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第一〇一話:酒造りの情熱と御曹司の計画

香織はタクシーで実家に戻り、落ち着きを取り戻していた。

改めて冷静になるために、シャワーを浴びた。髪を乾かした後。


両親に「かい」が酒造りの見学をしたいと言っていることを話した。香織の両親は、学園一の有名人である山本嘉位が、自分たちの酒造りに興味を持ってくれたことに驚きながらも、快く引き受けてくれた。


「山本様が、うちの酒造りに興味を? 珍しいこともあるものだ」と香織の父親は言った。香織の母親も、「あの山本財閥のご子息が、うちに来てくださるなんて…光栄だわ」と喜んでいた。


香織は、両親の様子を見て、少しだけ安心した。彼の訪問は、両親にとっても、悪いことではないようだ。


今日は興奮して眠れないと思っていたが、泣き疲れて寝てしまった。




そして、翌朝。山本嘉位が、香織の実家の酒造場を訪れることになった。香織は、期待と緊張が入り混じり、落ち着かなかった。彼に、自分の世界を見せる。そして、それが、二人の未来を切り開く鍵になるかもしれない。


当日、香織は、実家の酒造場の前で「かい」を待った。「かい」は、一人で、タクシーでやってきた。いつもの制服ではなく、カジュアルな服装だった。


「香織! ごめん、待った?」


「い、いえ…」香織は、顔を赤らめる。「ようこそ…いらっしゃいました…」


「ありがとう!」と「かい」は優しく微笑んだ。そして、香織の手を取り、酒造場の門をくぐった。


酒造場の中は、日本酒独特の、甘く、そして力強い香りが満ちていた。香織は、彼に酒造りの工程を説明しながら、場内を案内した。彼は、真剣な表情で香織の説明を聞き、熱心に質問をする。その眼差しは、彼の情熱を感じさせた。


「すごい…! こんなにも、丁寧に、時間をかけて造られているんだ…」


「かい」は、こうじ室、仕込み蔵、圧搾機などを見て回りながら、感動した様子だった。彼の、酒造りに対する真剣な姿勢を見て、香織は、彼の新しい一面を知ったような気がした。


そして、「かい」は、香織の父親に、海外での日本酒や焼酎の評価について、熱心に話をした。彼の話を聞いている香織の父親も、最初は驚いていたようだが、だんだんと真剣な表情に変わっていった。


「なるほど…海外では、そこまで日本の酒が評価されているのか…それは、知らなかった…」と香織の父親は言った。


「かい」は、父親に、海外市場への展開や、新しい販路の開拓について、具体的な提案をした。彼の知識と情熱は、香織の父親を感心させた。


「山本様は…酒造りについて、大変詳しいのですね…」と香織の父親は言った。

「はい。海外での経験を通して、日本の酒造りの素晴らしさを、改めて実感したんです。そして、蓬田さんの家の…この、こだわりの酒造り…これを、もっと多くの人に知ってもらいたいと思ったんです」


「かい」は、香織の父親の目を真っ直ぐ見て、そう言った。その眼差しは、単なるビジネス上の提案だけではない。何か、香織の父親に伝えたい、別の意味があるのだろうか。


この訪問は、単なる酒造りの見学だけではなかった。それは、山本嘉位という御曹司が、蓬田香織という地味な女子高生の実家の酒造りを通して、自分の未来を、そして、香織との未来を切り開こうとする、彼の計画の始まりだった。



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