第一六一話 避難経路では、回避できない、一筋頬を伝わる雫
下駄箱で、騒いでいると・・・思いっきり目立っているのは、間違いがなく
そして、せんさん、直立不動のままであった
そこに、丁度探していたように、監督がきて
「ほら、おまえら、騒ぎすぎだ、まー、別に良いのだけれどな、俺は教員じゃないから」
「キャプテン、ちょっと頼まれてくれないか?」
「今日の午後、部室でよいのだが、ま、場所はどこでもよいのだが」
「あ、そうそう、大事な事を言い忘れていた」
「先にそれを言わなければ、話が合わなくなる」
佐伯は、まったく意味がわからず
「なんのことでしょうか?」
監督
「グラウンド引き渡し、グラウンド開きだ、月末に決まった。土曜日になる」
桜井
「!!えええ、そうだ、2月末って、あのヘルメット被っていたおじさん、言っていたものね」
八重は、笑いながら
「・・・おじさんって」
香織
「取締役さんだったよ、確か?!」
桜井、真顔いなり
「え!偉い人だったの、あのおじさん!ヘルメット被っているから、わからないよ」
楓
「・・・ヘルメットは、現場着用、あたりまえでしょうに」
監督
「そこでだ、月末の土曜日に野球部は、グラウンドに来てもらう事になる。」
「それと、これは元々の着工許可を得る条件の1つに」
「学校、学校関係者の避難場所、及び、地域住民の避難場所として登録されている」
「そこでだ、キャプテン、月末までに、避難マニュアル等を作ってもらえないか?」
「いまの、君たちをどこから、どうみても、暇だろう?」
せんさん
「いえ、遊んでいないですよ、きちんと分析、解析、トレーニングに励んでいます」
監督
「そう、男子はわかる。うん。それは俺から見てもわかる、女子だ、女子!」
佐伯・・・
「あ、確かに、私らマネージャー規則と、寮、新入部員案内以外・・・何もしていません」
監督
「だろう?テストも終わった事だし、頼まれてくれないかな?」
由良
「もちろんです、監督、完成図書、等はありますか?」
監督
「引渡し前だから、ファイリングのものは無いが、データでは受け取っているから、それをメンバーに展開しておくよ」
「しかし、副キャプテンも、完成図書なんて言葉がでてくるのも、凄いな」
佐伯・・・?!感染、徒所・・・なんだろう、え、もうテレワークはやだよ
「なんですか?かんせんとしょう って?」
桜井
「違うよ、かんせいとしょうーぅ!そう、 歓声 と ショウ!」
「ほら、応援!チアとか、ブラスバンドとか、なんというか、光と音のマジック!」
「ひらひらの、スカート、チアがも、絶好調!」
「そこに、スポットライトをあびて、」
「それにあわせた、ブラスバンド、」
「ライトスポットが、あたりを照らして」
「もう、観客はくぎ付け!」
「そう、私の魔法みたいに、あ、いえなんでも」
楓、駄目だ、ゲーム脳
「・・・」
監督?!ある意味、意味がわからず
「何の話だったか?」
せんさん
「あ、お気になさらず、わかりました。野球部でやります」
「野球部は放課後、部室集合ね」
監督
「頼むわ!」
それぞれ、の教室へ向かった
香織は、ふと疑問に思っていた、嘉位はなんで答えなかったのだろうと、後で聞いてみよう。
ホームルームが終わり、1時間目の授業も終わって
休み時間!
八重と香織の席に、なんと、
由良と嘉位、佐伯、桜井、楓、かずきが来たのであった。
まわりの生徒も、うわ、スター軍団が揃うと、圧巻だ。
こうも、容姿端麗、美男美女が一同にそろうと、もう、言葉がでないよね
いいな、私もあんな風に、かっこいい人捕まえたいなー、
いや、学園いないでしょう。男子、まじめすぎるし。
そうだよねー、羨ましい。
等、教室はざわざわと、していた。
楓
「監督に言われた、避難マニュアルについてね」
八重は、うれしくなって、由良に抱き着こうとしたが、
あ、ここは教室であった。我慢、我慢と隣に寄り添った。
香織も、うれしくなって、嘉位の手を握った。
抱き着こうとしたが、我慢、教室、教室、手をつなぐだけでも幸せ。
まわりの生徒も、うわー、いいなー、恋しちゃっている。
うらやましい!来る学校間違えたかな?
と、野球部の動作、1つ1つに反応を示していた。
かずき
「マニュアルを作るのは、せんさん、僕、キャプテン、副キャプテンですぐに出来る、楓さんもね」
桜井・・・すでに、計算、勘定の土台からはずされている
佐伯
「そ、そうですわね、流石に、どこのどなたかが、魔法を使ってとか、スキルでうんぬんなんて」
桜井は顔が真っ赤になり
「それ、いっちゃ駄目!!!駄目!!」
香織は笑いながら
八重は意味がわからず
香織
「それで、野球部新2年、せいぞろいで、来てくれて嬉しい!何か、ありましたか?」
由良
「あ、まだ、データ見ていない?感じ?」
佐伯
「わたしも、観ていないけど、キャプテンが要約してくれたよ」
「魔法は使えないけれどね」
桜井
「うん、わたしは見てもわからないから、キャプテンが要約してくれて、わかった」
「だから、魔法とかは、違うの、内緒!内緒」
楓が、まとめて
「読んだところ、目的を達成するには、現地に先に行って目視、確認が必要」
「ですので、放課後部室に集まったら、そのまま、グラウンドにいきますわよ」
八重!?!・・・、まだ、読んでいないけど、由良がわかれば、大丈夫か。私も読んでも、たぶん、わらかないし
香織
「なるほど!私もまだ、読んでいませんが、楓ちゃんが言うなら、必要な事ですから、みんなで行きましょう」
嘉位
「2つほど、お願いがあるが、それは、グラウンドついてから、話すから、放課後、部室集合で、全員でグラウンドへ」
一同、おおお!!!!!
他の生徒たちは、野球部ってなんか、楽しそうね。
うらやましいなー
ああいうのが、青春っていうの?
高校生活!あ、もう、どこかに、キュンキュンするような男子いないのかしら
そうだよねー。
辺りを見回すが、教科書や、タブレットで勉強している、男子ばかりであった。
・・・。
昼休みになり、
食堂に、あつまり
今日は、なんと、せんさん と 瞳さんが食堂にきていて
瞳
「こんにちは、御一緒してよいかしら?」
楓
「もちろんですわ」
香織
「めずらしいですね、寮で食事ではなく」
瞳
「はい、せんが、たまには、こっちでと」
八重
「どうぞ、せんさん、瞳さん」
食事をしながら、
せんさん
「見ました?データ、あの内容からすると」
嘉位
「はい、今日放課後部室に集まりましたら、全員で、グラウンドに行きましょう」
せんさん
「流石キャプテン!いや、それが言いたくて、食堂に来たのだけれどね」
瞳・・・ちょっと、ムっとして
「いいな、私は、吹奏楽部いかないと、いけないから、・・・。見に行けない、あ!」
「そうだ、吹奏楽部を代表として、視察という形で、よし、部長に頼んでみる」
楓・・・、そのような事出来るのでしょうか?
嘉位、・・・自由すぎる・・・。
由良、ま、良いだろう、減るものじゃないし
「瞳さん、許可がおりたら、野球部の部室に一回集合で、それから行きましょう」
瞳はニコニコして
「やったー!わたし、観たことないのよね」
せんさん、あ、そうだ。
「確かに、そうだよね、野球部と新一年生しか見たことがないから」
「あ、丁度よいです。初めて見た人が正しく、避難できるかも、確認になるし」
桜井
「せんさん、その通りですわ」
佐伯
「いいなー、グラウンドでデート・・・」
香織
「いえ、デートではなくて、避難経路のマニュアル作りですからね」
瞳!あ、そうか、デートか、どこか期待してしまた。
食事を終え、午後の授業も終えて、一同は野球部の部室へ
監督が居て
「お、来たな、キャプテンこれが認証カードと、鍵一式」
「既に全て終わっていて、行政への手続きだけだから、壊すなよな」
八重
「あ、わたし?わたし?ですか、大丈夫です。はい!」
一同荷物を置いて、学校を後に、グラウンドへ向かった。
瞳は、せんと手を繋いで
「へー、こっちの道って通った事が無かった」
せんさん
「うん、駅と逆だし、そもそも僕ら寮生は外に出ないからね」
瞳とせん、は、一緒に歩き、先頭を進んでいった
瞳が!!!え?すごい、これ、せんの動画でみた試合のところより、遥かに違う
「え!ええええ??」
せんさん
「そうなるよね、って、わ!すごい、ネット貼ってあると、うわ、これは凄いな」
後から、佐伯、桜井が来て
「前と変わっている!!すごーい」
由良と八重、楓、嘉位、香織、かずきも到着し
かずき
「ネットだ!これは新一年生を案内した時にも、なかった、すごいな」
「本当に練習場じゃなく、ネットあるだけで、スタジアムに見える!」
由良
「このネット、風速を自動探知して、上げ下げ可能、さらにアプリでリモートでも上げ下げが出きる」
「つまり遠隔で上げ下げが出来る仕様になっている」
かずき
「うん、見た、そのページ、凄いな。さらにカメラもアプリで見られるのだね」
楓
「あ!宿泊施設も入れるようになっているし、入り口の警備室も入れるわ」
嘉位
「宿泊施設というより、警備係の人が3交代、3,4名常駐するからね、その方たちの宿になる」
楓
「それに、キッチンカーも来てくれるのね。」
瞳
「ここで、試合するの?凄い、ブラスバンドもここで練習できるのかしら?」
せんさん
「それは、難しいと思う。音を出すのは、周りに迷惑がかかるので」
瞳
「あ、それも、そうだわ、流石はわたしの、せん」
桜井・・・いいなー、羨ましい
嘉位
「瞳さんから見て、この駐車スペースも避難場所としてつかえそうかな?」
瞳
「はい、十分です、キャプテン」
嘉位
「それでは、中に入ろう、今日は5つの扉からそれぞれ、確認してほしい」
「正面をせんさん、瞳さん」
「一塁側を、かずき、楓」
「三塁側を、桜井、佐伯」
「ライト側は、副キャプテンと八重さん」
「レフト側が、僕と香織」
「タブレットをもって、ドキュメントを共有し、各自で思うところを、書き込んでほしい」
「鍵を渡すね」
「自由に探検してかまわないけど、怪我が無いように気をつけてね」
桜井は、そっと手をあげて
「キャプテン、ヘルメットは?」
嘉位
「既に完成しているので、ヘルメットは要りません。ただ、避難シミュレートとして使うのであれば」
「各扉を開けたところに、あるので、任せます」
桜井
「了解キャプテン、ではいってきまーーーす」
それぞれが1時間程、侵入経路や、注意点をまとめて、共有ドキュメントに書き込んでいる
そこは和井田の学生である、きちんとまとまっている。
嘉位はドキュメントに、終わった順に、グラウンドへと書き込みをした
瞳!!なにこれーーー!
「す、すごーーーーーい!ここが甲子園?」
せんさん・・・笑いながら
「そんなわけないでしょうに、ここは和井田専用の野球練習グラウンドですよ」
かずき
「いや、ネットがあると、ないとでは、全然スケールが違う」
八重
「すごい、すごい、由良、キャプテン投げてみてよ!!」
由良は笑いながら
「そういうわけには、いかないのだよ」
八重
「え、いいじゃん、1球くらい」
桜井も佐伯も、見たい!見たい!と
嘉位
「ま、それは、グラウンドを正式に引き渡されて、グラウンド開きをしてからかな?」
楓、これは本当にすごいな、ネットあれ、多段階になっているし
「楽しみだわ、連がここで投げるの!」
嘉位
「そうだね、連が投げてくれても、良いかな?月末連をこっちに来てもらっても、どうだろうか?」
楓
「え!お兄様、本当に良いのですか?」
嘉位
「うん、むしろ、こちらから、お願いしたいくらいだよ」
楓は、不思議だった?どこか、引っかかる所がある、お願い?
どういうことなのだろう?
一同は盛り上がって、試合風景を想像していた。
胸の高まりが、収まらない
野球を知らない、瞳でさえ、興奮していた。
瞳
「野球部ってすごい!!甲子園はもっとすごいの?」
せん
「うーん、見たことはあっても、行った事がないからな、あ?キャプテンと、副キャプテンはありますよね?」
由良
「うん、ありますね。優勝してきました。」
香織は、あれ?なんとなくだけれど、嘉位の様子がすこし、変に思えた、この流れなら、嘉位も説明をするような?
佐伯、桜井
「えええええー、じゃー甲子園もう優勝経験者なの?」
由良
「ま、そういう事になるけれど、それは中学のクラブチームの話だから」
「高校生としては、まだだけど、甲子園は確定事項だからね」
「甲子園は、風がやはり強いかな、あと、観客席も夏は暑く、春は寒く・・・」
「ただ、盛り上がるのは間違いない、あれだけの人数が入って、両校の応援があって」
桜井
「わーー!わくわくする、悟君と」
佐伯
「そうだね、戸倉君と」
かずき
「・・・マネージャーは、おそらく、だけれど、ベンチじゃなく、応援席ですよ」
香織
「ええええーーそうなのですか?」
八重
「ほら、テレビ中継とかで、女子高生、いるじゃない!」
せんさん
「確かに、居ますね、あくまでも記録員として、あと人数が足りない場合は、規則的に入れなくはないですが」
「考えてもみてください、どこの高校野球部に選手より、マネージャーが多いところがありますか?」
八重、あは、
「たしかに、それもそうですね」
せんさん
「記録員は僕になるので、女子マネージャーは応援席かな、それについては、日曜日、キャプテンのお屋敷で、話し合う形だと思う」
かずき
「そうなのか、では、僕も応援席ですね」
由良
「とりあえず、今日はドキュメントに集めたので、明日の放課後、まとめましょうか?」
「では、もどろうか?」
嘉位は、ゆっくりと手をあげて、グラウンド一面を右から左へと見渡し、一呼吸を終えてから
「2つほど良いかな?」
一同は、嘉位に注目して、静まり返る
「1つ目は、香織、あの祝い酒を3本、野球部に事前に届けておいてほしい」
八重、は、ほっとして、そんな、緊張感漂って話す事じゃないのに、キャプテン
八重
「あれは、お父さん、凄くおいしい!って、言っていたよ」
由良
「あ、確かに今まで飲んだことないぞ、こんなうまいお酒と!」
香織
「はい」
嘉位、微笑みながら
「グラウンド開きの日は、理事上をはじめ監督はもちろん、来ます」
「野球部は、全員和井田の野球部のジャージで」
「防寒具は要らないかもしれないが、その日の風と気温で判断」
「統一はしたいので、そこは由良に任せる」
「次に、お酒だが、監督から、順にベース周りにお酒を、」
「次に、由良、最後に八重さん」
香織・・え?嘉位じゃなく、八重はわかる、マネージャーキャプテンだし。え?
「残ったお酒は、監督にあげて、飲んでもらって」
嘉位は、もう一度、グラウンド全体を見渡して、遠くをみつめながら
「最後2つ目」
なぜか、シーンとなり、嘉位に注目していた。
その嘉位の声のトーンが、ひくく、ゆっくりであったからだ
「僕と、香織はグラウンド開きには出られない」
一同、ええええええええええーーー!!!
香織も、え?なぜ、いや私が駄目というのは、あっても、嘉位が出られない?どうして?
嘉位
「こうなることも、可能性はあるかもしれないと、思っていた」
一同は理解ができずに、再度
嘉位に注目を
嘉位
「丁度その日、山本財閥の総会があり、その日をもって、僕は正式に山本財閥の副社長に就任し、筆頭株主になる」
「ご存じの通り、香織は僕の妻になる。その場で紹介することになる」
「そのため、グラウンド開きには、出る事が出来ない」
香織、
え!
なんで、
よりにもよって
同じ日なの
あれだけ、資料や現場と連絡をとって、確認作業をずっとしていたし、
だれよりも、
このグラウンドの指示、安全を徹底させて
なにより、
嘉位自身がグラウンドを開きたかったはずなのに、
それが、財閥と同じ日、
残酷すぎる。
香織は、その場に膝づいて、大きな声で泣き出した
「なんで、同じ日なのーーー!」
「どれだけ、嘉位がこのグラウンドに時間をかけて、毎晩、毎晩」
「残酷すぎる!」
香織はさらに、大きな声で、泣き出した
それを見ていた
瞳、八重、桜井、佐伯も、涙がこぼれて来た
楓は、それで、なのですね、朝駅でチョコレートの話をしているときは、楽しそうだったのに
監督と話してから、答えていなかったですものね。
香織がいうように、
いつか、お兄様は、
財閥か、野球かの選択を迫られる日が来るのは、わかっていたはず
それが、まさか、こんなにも早く・・・
それも、自分が手掛けたグラウンドでありながら
楓も、泣いてしまった。
楓も声を出して、泣いた。
嘉位は、遠くを見つめる事を続けて
「そこで、連と由良で始球式をお願いしたい。」
由良、嘉位だって、1番目に投げたかっただろうに、つらいな、御曹司。
楓、それで、さっき、こちらから、お願いしたいと
楓は、声に出して、泣いた。泣いた。泣いた。
嘉位は、視線をさげて、みんなを見ると
嘉位の目から、
一筋の涙がこぼれた。
嘉位が人前で泣いたのは、初めてである。
一同はそれをみて、
さらに、泣いた、
泣いた
泣いた声が、
泣き声が
グラウンド中をかけめぐる。
せんさん、かずきも、泣いていた。
あの嘉位が、涙をこぼしたのだから
楓、お兄様泣いている
香織さんと別々に海外に行かされても、決して、泣く事はなかった。それは信じ切れていたから
しかし、今回に至っては、
どちらかの、選択をしなくてはならない
由良は、嘉位が泣いたのを初めてみた
香織、はじめて、見た、完璧な王子様が、初めて、泣いたのである
香織は、さらに、声を大にして泣いて
「残酷だ、残酷だ」
と大泣きした。
由良以外、全員が大泣きしていた。
嘉位は、深く、深呼吸をし、うん、問題ないと由良に視線を送った
由良!わかった。
「よーーし、野球部、いくぞーーーー」
一同は、泣きながら
「甲子園!!!!!」
と叫んだのであった
< つづく >