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転生して未来視に目覚めた俺。追放や破滅の未来を変えようとしていたら、俺のことが好きすぎる幼馴染女王様に拉致された挙げ句、旅のお供にされてしまったんだが?  ~転生竜騎士と愛の重い逃亡剣姫  作者: 鳴神衣織
第6章 帝国編 ~リリックライラの魔草~

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厄介な対魔獣結界

「あれか……」



 知らない間に南にまっすぐ向かっていた街道の左手。そこに、小さな村ほどの大きさの砦が築城されていた。

 その周囲には、大勢の馬車が集まっている。



「旅人のために開かれた砦っていうのはどうやら本当みたいだな」

「フレッド様、それからイリス様。一応は砦の中には我が国の兵が詰めていて外敵の心配はありませんが、くれぐれもご自身のお立場をお忘れなく」

「わかってるよ。俺たちはリーンリヴァイア一家。王国からの旅人ってことでいいんだよな?」


「はい。ですが、もっと言えば豪商を親に持つ息子夫妻で、趣味でハンターをやっているということにしておいてください。あそこの門衛は少々、癖がありますのでくれぐれもお怒りにならないよう、お願いいたします」

「癖って……なんだかあまり立ち寄りたくないところだな」



 俺の脳裏には瞬間的に、王国で俺のことを罵倒してきたあいつらのことが思い浮かんでいた。

 ああいう手合いはどこにでも存在するが、だからといって、自ら進んで相手にしたいとはさすがに思わない。



「あまり納得はできないが了解した。それで、ぽこちゃんのことはどうする?」



 エルレオネにはぽこちゃんがどういった性質の幻魔なのか、既に説明してある。

 王家スキルや幻獣であることは伏せているが、新種だと説明しておいた。



「他の町同様、砦にも対魔獣結界が施されていますので、幻魔を連れていることはすぐにバレてしまいます。ですので従来通りフードの中に隠したまま、調教済みの幻魔を連れていると進言し、スライムの部分だけお見せください。翼は見せない方がいいです。新種のような曰く付きの個体ですと、フレッド様たちの身元など色々余計なことまで詮索される可能性がありますので」

「わかった。その線でいくよ――しかし、結界か。本当に面倒くさいな」



 俺は軽く溜息を吐いた。

 エルレオネが言う対魔獣結界というのは、効果範囲内に魔獣が侵入したり近づいたりすると、警報が鳴るシステムのことである。


 ものによっては侵入すら不可能となる高度な結界も存在するが、そういったものの運用には膨大な魔力が必要となるため、大抵の場合は最重要区画にしか使われていない。

 王国で言うと女神洗礼の間辺りだろうか。


 これまで通ってきたリヨンバラッドやエルスでは探知能力だけが付与された簡易タイプのものが使われていたので、警報が鳴ることはあっても物理的に街の中に入れないといったことはなかった。


 そういった意味ではあまり気にする必要のないシステムと言えるが、この結界には一つ、避けては通れない問題があった。

 それが認証方式である。


 通常、野良幻魔であろうと契約幻魔であろうと、みんな等しく結界に反応してしまうので、それを防ぐためには各町ごと、結界を潜る前に幻魔が身につけている契約の腕輪や販売用幻魔登録証を結界に登録させておかなければならないのだ。


 そうしないと、思いっ切り反応して大事になってしまう。

 しかし、ナーシャの相棒であるぽこちゃんは、その登録作業がしにくい状態にあった。


 ぽこちゃんは普通の幻魔契約の手順で契約したわけではなく、正規のテイマーと同じやり方で契約してしまったので腕輪も必要ないし、販売用ではないので登録証も持っていなかったのである。


 しかも、運が悪いことにぽこちゃんはあの体型だ。


 契約の腕輪が必要なかったとはいっても、つけようと思えばいくらでもつけられるのだが、腕のような部位がなかったので物理的に嵌められなかったのだ。


 なので、普通に考えたらぽこちゃんは結界に登録できず、街の中に入れないといった残念な結果に終わってしまう。


 しかし、それでは旅の相棒として連れ歩くことができなくなってしまうので、俺たちは苦肉の策を講じて対処するしかなかったというわけだ。

 それが、契約のペンダントというやり方だった。


 実はリヨンバラッドで生まれてすぐ、既に結界に登録済みだった契約の腕輪を幻魔屋から格安で譲ってもらい、それをペンダント状にして身につけさせていたのだ。


 こうしておけば、契約の効力は発動しないものの、結界の認証自体はなんとかなる。


 エルスでは門衛がとても話の通じる人だったので、物理的に腕輪がつけられない旨を説明して、契約の腕輪――契約のペンダントを結界に識別させ、事なきを得ていた。



「果たして砦ではどうなるかな」



 俺は一抹の不安を覚えつつも、



「――ナーシャ」



 ちらっと後ろを振り返った。

 幼子はフードを外して、楽しそうにぽこちゃんと何事か話しているような感じだったが、



「うん~~? なんでしゅか?」

「そろそろ宿に到着する。いつものようにぽこちゃんをフードの中に隠しておいてくれ」

「わかりましたでしゅ!」



 銀髪ツインテの幼子はキリッとした表情を浮かべて、普段衛兵たちがやっているような敬礼の真似事をしたあと、急いでぽこちゃんをフードの中に隠した。

 俺たち大人は軽く目配せして、宿場砦へと馬車を急がせた。

本作に興味を持っていただき、誠にありがとうございます!

『ブックマーク登録』や『☆☆☆☆☆』付けまでして頂き、本当に嬉しく思っております。

皆さんの応援が執筆の励みとなり、ひいては大勢の方に読んでいただくきっかけともなりますので、今後ともよろしくお願いいたします(笑

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