爆誕2
「なっ……こいつは……」
「あらら~? なんなのかしら、このおかしな生き物」
俺とイリスはぽかんとしてしまった。
俺たちの目の前でパタパタと宙を飛んでいる生き物。
そいつは空を飛ぶ真っ黒いスライムのような魔獣だった。
「ぽこちゃ~ん! ナーシャとお友達になってぇ~~」
掌大のまん丸な真っ黒い物体。
その背には真っ白い一対の翼が生えていた。
更に、身体の色とは対照的な、白いつぶらな瞳が二つついている。
そんなおかしなスライムもどきを仰ぎ見ながら、ナーシャが一生懸命に叫んでいた。しかも――
「光っている……?」
彼女の全身から、仄かな青白い光が放出されていたのだ。
その光は空飛ぶスライムっぽい生き物へと一直線に伸び、身体すべてを柔らかく包み込んでいく。
「驚いたかしら? ふふ。ナーシャはね、獣魔調教っていう王家スキルを持っているの」
「は? 調教だってっ?」
「えぇ。ナーシャのスキルはね、たとえどんな凶悪な魔獣が相手であっても、簡単に心を通わせることができて、幻魔契約できてしまうスキルなのよ。勿論、調教していない魔獣が相手であってもね」
「マジか……」
「えぇ、しかも、魔獣や動物たちと会話までできてしまうのよ?」
「は……?」
「ふふ。だからね、あの子、実はジークとも話せていたのよ」
クスクス笑っている女王様の告白に、俺は呆然としてしまった。
もしそれが本当なら、天地がひっくり返るような珍事である。
それぐらい、前代未聞のやばいスキルだった。
何しろ、調教スキルなんてものはビーストテイマーですら持っていない代物なのだ。
彼らビーストテイマーは、特殊なスキルを使用して幻魔を捕獲し、調教しているわけではない。
技術としてのスキルで手懐けているに過ぎないのだ。
剣術や格闘術のそれと一緒だ。
一応テイマーは契約の腕輪なしでも、調教した幻魔を意のままに操れる。
ただ、契約の腕輪のような強制力を伴う力を幻魔に働かせているわけではないので、場合によっては反抗されて死傷する恐れがある。
これに対して、テイマーではない一般の人間が行う幻魔契約は、契約の腕輪を通じて契約することで、擬似的にテイマーのように幻魔を引き連れ使役することが可能となるシステムである。
要するに、腕輪がなくても調教した幻魔と契約して意のままに操れるのがテイマー。
契約の腕輪を用いた上で、契約の儀を行わないと調教してある幻魔ですら意のままに操れないのが幻魔契約ということだ。
まぁ、ある意味、疑似テイマーシステムと言えなくもないが。
ともかく。
テイマーが行う調教とはそういうものである。
女神スキルのような調教スキルを行使して調教しているわけではないので、うまくいかないことも多いし、下手な奴はその業界では食っていけない。
そういう仕事なのだ。
それなのに、王家スキルとして調教スキルを最初から持っているとか。
やはり、ヴァルトハイネセン王国の王族の血は伊達ではないということだ。
「まさか、俺としか会話できないはずのジークとまで話ができてたとはな――そういや、時々ナーシャと遊んであげてたけど、中庭に飛んできてた小鳥や飼っていた兎とかとも話をしてた気がするな。あれって、そういうことだったのか……」
「そうね。まぁ、他にも卵や幻魔、動物たちの成長を促進させる力もあるみたいだけれど」
俺はそれを聞いて、額に手を当てた。
「だからか……だからこんなに早く卵孵ったのかよ……」
「ふふ……かもしれないわねぇ。でもまぁ、そこまでだったらまだいいんだけれど、あの子が持つ力の本当に恐ろしいところは別にあるのよね」
「は? 別?」
しかし、俺のその問いにイリスが答えることはなかった。
「――そろそろみたいね。ほら。ぼ~っとしてると、決定的瞬間を見逃すわよ?」
イリスが面白そうにニヤッとする。
まるでそれが合図にでもなったかのように、いきなり小さな幼女とスライムを中心に眩い光が部屋中へと舞い飛んでいった。
そして、それが消滅したとき、俺は目の前の光景に言葉を失ってしまった。
「あらあら」
相変わらず楽しそうに笑うイリス。
「きゃはは。ぽこちゃん、これからよろしくね~~」
「ピキ~♪」
例の黒いスライムは、ニコニコ嬉しそうに笑うナーシャの頭の上に乗って、小さな鳴き声を上げるのだった。
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