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追い縋る者たち

【レンディルサイド】

 一方その頃、レンディルたち追跡部隊は城塞都市バーレクから一日過ぎた先にある宿場砦付近にいた。

 フレッドたちが立ち寄った村から一日ほど手前にある場所だ。


 彼らは王国内で大量に徴収した地走り型幻魔として有名な赤トカゲの背に乗り、強行軍に強行軍を重ねてここまで辿り着いたのである。

 お陰で、大分失った時間を取り戻すことはできたが、代わりに多くのものを失っていた。

 予備で連れてきていた幻魔の数も大幅に減っていたし、ついてこられなくなった聖騎士や近衛騎士も何人かいた。


 その背に騎乗している人間も、一睡もせずに走り続けていたら相当な体力を失うが、ひたすら走らされている幻魔は文字通り命を削られる。

 この辺は馬と同じで、本来はどこかで休ませないといけないのだが、それをする代わり使い潰すという手段に出たのである。


 これを考案したのはレンディルの影として付き従っている黒騎士ヒースだった。

 走れなくなった幻魔はその場で処分し、新しいものに乗り換えてひたすら走り続ける。

 そう提案してきたのである。



「だが、さすがにそろそろ俺たちも兵らも限界が近い。どこかで小休止を取らねば」



 そう思って立ち寄ったのがこの宿場砦だった。

 この砦には昨夜遅くに到着したのだが、彼らの到着に立ち会った門衛がその異様なまでの雰囲気に度肝を抜かれていた。



「な、なんだ、お前ら! その幻魔の数は! これから戦争でもおっぱじめる気か!?」



 思わずそう、発言してしまうほどには。

 しかし、レンディルたちの不健康なまでの顔色の悪さを見て、すぐさま今度は別の意味でぎょっとする門衛だった。

 そんなやりとりがあった末に、ヒースの脅しもあって普通に宿で一泊したレンディルたちは、久しぶりの休息によって心身共に疲れも大分癒え、表情からは影が消え去っていた。



「ヒース。奴らは今どの辺にいると思う?」

「そうですねぇ。俺の読みではおそらく、一日以上先にはいないと思いますがねぇ」

「なんだ、はっきりしない奴だな。どれぐらい詰められたのかわからなければ、今後の方針が立てられないだろうが」



 青髪の青年は眉間に皺を寄せ、背後を振り返った。

 そこには彼と同じく、逆賊追跡のために隊に加わった騎士たちがいた。

 王都を出たときにはレンディルを合わせて五十名ほどいた者たちも、今は既に十五名ほどしかいない。


 途中で二回ほど、隊を分けて南進してきたが、最後、強行軍についてこられず戦線離脱していった者が五名ほどいる。

 一応あとで合流する手筈となっているが、戦力としてはまったく期待できなかった。

 赤トカゲも現在、予備含めて二十頭ほどしかいない。

 今後は今までのような強行軍はできないだろう。



「レンディル様、どういたしますか?」



 幼馴染の聖騎士、ゲールが声をかけてくる。



「あのクソ野郎をさっさと捕まえて、処刑台に送り込みたいですからね」



 もう一人の幼馴染、ハワードがニヤッとしながら左掌に右拳を打ち付けるような真似をする。

 レンディルはそんな頼もしい幼い頃からの遊び友達だった彼らを見てニヤッと笑った。

 ヒースを相手にしたときに感じた苛つきなどすべて吹っ飛んでしまった。


 それだけ、幼馴染たちは彼にとってはかけがえのない友だったということなのだろう。

 願わくは、このままずっと彼らとはいい関係を築いていきたいと、そう思った。そして、これから待っているであろう輝かしい未来を共に歩んでいきたい。

 レンディルは素直にそう考えていた。



「――お前たちの言う通りだ。あの岩石野郎さえ捕まえればすべてが終わる。陛下を救出し、国へ凱旋した俺たちを皆が盛大に祝ってくれるだろうさ!」



 レンディルは声高に宣言し、右手を天に向かって掲げた。

 それに、幼馴染の聖騎士二人だけでなく、共についてきてくれた他の騎士たちまでもが応じて声を張り上げる。



「クック。もうじきだ。もうじき追い付くぞ、フレッドよ。それまでにしっかりと首を洗って待っているがいい……! この俺が……この俺が直々に貴様の首をはねてやるからな! お前が愛した愛しい女の前で!」



 レンディルは脳裏に泣き叫び助けを請うもう一人の幼馴染の姿を思い描き、美しい顔に仄暗い笑みを浮かべた。

 そんな彼らを少し離れた位置に移動して眺めていたヒースが軽く肩をすくめる。



「クフ。相変わらずおめでたい奴らだ。せいぜい、今のうちにいい夢でも見ておくんだな、クフ、クフフフ……」



 盛り上がっているレンディルたちに背を向け、ひたすら下卑た笑い声を上げるどす黒い甲冑を着込んだヒース。

 そんな彼を遠くから呼ぶ声が聞こえてきたのはそんなときだった。



「セルフリード卿!」



 馬に乗った一人の騎士が、土煙を上げながら北の街道からこちらへと走ってきていた。

 見た目はヒースと同じように真っ黒い鎧を着込んだだけの戦士。しかし――



「ぉお……ようやくきたか。待っていたぞ、レイン!」



 珍しく満面に嬉しそうな笑みを浮かべながら、その者へと近寄っていくヒース。

 レンディルは突然のちん入者に眉根を寄せ、



「なんだぁ?」



 と振り返ったところで絶句していた。

 彼のすぐ隣にいた幼馴染たちも同様に息を飲んだ。

 彼らの視界の先、そこには見たこともないような化け物を引き連れた甲冑男とヒースが互いに笑い合っていた。


 全身から湯気のような揺らめきを漂わせたおぞましい怪物の側で。

本作に興味を持っていただき、誠にありがとうございます!

とても励みとなりますので、【面白い、続きが気になる】と思ってくださったら是非、『ブクマ登録』や『★★★★★』付けなどしていただけるとありがたいです。

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