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第一八話:デート後のすれ違い

(もやもや、する、イライラ、する)


山本嘉位やまもと かいとの初めてのデートは、蓬田香織よもぎだ かおりにとって夢のような時間だった。新しい自分を発見し、彼の優しさや魅力に触れ、彼への気持ちがかけがえのないものへと変わり始めた。別れ際に交わした「また、すぐに会いたいな」という言葉は、香織の心に温かい光を灯した。


しかし、週が明け、月曜日を迎えると、デートの余韻はどこかへ吹き飛んでしまったかのようだった。学校で「かい」に会えると思っていたのに、なぜか彼の姿が見当たらない。教室でも、廊下でも、食堂でも、彼を見つけることができない。


不安が募る。もしかして、デートは彼にとって、ただの気まぐれだったのだろうか。自分は浮かれていただけなのではないか。様々なネガティブな考えが、香織の頭の中を駆け巡る。


八重やえに「山本嘉位とどうなったの?」と聞かれても、香織は曖昧に答えることしかできなかった。「うーん…特に何も…」デートが楽しかったことや、彼から「またすぐに会いたい」と言われたことなど、恥ずかしくて話せない。それに、今日の彼の様子を見ていると、話す気にもなれなかった。


一方、「かい」もまた、何かに悩んでいる様子だった。月曜日の朝、彼は普段より遅れて登校してきた。その顔には、いつもの明るい笑顔はなく、どこか考え込んでいるような、浮かない表情をしていた。


香織の教室の近くを通る時も、「かい」は香織に気づかないふりをしているかのようだった。目が合いそうになっても、すぐに視線を逸らしてしまう。挨拶をしようか迷っているうちに、彼は足早に通り過ぎてしまう。


(どうして…?)


香織は混乱していた。デートの時はあんなに優しく、親密だったのに。学校では、まるで香織のことを避けているかのように見える。もしかして、デートの後で、やっぱり自分とは違うと思ったのだろうか。地味な自分と付き合うのは、彼の世界では許されないことだったのだろうか。


香織の心は、もやもやとした感情でいっぱいになった。期待していただけに、彼の冷たい態度(に見えたもの)が、香織の心を深く傷つけた。イライラする。彼に対して、そして、どうすることもできない自分自身に対して。


「かい」もまた、イライラしていた。彼は、デートの後、香織への気持ちが抑えきれなくなっていた。もっと彼女と一緒にいたい、彼女のことをもっと知りたい。そう強く思うようになっていた。しかし、同時に、彼自身の立場や、家族のこと、特に妹のかえでの存在が、彼の心を縛り付けていた。


楓は、デートから帰ってきた「かい」の様子を見て、何かを察したようだった。いつものように「お兄様、どこに行ってたんですか?」と甘えてきたかと思えば、香織の話になると、突然冷たい目をしたり、意味深な言葉を呟いたりした。


「お兄様が、あんな地味な子に夢中になるなんて…ふふ、面白いわね」


その言葉の裏に隠された棘に、「かい」は気づいていた。楓は、自分の兄を他の誰かに取られることを、決して許さないだろう。特に、自分のような平凡な女の子には。


「かい」は、香織を守りたいと思った。彼女を、自分の世界の複雑さや、楓の干渉から遠ざけたい。しかし、どうすればいいのか分からない。彼女への気持ちを隠すべきなのか、それとも、すべてを打ち明けて、一緒に乗り越えていくべきなのか。


悩めば悩むほど、「かい」の心は混乱し、イライラが募る。香織に会いたいのに、会えば彼女を危険に晒してしまうかもしれないという恐れが、彼を躊躇させた。結果として、彼は香織を避けるような態度を取ってしまった。


月曜日から金曜日まで、二人はお互いを意識しながらも、どこかすれ違っていた。香織は「かい」の態度に傷つき、イライラし、そして彼を避けた。

「かい」は香織を気遣いたいのに、どうすれば彼女を守れるのか分からず、結果として彼女を遠ざけてしまった。


二人の間には、目に見えない壁ができてしまったかのようだった。デートでせっかく縮まった距離は、再び遠ざかっていくように見えた。香織の心には、もやもやとした不安と、彼に対する複雑な感情が渦巻いていた。


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