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運命の三女神洗礼の儀1

 大聖堂の最奥に作られた洗礼の間。

 そこには大勢の若者たちや国の重鎮らが集まっていた。


 先代女王が数年前に急死したことを受け、現在、玉座についているイリスレーネもいた。


 代々聖騎士の家系でもある宰相の息子レンディル・リッチを始めとした親父の敵対勢力である竜騎士の家系の御曹司たちも勢揃いしている。


 この洗礼の儀に立ち会えるのは今回スキルを授与される十五歳の若者たちや、既にスキルを所持している関係者のみとされていた。


 そのため、当然、公務の関係で先入りしていた俺の親父もいるし、三つ年上の兄グラークもいる。


 既に成人を迎えてスキルを有している有力貴族の嫡子もいた。

 クラウスがこの場に来られなかったのは、まだ十三歳で入場資格がなかったから。

 そんな状況下で、厳かに始まる洗礼の儀。



「おおお~! これは素晴らしい!」



 四角い部屋の隅っこで所在なげに成り行きを見守っていたら、大歓声が響き渡った。

 幼き日の面影などまるでない女王イリスレーネに対する賛辞だった。


 彼女は煌びやかな赤いドレスを身にまとい、白銀の美しい長髪を後頭部の高い位置で一纏めにした姿で巨大な三女神像の前に(ひざまず)いていた。


 この部屋は一番奥の壁が一面のステンドグラスになっていて、その手前に、件の三女神像が鎮座している。

 そして、更にその手前に、これまたやはり巨大な高純度魔晶石(プリズム)が置かれていた。


 現在知られている魔力を帯びた石といったら魔鉱石と魔晶石の二つ。


 魔鉱石鉱山から取れる魔鉱石の中には魔晶石と呼ばれる魔力を含んだ結晶が混ざっていて、それを錬成することで一般に普及している、製品使用に耐え得る魔晶石となる。


 この魔晶石は魔法付与された魔道具のエネルギー源として使われることが一般的だが、中には更に純度を高めて巨大なものを生み出し、それ単体で別の用途に使われることがある。


 それが、この部屋に安置されている儀式用の高純度魔晶石だった。


 洗礼で使われる魔晶石にどんな儀式魔法が組み込まれているのかはわからないが、とにかく、儀式を受ける者たちはそのプリズムの前に設けられた一段高くなった祭壇に跪き、女神様へ身体機能の一部を供物として捧げ、その見返りにスキルを授かる。


 そして、スキルを授かったときに、プリズムと祭壇が七色に光り輝き、スキル名と効果内容が足下に表示されるといった仕組みとなっていた。

 俺は離れた場所にいたからよくわからなかったが、



「皆々の者! 聞くがよい! 女王陛下はこのヴァルトハイネセン王国王家に相応しい女神スキル『剣姫』を授かりましたぞ!」

「おお~!」

「素晴らしい!」

「やはり、武力に長けた血筋なだけはございますな」

「先代女王も『双剣の乙女』として勇名を馳せておられましたからな」

「うぅ……本当に。これで先代もご安心召されるであろう」



 周りの大人たちが仰々しいまでに感動を振りまく中、イリスレーネはにこりともせずに祭壇から下りると、侍女たちが控える一角へ移動していった。


 その際、俺と彼女は一瞬だけ目があったのだが、彼女はまったく笑顔を見せなかった。

 俺はそんな彼女を見て、薄らと笑みをこぼした。



 ――やはり、嫌われてしまったのかな。



 幼い頃は俺の顔を見る度に飛びかかってきたものだが、なぜか十歳を過ぎた頃から、徐々に態度に変化が見られるようになっていった。


 次期女王としての自覚が芽生えてきたのか、それとも成長と共に、俺への恋情に心変わりがあったのか。


 その辺はよくわからなかったが、ともかく、最近では顔を合わせても笑顔を見せるどころか、視線を合わせようともしなくなっていた。



「やれやれ……」



 寂しいようなほっとしたような、よくわからない感情に思わず頭をかいたときだった。



「素晴らしい! お前はやはり、我が公爵家の嫡男に相応しかったな!」



 一際野太い声が室内へと響き渡った。



「なんだ?」



 目を凝らしてそちらを見ると、人目もはばからず、宰相ことリッチ公爵が息子のレンディルを抱きしめていた。



「や、止めてください! 父上!」



 さも嫌そうにする青髪が美しいイケメン嫡男。



「女神スキル『聖剣』! 聖騎士の家系に相応しいスキルですな!」



 儀式を取り仕切っている大司祭を始めとして、宰相やレンディルの取り巻き連中が大騒ぎし始めた。

拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます!

『ブックマーク登録』や『☆☆☆☆☆』付けまでして頂き、本当に嬉しく思っております。

皆さんの応援が、執筆の励みとなっておりますので、今後ともよろしくお願いいたします(笑

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