第一一九話 新学期
香織は嘉位の腕に抱きつきながら、旅行!旅行!と嬉しくて、嬉しくて溜まらなかった。
嘉位は、思い出させないように、昨年夏、海の見えるホテルと・・・約束が果たせなかった事もあり、もっともその夏に決める計画があったのであったが
既に計画よりは遅れたものの、大人になっていた。嘉位本人も旅行はとても楽しみであった。
香織は、京都に中学校の修学旅行で行った事がある。嘉位は京都には行ったことはある。しかし、観光をしたことが無かった。
嘉位もとても楽しみであった。日本の文化に触れる事がどれほど素晴らしい事なのか
普通に考えて日本で生活をしているのであれば、日常的に日本家屋であり、日本固有の建築物等は、修学旅行等で行っているのであるが
嘉位の場合は、日本に戻ってきたのは中学校一年。それも帰国子女を受け入れる学校、修学旅行は二年と三年にあることはあったのだが、
全国大会と、国際大会と重なり、修学旅行には行けなかった。
中学校を卒業してから、旅行と思っていたが、楓のロケの付き添いがあり、あちらこちらと行くものの、やはり観光ということは出来ていなかった。
二人は部屋の前について、
香織
「いろいろ、計画を立てましょう、嘉位は京都には行かれたことがあるのですか?」
嘉位
「行ったことはあるといえば、あるのだけれど、楓のロケの付き添いで、観光はしたことが無いかな?」
香織
「そうなのですね、楓ちゃんとロケ周りみたいな感じ?」
嘉位
「そうだったな。高校受験を終えてから、楓のロケに付き添う日々が続いたよね」
香織
「なるほど、だから楓ちゃん、寂しくなったのですね、嘉位くらいかっこよければ、わかります。私が楓ちゃんでしたら、誰にも渡さないですものね」
嘉位は、話がややこしくなりそうであったので、部屋に入ることにした
香織
「え!」
香織は、部屋が大きく変わっている事に驚いた。それは嘉位も同じであった。
香織
「わたしの部屋のものが、きちんと置いてある、嘉位良いの?こんなにも私のものだらけになって?」
嘉位は少し、いじわるをしてみた
「うーん。部屋を分けるということも、できなくはないけれど?」
香織はいっきに、むっとして
「い・や・で・す・、いいですか、嘉位君、我慢するのです。わかりましたね、わかった人ー、手あげて」
香織は嘉位の腕を持ち上げて
「はい、嘉位君はとても、とても、良い子ですね」
嘉位は、香織の挙動がおかしくて、噴き出してしまった。あからさまに、香織が変化し、それも良い方向に。嬉しかったのである
「お!ゲーミングPC二台。間に合った!さらに野球道具も一式!」
香織
「本当ですね、このパソコンは私が使ってよいのですか?」
嘉位
「もちろんだよ、二台とも同じ性能だから、どっちを使っても構わないし、一台を香織専用にしても、構わないよ」
香織はひらめいたように、
「あのー、ですね、油性マジックありますか?」
嘉位
「うん、これでよければ、色はここにあるだけになるよ」
香織
「十分です。それでですね、ここに、嘉位のサインをください!かいてください!」
嘉位
「え?ここに!」
香織
「ほら、画面開いて、キーボードとかの周りですと、両手で、隠れちゃうじゃないですか、ですので、カバーのところに、愛しているよ、香織と」
嘉位
「そ、それってサインじゃないよね(笑)」
香織も、自分の言っている事を思いながら、確かに、それは、そうだ。
「では、大きく、嘉位のサインを書いてください。あれが良いな、嘉位のサイン」
「ほら、野球でサインしている、あの嘉位のサイン?シグネチャーみたいな、サインのことです」
嘉位
「あ、球道君に書いたサインの事」
香織
「そう、それです、わたしは嘉位のサインをもらったことが無いのです」
嘉位
「あ、僕のサインでよければ」
香織はぐっと顔を前にだして、嘉位の顔に近づいて
「嘉位のサインが欲しいのです!!!」
嘉位
「あ、うん。」
嘉位はすらすらとサインを書いて、さらに、Iが4つと、スマートフォンみたいなマークも付けた」
香織
「ありがとう!やったー!世界一から特別のサインをもらった!」
香織はとてもうれしそうであった。
香織
「ところで、キーホルダーの事もそうなのですが、このIが4つとスマートフォンのマーク、は何を意味しているのですか?」
嘉位は、恥ずかしいな、べた、すぎだから・・・。ま、良いかと思い答えた
「宿泊学習の時に渡したキーホルダーの事だよね?」
「あの時思いが伝えた、伝わったつもりでいたが、違うのかな?」
香織は、頭にはてなマークがいくつもできた。どういうことなのだろう、キーホルダーはとても大事な思いでで、いまも大切にしている。
香織
「はい、伝える?あのGPS機能やメッセージ機能のことでしょうか?」
嘉位、あ、伝わっていなかったのか・・・。あ、そうなのか、そうだったのか、ここまで来るのに右往左往したことが理解した。1番早く思いを伝えたつもりでいたが、伝わっていなかったのだな
ノートパソコンのサインに指をして、順番に、声に出してみた
「棒が、4つあるよね、3つでもなければ2つでもなく、5つでもなく、棒が4つ。そこにスマートフォンのロゴ」
「あまり、笑わないでね、いくよ」
「4つ。ね」
「 I I I I マーク」
「 あいしTEL つまり、 あい し てる」
「これを一番早く、宿泊学習で伝えたつもりだったのだけど」
香織は、はっとし!そういう事だったのだ。このマーク、愛の告白。好きというだけでなく、愛していますというメッセージだったことに、香織は宿泊学習を思い出して、涙ぐんでしまった。嘉位は既にあの時点で私の事を単に女子を好きではなく、わたしを愛していると。伝えたかった。事に。気が付かない私が、・・・香織は、思いっきり嘉位にだきついた。
「ありがとう、わからなかった、でも、ありがとう」
嘉位は優しく、香織の髪をなでて、泣き止むようにそっと、髪をなで続けていた
香織も落ち着きを取り戻した。ふとその視線に野球道具が目に入った。
香織
「あれは、開けないのですか?」
嘉位は既に、段ボールからは出ていたが、それぞれの道具が袋に入っていたので、香織に渡した
「あ、開けて、つけてみて良いよ」
香織は袋を開けて、さらにビニールがあり、それもあけてみた、嘉位の顔をみつめて、つけて良いのか、確認するように
嘉位は、やさしくうなずいた。
香織は、グローブに手を入れてみた。硬い、硬い、それもずしっと重い。
嘉位
「固いでしょう、それに重く感じたかな?」
香織
「はい、ずっしりと」
嘉位
「型はついているけど、使いこなさないと、ま、使う事を前提で革をならしていくという、ほうがわかりやすいかな?」
「使っているうちに、どんどん自分用の形になっていくのだ」
香織は、すごい、すごい、このグローブが嘉位と一緒になるのだ。香織はグローブをはめたまま、ボールを投げるそぶりをみせた
香織はそのまま、ストライク、三振、バッターアウト!等、一人で演じていた
嘉位は、それがたまらなく可愛く思えて、にやにやしていた。
香織は、嬉しかった。そして一回、落ち着いて
「パソコン、セットアップしましょうか、良いですか?」
嘉位
「うん、ではこっちの一台は僕が使うね」
二人は初期設定を済ませて、香織はなぜか、嘉位が操作しているパソコンに目をむけ、嘉位の上に座った。
嘉位
「まず、これを調べてみよう。お揃いの物を買おうか?」
嘉位は、サイトを開いて、見せた。
香織、これは高い。でも暖かそうだし、すごい、こういうものをサラッと出すところも、わたしも慣れていかなくてはと思った。
香織
「これであれば、お揃いですね。男性用も、女性用もあります」
嘉位
「よし、これにしよう、このまま買えるけど、明日試着してからにしよう、在庫もあるみたいだしね」
香織、それは在庫あるでしょうね、1枚100万円近くするダウンジャケットなんて、見たことが無いですからね、こういう事にもなれていかなくては、わたしだけの王子様の為にも。
嘉位
「せっかくだから、明日は財布と定期入れとか等もお揃いにしようね」
香織、嬉しい!今度は私の番だ、京都の観光を検索して
「どうでしょう、ここと、ここへとか、これとかも?」
嘉位
「うん、いいね!全部いこう!」
香織は、照れ笑いをしていた。少し褒められた気分であった
嘉位
「そろそろ、寝ようか、明日からリモートといえど、学校だから朝6時には起きるように生活スタイルを戻さないとね」
香織
「そうですね、では、寝ましょうね。」
香織は、嘉位の腕を引っ張って、ベッドに横になった。嘉位を見つめて、ゆっくり瞳を閉じた。
受け入れるサインであった。
その夜は、優しく、大人の世界を満喫し、二人は深い眠りについた。
朝、スマートフォンの目覚ましアラームがなり、寝ぼけていたが、起きる事にした。
嘉位
「おはよう、香織」
香織
「おはようございます、ちょうど6時ですね」
「着替えて、朝食にしましょう」
嘉位は、普段の生活ということをこころがけて、我慢、我慢、おさまれーと、自分に言い聞かせて、から着替えをした
二人は、部屋を、あとにし食事を終えた。
食事を済ませて、部屋に戻ると
嘉位が、気が付いたように。
「あ、リモートでホームルームだと、お互いの声、入ってしまうのでは?」
香織も、あ、そうだ、どうすれば良いのだろう。
嘉位
「僕が別の部屋で受けるよ」
香織は、それは、嫌だった、素直に
「いやです!」
香織は
「うまく、マイクのオン・オフをすれば大丈夫です。ですので、マイクを入れっぱなしは、ダメですよ」
嘉位
「うん、そうだね、それでいこう」
オンラインが始まり、静かに時間が過ぎて行った。ほぼホームルームと説明で終わってしまい、まだ10時前であった。
明日もこのようになるらしい。
まだ時間がある。
香織は、嘉位に聞いてみた
「まだ、お時間ありますし、八重に連絡してよいですか?」
嘉位
「うん、もちろんだよ、僕も由良と話すかな、香織、車でいく、電車でいく?」
香織
「電車で行きましょう」
嘉位
「了解」
二人は、飲み物を部屋の冷蔵庫から取り出し、スマートフォンをそれぞれいじりだした
八重
「かおり、地震大丈夫だった?ま!お屋敷だから問題はないし、ダーリンもいるからね、羨ましいな」
香織
「うん、いろいろあったけど、大丈夫でした、それにね・・・」
八重は、何かを感じ取り、これは文字ではなく、話したほうが、おもしろいな?
八重は
「香織、電話してよい?
香織
「うん!もちろん」
八重
「それで、それでさ、それにね、・・・の続きよ、続き、そりゃー、もう、という感じ?」
香織
「もう、八重ったら・・・でも、正解」
香織は、ここ数日の話を全て、八重に打ち明けた。
八重
「まじで!羨ましい、で、どう、どうだった?」
香織
「すごかった」
八重
「それじゃわからない・・羨ましいな。」
香織と八重のとの会話は続いていた。
一方嘉位は、由良にメッセージを送っていた
「グローブ来たよ」
すぐに返信があり
由良
「お!良いな、見せてよ」
「嘉位、電話していいか?」
嘉位
「おう」
由良から電話があり
二人は野球の話で盛り上がっていた
由良
「あれ、良くまとめたな、相変わらずというか、流石というか」
嘉位
「いや、まだまだ、来週登校したときに、監督のところに挨拶にいきたいのだけれども?」
由良
「てっきり3月に入部かと、中曽根さんと、香織さんと一緒に?」
嘉位
「うん。それくらいになる。ただ、その前に挨拶をしておいて、入部説明会の時に参加させてもらえないか、聞いてみたくて」
由良
「そんなこと、聞かなくても大丈夫に決まっているだろうに、律儀だね」
嘉位
「いや、いや、きちんと説明して了解を得ないとね」
由良
「わーった、わーった。じゃ、月曜日な!」
嘉位
「よろしく」
二人の会話は終わった。
一方で香織のほうは会話が続いていた。
嘉位はまだ時間あるし、千佳さんにメッセージを入れていた
今日は電車で買い物に行きます。香織のお洋服を用意して頂けないかと、お昼は外で済ませること、夕食には家に戻ること等を伝えた」
少しすると、部屋をノックして
千佳が入って来た。
香織はそのことにも気が付かず、会話がはずんでいた。
嘉位
「千佳さん、ありがとう、ごらんのとおりなので、千佳さんが選んでもらうほうが良いなと思って」
千佳
「あちらにいかれるのでしたら、カジュアルすぎるのも、と思いまして、このように」
嘉位
「さすが、千佳さん、ではそれに合わせて、僕はと」
千佳
「こちらで、良いかと存じますが、いかがでしょうか?」
嘉位
「千佳さん、ナイス!」
嘉位
「お昼前か、お昼位には出かけてきます」
千佳
「かしこまりました。何かの際にはご連絡をくださりませ」
千佳へ部屋から出て行った。
香織の会話はまだ続いていたいので、嘉位は先に気がることにした。
嘉位が着替えを終えると、同時に香織と八重の通話も終わった。
ふと、スマートフォンの時間をみると2時間も話していたことに、改めて気が付いた。
あ!お洋服どうしよう、話混んでしまった。時間を見ていなかった。
嘉位のほうへ視線をむけると、嘉位は、ここにそろっているよと、合図をくれた
香織
「ごめーん、話に夢中になっていて、これは千佳さんが?」
嘉位
「うん、良いよ。千佳さん準備してくれたから、着替えが終わったら、行きましょうか?」
香織はとても笑顔で、嘉位に答えた
「はい」
二人は地下鉄に乗って、手をつなぎながら話した
嘉位
「お昼はラーメンで良い?」
香織
「ラーメンお好きですね。初めてのデートもラーメンでしたものね」
嘉位
「香織も分かったと思うけど、家ではラーメンとかは無いのだよね、僕にとってラーメンは贅沢品なのだ、大好き」
嘉位は自慢気に話すと
香織も確かにそういわれてみれば、毎食がご料亭みたいなお料理が沢山でていた。
香織
「たしかに、ラーメン等は頂いたことは無いですね」
嘉位
「そう、だから、ラーメンは最高!ファーストフードも最高!」
香織は子供っぽい嘉位がおかしく思えて声を出して笑ってしまった。
嘉位は
「うん、ちなみに、京都のお店もチェックしてあるからね、京都でも行きたいけど、良いかな?」
香織
「はい、嘉位と一緒ならどこへでも行きます」
そんな事を話している間に、着いてしまった。
そのまま、手を繋いで、ラーメン店についた
一風堂
である
嘉位
「お、空いている、入れるね、入ろう。香織は一風堂は来たことがあるかな?」
香織
「ないですね。はじめてです。あ、この辛いのが食べたいです」
嘉位
「では、ぼくはしろのばりで」
来た、来た
嘉位
「いーただきまーす」
香織も
「いーただきまーす、う!思ったより辛い!が、美味しいこの辛さが絶妙!」
嘉位
「へーそうなのだ、今度僕もそれにしてみよう」
二人はお腹いっぱいになり、手を繋いで目的のお店についた。
香織
「昨日調べていた、お店ですね、外国人の方が多いですね」
嘉位
「そうだね、中に入ろう、あの方いるのかな?」
香織
「お知り合いがいらっしゃるのですか?」
嘉位
「知り合いと言うほどではないですが、昨年一気にまとめ買いをさせられて・・・?楓に」
店員さんを探して、既にみつくろっているものを、スマホで見せた。
店員さんは一回下がって、なにやら奥の方で話をしているみたいであった。
店内には沢山の外国人の方がいて、店員さんは接客に追われていた
そのなかで、一人の方が嘉位に近づいてきた
エリア責任者
「お、お久しぶりでございます。品物一覧をみたところですね、私に確認がありまして、ここではなんですから上の方へ」
嘉位
「なにか、すいません、お忙しいのに」
エリア責任者
「いえいえ、山本様でございます。とんでもございません、既に上に用意してあります」
エリア責任者
「本日は楓様ではなく、」
嘉位
「あ、ご紹介いたします。妻になる香織です。婚約者です」
香織
「はじめまして、香織と申します。私達にお時間を割いて頂きまして、ありがとうございます。それでは本日は、よろしくお願いいたします。」
エリア責任者
「おめでとうございます、昨年ご来店頂いた時には、女性には興味がないとおっしゃっていた山本様、本当におめでとうございます。」
「香織様、ご結婚の儀には是非、是非とも、私共にお声をかけてください。」
香織
「え!わたしですが、嘉位ではなく?私で良いのですか?」
エリア責任者
「もちろんでございます。ウェディングドレスでございます。私共の巧数十名で1からおつくり致しますので、是非ともご用命くださりませ。山本財閥の奥方になられるお方です。楽しみにしております」
香織は顔が赤くなった。そう、結婚式の事はまだ想像もしていなかったからである。自分のウェディングドレス姿を想像し、お姫様。いいなー。女の子のあこがれ、ですものね。
香織
「はい、その時は是非」
嘉位
「キャッシュも持ってきていますが、このカード日本で使えるか調べて頂けますか?そうですね、何か!そうだ、リストにお揃いのキーケースを書き忘れていたので、あ!色がやはりみたいのでキーケースも見せてもらってから、先にそれで確認という形で」
店員
「失礼します。」
店員は少し血相を変えたように、中に入り耳打ちをしていた。
エリア責任者
「山本様、最近外国人の私共以外でもお客様トラブルがあり、変な言いがかりをつけて、商品を持ち去っていることを、ごぞんじでしょうか?」
嘉位
「はい、ネットで見ました。裏話も、あれは転売もしていますよね、この間、あのお店の自動巻きの時計を3本とか、書いたのを目にしています」
香織は何のことかわからなかった。
嘉位
「僕が対応しましょう」
エリア責任者
「そんな、山本様になど、お頼みできません」
嘉位
「いや、ここらあたりで、止めておかないと、同小売業界にも被害が拡大していきますので、ここは僕がいきます」
嘉位は下の階に下りて行き、エリア店長と店員、香織はそのあとにつづき、少し離れて嘉位をみることにした。
嘉位は、あれだな、あの騒いでいる人たちだな。
嘉位は、正面から割って入り、中国語で
「あの記載が読めませんか?読めないのであれば、わたくしが説明いたします」
外国人のお客さん
「うるせー、俺が欲しいものがないから、下のグレードで我慢してやる、その分よこせ、それだけだ」
嘉位
「ないものは、出てきません。それくらいはわかるでしょう、パスポートか身分証を見せて頂けますか?」
外国人のお客さん、財布をゆっくりとあけて、お札がぎっしりと、そして、何かの証明書らしきものを
「気に入らないな、ほれ」
嘉位は財布の中身を全て一瞬で暗記し
嘉位
「少しだけお待ちいただけませんか?
嘉位はスマートフォンを取り出してどこかに電話した、
「番号はこれです。5分で決めてください。そのあとは任せます」
嘉位
「お客様、今近くの店舗から取り寄せますが、急がせて30分ですが、よろしいですか」
外国人のお客様
「良いわけないだろうが、このガキ!、さっさとその下のグレードをよこして、値引けよ、時間が無いから、もらってやるからよこせ、」
「希望のものを買ってやろうというのによ、なんださっきから何をこいつらは、見ているんだ」
嘉位
「お声が大きいからでしょうね」
嘉位に電話が入る
「そうか、歴ありな、あとは、わかった」
嘉位
「こちらのお店でもともと、お買いになるつもりはないですよね?違いますか?」
外国人のお客様
「バカをいえ、金もってきいるだろうが!」
嘉位
「そちらの財布にあるお金、一枚目と、最後だけがお札、他の厚みのある部分はたんなる紙です。その金額でしたら、そうですね、何がかえるのかな?」
外国人のお客様
「てめー、いつ俺の財布みやがった、カードってもんがあんだろうが」
嘉位
「そのカードはもう使えません、止めました」
外国人のお客様
「ばかな事を、俺をだれだと持っているんだ!殺すぞ!」
嘉位
「はい、余罪、成立・・・。」
「あなた、転売を、兼ねた詐欺で、あなたの国でも犯罪歴がありますね」
外国人のお客様
「なんだと、貴様、なんで、そんなことを」
突然、店内に10数名の方が入ってきて
嘉位
「お迎えがいらっしゃいましたよ、見てください」
外国人のお客様
「あ?なんだ、てめーー」
警察官は時計を確認し
「逮捕します」
大使館の方
中国語で
「あなたを逮捕、強制送還致します」
外国人のお客様
「わ!冗談だよ、冗談、俺は何もしていないぞ」
嘉位は、あきれたように
「全て調べ上げました、また、余罪も含め、2億円の品物を巻き上げ、強奪、そして、転売をした売り上げが実績としてありますね。それも、この2か月で、単身行動で無い組織的な所についても調査済みです。
お国へ、おかえりください。
この国は犯罪をおこす国では、ございません」
「少なくとも、わたくしが許すことはありません」
外国人のお客様
「てめぇー、このくそがきぃー、貴様、何者だ!」
警察官、
「いくぞ!連行」
大使館の方
「つれていけ」
お店の外に出て行った。そとにはサイレンがけたたましく、鳴り響いていた。
店内は、シーンとなっていた。とても静かであった。
香織が急いで、嘉位の元にかけより
そのあと
エリア責任者が、店員が、
他の店員も嘉位のところによってきた
エリア責任者
「ご迷惑をおかけし、また、心よりお詫びもうしわげます。山本様には、我々一同頭があがりません」
「まことに、この度はご迷惑をおかけいたしました」
怖くてどうしてよいか、わからなく、隣で泣いていた、店員さん
ずっと嘉位の隣で泣いていて、怖くて、怖くて、膝も震えていた。
別の店員さんが泣いている店員さんをなだめで、もう大丈夫だよと
やっと泣き止んで。落ち着きを取り戻し
泣いていた店員さん:
「あの、ですね、わたしも中国語を話せるので、話の内容はわかります。
「しかし、なんで財布を一瞬みただけで、わかったのでしょうか?」
「少なくとも。わたしはあなた様から一番近い場所にいたのですが、何もわかりませんでした」
「何故あのような、展開になったのですか?」
嘉位、あ!あの事かあれを説明すれば、良いのかな
嘉位
「ほら、先ほどの方、お財布を開いたじゃないですか?見ました?」
泣いていた店員さん
「はい、財布を開いたのは見ました。でも一瞬でしたよね」
嘉位
「その時に、財布にあった全てのカード番号を暗記して、お札の揺れを暗記し」
「お札は一枚目と、最後の1枚しか本物ではなく」
「他はすべて紙」
「カード番号と、証明書というものを」
「山本財閥の中国支社に、番号を全て伝えてデータベースに紹介をかけ、あとはマニュアル通りに対処した」
「たったそれだけです」
店員
「え!、え!、えええ ーー!!」
泣いていた定員さん
「あ、あの一瞬で全てを暗記?!」
香織は、涙ぐみ、流石は嘉位。あれですね、由良君とトランプを一瞬で行動動作を暗記する、あれの事ですね。わたしの王子様は、なんという人なのだろう。
エリア責任者
「なんという、洞察力と、判断力」
嘉位
「いえ、僕は暗記しただけですよ、ほかには何もしていません」
エリア責任者
「す!凄い、流石は山本財閥の御曹司でございますね」
泣いていた店員:
「え!山本財閥の御曹司の方なのですか」
嘉位
「ま!そう、そうですね。こちらが婚約者」
香織は一歩前にでて、どこか胸を張って
「香織と申します、あのよろしければ、お買い物の続きを」
エリア責任者
「あ、そうでした、お代は要りませんので、」
嘉位は笑いながら
「それでは、先ほどの方とかわらないではないですか、きちんとお支払いします。まずは試着からよろしいでしょうか?」
泣いていた店員:
「わ、わたしに、務めさせてください」
エリア責任者は、なにかしら怖かったことを救ってくださったことにたいして、お礼がしたいという意をくみ取り
「山本様がよろしければ」
香織がすかさず
「はい、よろしくお願いいたします」
店内のほかのお客様たちから
大きな拍手が沸いた!!!!
嘉位という、スターを扱うような、大きな、それは大きな、拍手であった!
香織は、どこか、自分の事のように自慢気にしていた。
「それでは、試着からお願いいたします」
二人は、お揃いで着飾り
嘉位、これかっこいいな、香織ともばっちりあっている。
香織は、嘉位かっこいい、わたしも何だか、少しお姉さんに見える、すごいなー。
嘉位
「では、お会計を、このまま持って帰りますので、出来る限り申し訳ないですが、纏めて頂けると、今日は電車なので」
店員さん
「かしこまりました。カードですね、大丈夫です」
エリア責任者
「山本様、海外のどちらかに行かれていたのですか?」
嘉位
「はい、半年ほど、海外で暮らして、昨年末に日本に戻ってきました。」
エリア責任者
「そうでしたか、それでカードの確認をとの、事だったのですね」
エリア責任者
「いつも、まとめてお買いあげくださりありがとうございます」
嘉位
「いえ、こちらこそ、良いものを買えて良かったです」
嘉位と香織はお店を後にした
嘉位と香織が見えなくなるまで、店員一同深々と頭を下げ続けた
地下鉄にのり、二人でゆっくりと帰宅したのであった。
< つづく >