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第一〇三話:両親への布石と新たな展開

山本嘉位やまもと かいは、蓬田香織よもぎだ かおりの実家である酒造メーカーへの訪問を終え、彼の両親を説得するための布石を打った。彼の目的は、香織の家が、山本財閥にとって有益な存在であることを示すこと。そして、それを通して、香織との関係を、彼の両親に認めさせることだった。


「かい」は、実家に戻ると、父親に香織の家の酒造りについて話した。海外市場での日本酒の需要、そして、香織の家のこだわりの酒造りが持つ潜在能力。彼の話は、ビジネスライクで、感情を一切含んでいなかった。それは、彼の父親に、彼の真剣さを伝えるための、彼の戦略だった。


父親は、「かい」の話を真剣に聞いていた。御曹司である「かい」が、これほどまでに特定のビジネスに関心を持つのは珍しいことだったからだ。


「なるほど…蓬田の酒造メーカー…そこまで面白い企業だったとは、知らなかったな…」父親は、興味を示したようだった。


「かい」は、父親の反応を見て、内心で安堵した。彼の計画は、うまくいき始めている。


そして、「かい」は、母親にも香織の家の酒造りについて話した。母親は、父親よりも感情的な反応を示した。


「まあ、あの子の家が、そんな素晴らしい酒造りをしてるなんて…素敵ね」母親は、香織に会ったことがあるので、香織の人柄も知っている。


何よりも母自身が政略結婚の被害者であり、今回の結婚に対して大反対をし、父 まこと を どなりつけたのも母であった。


母は、父の浮気もばれていることを怒鳴り散らし、いい加減にしないと、会社からつまみ出すわよ!恫喝した。


その一方で、海外視察を提案したのも母であった。あなたが生涯の人と決めたのであれば、その証として南米のプロジェクトに参加してもらうわ。


それを成し遂げられたら一緒になりなさい。


但し条件があります。海外在中時は一切の連絡を絶つこと。婚約者も同行すること。実際婚約者が行くことはありません。


わかりますよね、まことさん。


父が慌てている。それもそのはず、婚約者が浮気相手の末っ子だからである。


よいですね?


それくらいの期間を香織さんが我慢できなければ、山本家には向きません。この条件の意味わからないあなたじゃないですよね?


既に母は蓬田家について調べ切っていたのだ。そして香織の性格についても、山本家に迎える器量がある娘だということも調査済みであった。






「かい」は、母親に、香織の人柄や、彼女がどれほど素晴らしい娘であるのかを、さりげなく話した。それは、母親に、香織に対する好意を抱かせるための、彼の戦略だった。


彼の両親は、香織の家の酒造りに興味を示し始めた。そして、それは、香織という存在に対する、彼らの見方を変える可能性を秘めていた。


一方、香織もまた、彼の両親に、彼の訪問について話した。両親は、山本財閥の御曹司が、自分たちの酒造りに興味を持ってくれたことに驚きながらも、喜んでいた。特に、香織の父親は、「かい」の知識と熱意に感心していた。


「山本様は…素晴らしい方だ。うちに、大きな可能性を見出してくれた」と香織の父親は言った。


香織は、両親の様子を見て、少しだけ安心した。彼の訪問は、両親にとっても、悪いことではなかったようだ。そして、それは、彼と香織の関係にとって、プラスに働くかもしれない。


終了式の後、香織は裏門で「かい」に会った。「かい」は、香織の実家への訪問が、彼の両親への良い布石になったことを、香織に伝えた。


「蓬田さんのお父さん、僕の話に興味を持ってくれたみたいだ。そして…僕の父さんも、少しだけ興味を示してくれた」


「かい」の声は、希望に満ちていた。


「このまま、蓬田さんの家の酒造りを足がかりに、父さんと母さんを説得するつもりだ。そして…婚約者のこと…きちんと、話をつけるつもりだ」


彼の決意に、香織の心臓がドキドキと鳴る。彼は、この困難な状況を乗り越えようとしている。


「だから…蓬田さん…信じて待っていてほしい。きっと、僕たちの未来を、切り開いてみせるから」


彼の言葉に、香織はこくりと頷いた。


「…はい…嘉位を…信じています…」


そして、「かい」は香織を優しく抱きしめた。放課後の学校の裏門。二人の未来への希望が、強く灯った瞬間だった。


しかし、その時、香織のスマートフォンの画面に、メッセージの通知が表示された。差出人は、山本楓だった。


「お兄様が、あなたのご実家に行かれたそうね。これからなんと御呼びしたらよいのかしら ふふふ」


楓からのメッセージ。

(つづく)

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