、部屋に戻り
嘉位は、香織に今日の報告をし、そのままベッドイン。夜の生活を・・・。
翌朝、6時に家を3人はお屋敷を出て、和井田の野球グラウンドに向かう。
既に、一年生選手、一年生マネージャーをはじめ、由良も、八重、佐伯、桜井、せんさん、かずきも、既に一塁側ベンチ前に居た。
練習着に、和井田の練習用野球帽を着用。
8時になり
監督が挨拶を
「ようこそ、和井田野球部へ、今日から練習が始まるね」
「練習といっても、わたしはあまり知識と経験が無いのでね、そこらは、キャプテン、副キャプテン、墨田さんに任せる」
「お金については、詳しいぞ、専門職だからね」
「わたしのことは、あまり、気にせず」
「和井田は学問あっての、和井田ですから」
「野球については、キャプテン、副キャプテンに任せてあるのでね」
コーチ陣の挨拶
「監督同様、詳しくはないが、少しは出来る程度、マイクロの運転はできるぞ」
「本来マイクロで遠征をいくのであるが、マネージャーさんが沢山来てくれたので」
「遠征は、ツアーバスを使う、ドライバーは和井田のキャプテンが手配してくれるのでね」
墨田さんの挨拶
「ご存じかな?みたことあるかね?たぶん、どこかで見たことあるよね?」
「改めて、日本代表 つまり、WBCの専属医療チームのとりまとめ、いわゆるお医者さんだよ」
「和井田の医療も兼ねている。加えて、U-15の専属医師でもあったし」
「スポーツトレーナーでもある」
「基本治療は任せて欲しい、あと水分補給はこまめにとるからね」
八重から説明
「私がマネージャーのキャプテンというべき存在かな、こちらの香織が、副ね」
「マネージャーの仕事的には、これだけ人数がいると、正直やることがないです」
「給水くらい?ただ、選手の皆さんをサポートしますので、気軽に声をかけてね」
「では、最後にキャプテンから」
嘉位
「あらためて、和井田野球部のキャプテン、山本 嘉位 です、こちらが、副キャプテンの御手洗 由良」
「2つほど、宿題を出していました、その中で、気になったこともあり、今話します」
「僕と由良から出した宿題に対して、選手15名、マネージャー15名の新1年生の中に、白紙が、8名程ありました」
嘉位は、書いてある1枚目を改めて、取り出して
「こういうふうに、書いてくれていれば、これについて、あらためて、個別に僕と由良、それぞれから、回答が・・え?」
一年生選手と、マネージャー達がクスクス笑っている
嘉位
「え?笑うところ」
嘉位は、裏返しにして、見せていた紙を見ると、
嘉位
・・・字が汚い。誰だ、この酷いの、あ、けいだ。
由良も覗き込んで、
嘉位・・・・・・。
尊敬する人の、漢字間違っているし、嘉位 ではなく 山本 海。誰だよ、海って?幕末の人なのか?内容は野球だから、違うな
いとこのけいが、間違うにも、程があるだろうに・・・
由良はそれを除きこんで、噴き出してしまった。
由良は笑いをこらえきれず、笑いながら、嘉位に対して
「うみくん、続けてくれたまえ」
けいのは、おいて、おいて、一番後に回し、つぎの回答用紙を新一年生に見せた
嘉位
「このように書いてもらえると、僕か由良から、なんらかのアドバイスをします」
良い回答であった。
尊敬している人、御母さん。毎日朝早く起きて、お弁当をつくってくれて、吹奏楽部に送り出してくれた。
御母さんに感謝の言葉が書き記されており、子供の事を一緒に考えて、サポートできる、お母さんのようになりたいと。料理も覚え、そして子供の成長に付き添った、やりたいことを習得していく。間違いは誰でも犯すもの、しかし、その過ちの深さを浅くすることは出来る。
その為に、教養と経験をこの学校生活で学んでいきたい。それは結果的に、尊敬するお母さんに近づく1歩であると思います。
嘉位と由良は目で会話。
由良
この子だな
嘉位
記録員
お互い納得。
一年生達、へーーー、凄いな。と。
嘉位
「そこでだ、このように、回答があるものと、白紙の物が8枚。つまり、8名は白紙というわけです」
「あらためて、宿題のテーマを確認しますね」
「尊敬している人は誰ですか?」
「その理由を教えてください」
「尊敬している人にたどり着くために、何をしなくてはならないのか」
「何をしては、いけないのか」
嘉位
「これに対して、間違いも、正解もないのです。けいのは、間違いだが」
「ただ、若干8名の白紙は、頂けない。」
「まったく、尊敬する人が居ないのであれば、その趣旨を書くべき。」
嘉位
「この問題の本質は、目標意識を持つことにあります。」
由良
「尊敬、それは、御父さん、御母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、学校の先生、お兄さん、お姉さん、弟、妹、お友達
どうでしょうか?」
「家庭環境によっては該当しない場合もありえます。その場合、和井田での3年間の学生生活にて、尊敬できる人を見つけてください。」
嘉位は声を大きくし、
嘉位
「すくなくとも、僕と由良は、その存在に値すると自負している!」
嘉位
「もう1度、いつまででも、良いです。僕と由良が卒業するまでの間に、この白紙が埋まる事を願っています。」
由良
「かずきは、1枚目、違った、2枚目の回答をくれたマネージャーさんと、これから、甲子園のビデオを見ながら、記録員の指導をお願いする」
嘉位
「せんさん、これから練習の全体チェックをお願いします」
丁度8時になり、8時に野球ショップ3台到着
監督
「ほら、きたそうだぞ、いったんグラウンドの外に出て、駐車場にいこう」
監督
「すきなものを、選んでよい。全てプレゼントだ。」
新1年生、盛り上がる!!
バット、グローブ等をそれぞれ、自由に選んで
けい、2本、バットを金属と木製を選び、けいが、そうすると、皆2本持つことになった。
一同は野球ショップに御礼を言って、グラウンドに戻った。
その間マネージャー達は、あらためて、ロッカー等の掃除を始める事にした。
しかし、新一年生の喜びもつかの間であった。
グラウンドに戻ると
嘉位と由良の掛け声で、全員でストレッチを徹底
3時間。ずっと、ストレッチ
一年生は、せっかくのグローブが、・・・、バット使えないの?え?なんでと、不満が高まる
午前中はずっと、ストレッチで終わった。
事前にマネージャーが各選手に声をかけており、キッチンカーにメニューを渡して
昼食を1塁側、3塁側ベンチでそれぞれ、昼食をとり
全員の食事が終わって、12時40分。
嘉位と由良の号令で
午後は、軽いランニング、ももあげ、ダッシュ、そして、また、ランニング
一年生は不満が高まる
いつになったら、ボール触れるのか?バットふれるのか?
嘉位と由良
「では、肩をかるく」
軽い、キャッチボールをして、練習終了と由良が言う。
え?終わりなの?新1年不満、不満であった、バットふってないし、
ノックも受けてない!投球も。
連と悟、戸倉以外は、不満、不満であった。けい、こうせい、まもるは、ストレートに不満を口にしていた。
16時になり
嘉位が集合の掛け声で
キャプテンの前に、集合した。そこには選手だけでなく、マネージャー全員、監督、コーチ、トレーナーも集まった。
嘉位はみんなを座らせて
「自由に思うことを述べてください。気軽にね。
それぞれが、手をあげ、少し不満を
なんで、ノックやらないのですか、ボール回しも!!
ストレッチはやってきました!それなのに午前中ストレッチだけ、午後は走りで終わり
色々、不満を挙手して、述べた。
由良、なるほど。でも、気軽に意見が言えるのも、良い事であると、思った。
嘉位
「よくわかりました、気軽に話してくれて、ありがとう」
「それでは、あらためてね」
嘉位は全員座らせて、マネージャーも、座らせ、嘉位と由良だけが立っていた。
嘉位と由良は思った。皆、不満そうな顔している、これが、わかれば、取り組む顔つきが変わるのだが
嘉位
「野球が他の球技と違うところを説明するね、まず、気軽に、各々考えて、自由に発言してみて」
「そう、野球が他の球技とここが、違うと思うところを、自由に良いですよ」
一年生
「人数が多い! 」
嘉位
「サッカーは?何人?でプレーしますか?」
由良は、噴き出してしまった。・・・和井田だよね、ここ、和井田だよね?と。
一年生
「プロがある!」
嘉位
「プロスポーツは一杯あるよね」
一年生
「メジャーがある!」
嘉位
「海外で活躍という意味であれば、それは先ほどと同じだよね?」
一年生
「ボールをとる!!」
嘉位
「それは、ハンドボールも、バスケットも、とるよね?」
一年生
「足でボールを蹴らない!!」
嘉位
「うーん、野球のボールは蹴らないけれど、結果的にエラーがらみで、つま先にあたる、等はありうるよね」
一年生
「ボールを投げる。」
嘉位
「それは、バスケット、ハンドボールも同じ」
一年生
「ネットがある!」
嘉位
「バレーボールも、サッカーも、ゴールネットがあるでしょう、違うかな?さ、どんどん、どーぞ」
一年生
「ファールゾーンがある」
嘉位
「それは先ほどと同じ、ゾーンという意味では、バレーボールも、サッカーも、ハンドボールもね」
一年生
「道具で打つ!」
嘉位
「道具は、テニス、ゴルフもね」
一年生
「走る!」
嘉位
「どのスポーツも、基本的には、走るのでは?短い距離であっても」
一年生
「試合が長い!」
嘉位
「試合は長いのは、テニス、バトミントン、サッカー、バレー、ゴルフも同じ。かな?」
一年生
「表と裏がある」
嘉位
「うん、確かに、それもそうだが、サッカーの前半後半、ハンドボールも、そう考えると、そこもね。」
嘉位
「決定的に違う!事がある。もう1度考えてみて」
「これを、知って練習に取り組むか、しらないで、取り組むかで、上達度が各段に違う」
一年生
「キーパーがいない」
嘉位
「防ぐという意味では捕手だよね。」
一年生
「あ!グローブがある!これだ!!」
嘉位
「確かに捕球のためのグローブはあるね、グローブという観点でいえば、ボクシング等もね」
一同わからない。
沈黙が続く、無言になる。
監督、コーチも、実はわかっていない。無言のまま、考えるが、出てこない、監督、コーチは思っていた。嘉位、俺たちにふるなよ、答えられないから。と、・・・。頼むぞ。くれぐれも、こっちに目を向けるな。と、不自然に視線をそらし、体の向きを変えていた、
さらに、沈黙が、続き、考えているみたいであるが、出てこない。
由良が目で、嘉位に、これ以上はでないから、回答をと
嘉位は、由良に目で、わかったと合図し
「では、回答を言うね」
「この回答は、これから、毎日頭に入れて、練習に取り組んで欲しい」
「これから話す事を、あえて、質問して、回答してもらう?」
「野球は、どうして、得点が入る?」
けい
「ホームランを打てば!得点!」
嘉位
「言いたいことはわかるが、正解ではないね」
「では、どうやって、得点を防ぐ?」
こうせい
「アウトを取る!!」
「間違いではないが、ファーストをアウトにしても、スクイズでホームに帰れば?どうかな?」
こうせい
「あああ、そうですね、かいさん」
嘉位
「さあ、もう1度考えてみよう」
「野球が他の球技と決定的に違うところ」
皆、頭を振り絞りながら、考える
得点をとる、取られる、取られない・・・
うーーん、
嘉位、これは、丁度良い、スタートの日にはもってこいだ。
「では一同、目を閉じよう。覚えて欲しいので、目を閉じて、リラックスして、頭をからにしてみて」
なぜか、監督、コーチも、目を閉じ、マネージャー達も目を閉じていた。
目が開いているのは、嘉位、由良、連の3名だけであった。
嘉位は、見渡して
「では、言うね、ゆっくり言うから、心に刻んで欲しい」
「野球が、他の球技と決定的に違うのは」
嘉位は、声を、大きく、大きくして、大きな声で、ゆっくりと!!!
「野球は、 人が、得点 を とる 」
少し間を取り
「つまり、ホームランを打とうが、人が、各ベースをまわって、ホームに入らないと、得点にはならない」
「言い換えれば、得点を取らせないためには?守備を固めるしかない」
「得点を取るには、打つ、そして、何よりも、走る」
少し間をとり
「覚えてください。野球は、人で得点」
「それに必要なのは、得点を得る、あるいは、与えない」
「そのために、必要な事を伝えるね」
嘉位は、あらためて、声を大きくし!!
「野球は、走、攻、守 であり、走攻守、人が、得点を左右する」
「他の球技と違い、得点は、人!である、ボールで得点をとるのでは無い!!!
「これが野球の醍醐味であり」
「走攻守が、いかに、重要であるか、常に胸に秘めて、練習に取り組めば」
「君たちは、各段に上達する」
「以上!」
監督、コーチを、はじめ、新一年生、マネージャー全員が唖然とし
「言われてみれば、その通りなのである、何故、その当たり前の事に、気が付かなかったのだろうか」
「攻守走では、なく、走攻守 走が1番先なのである」
新一年生も、先ほどまでの、不満は、一気に解消され、何故、走っていたのか、
嘉位の言葉に、震えていた。言われてみれば、当たり前の事なのに
考え方1つで、取り組み方が違うことに、気が付いたからである。
一年生の目つきは、あきらかに、変わっており、走攻守、走攻守と言い聞かせていた。
由良
「走攻守!明日もやるから!」
一年生は立ち上がり、大きな声で、返事をした
「はい!」
一年生の態度はあきらかに、変わって行った。
由良
「今、16時30分、それでは、和井田の野球部のジャージに着替えて」
「今日はこれから、思う存分!!焼肉をたべるぞーー」
「今日は!全員で、外で焼肉だーーー!!」
一年生は大喜び、マネージャー達も大喜びで!
監督達も知らされていない。電車で来ることとは聞いていたが、驚いた!
由良と八重が先導で、一同は焼肉屋に到着
お店に入るなり、
店員さん
「お待ちしておりました御手洗社長様」
新一年生は一斉に、驚く!!!え?社長様?
2階を貸し切ってあると伝えられ
既に席や料理は準備されており、飲み物も注がれていた。
店員さんが、ビールを監督達の席のグラスに注いで
小声で
嘉位は、八重に任せると
ここってキャプテンじゃないの?いや、ここはあるいみ、由良と八重の主力店だから、頼まれて
八重は立ち上がり
「それでは、和井田新生野球部に、かんぱーい」
かんぱーーーーい!!
< つづく >




