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怒れる聖騎士2

【レンディルサイド】

 レンディルたち聖騎士が、白銀の甲冑に身を包んでいるのに対して、その男は全身どす黒い鎧に身を包んでいた。

 一部の噂によると、その鎧は元は白かったらしい。しかし、敵の返り血を浴び過ぎて、気が付いた頃にはどす黒く変色していたと言われている。


 それほどに、その金髪碧眼の男が浮かべる下卑た笑みにはどこか陰惨さを感じさせるものがあった。

 男の名はヒース・クリフトラス・セルフリードと言う。今年二十八歳になった彼はレンディル同様五公爵家の一つ、セルフリード公爵家の次男坊で、リッチ公爵家の影と目されているような家柄の息子だった。



「坊ちゃん、そのことでお耳に入れておきたいことがあるんですがね?」

「あ? ――なんだ、ヒースか。どうしたんだ?」



 眉間に皺を寄せて振り返るレンディル。

 ヒースはニヤニヤしながら口を開いた。



「実はですね、俺の方で独自の情報網を駆使してつい先頃まで街中を調査していたのですが、そのときにすこ~し、面白い話を耳にしましてね」



 聖騎士ではないヒースはレンディルの補佐役として幼少期から常に仕えてきている。

 切れ者で残忍だということをレンディルは知っていた。狙った獲物は絶対に逃さない。

 見つけ次第、この世のありとあらゆる残虐な方法を駆使して虐殺する。


 一部の人間の間ではそう噂されているぐらい、人格に難のある男。だが、それゆえに切れる。

 レンディルやリッチ宰相が彼を遠ざけない理由がそこにある。万策尽きたときのヒース。

 レンディルもそう認識していたから、本質的には潔癖な彼はこの男を甘んじて受け入れていた。



「よくわからないが、何かあるならさっさと教えろ」

「クフ。実はですね、坊ちゃんがお探しという例の三人組によく似た連中を見かけたという者たちを見つけましてね」

「なんだとっ?」



 レンディルは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。



「どこだっ。どこにいる!」

「まぁまぁ、落ち着いてください。その者らが言うにはですね――」



 終始いやらしく笑っている黒騎士は、自身が仕入れた情報を得意げに語り始めた。

 市場での目撃情報、この宿での目撃情報、そして、幻魔屋と北門南門の衛兵。

 そのすべてに共通しているのは背格好がよく似た黒ローブ姉妹と、そして、フレデリックによく似た少年。

 彼らは今朝早くにこの町を出発し、国境砦へと向かったと知らされた。

 しかも――



「リーンリヴァイアだと? ふざけた真似しやがってっ」



 バァ~ンっと、レンディルが思い切りテーブルに拳を打ち付けた。

 女神スキル『聖剣』の恩恵を受けた彼の拳は凄まじく、叩き付けられた丸テーブルが真っ二つに粉砕されてしまった。

 シーンとなるその場。

 酒場の主や店員たちも呆然と立ちすくんでいる。

 黒騎士ヒースは面白そうに肩をすくめたあと、



「偽の身分証を持っているようですし、おそらく既に奴らは国境を越えているでしょうね。ですが、さすがに我々はこのまま越境することはできません。一応軍隊ですからねぇ。どんな事情があったにしろ、国境侵犯と疑われても仕方ありませんからね」

「ちぃっ。だが! このままおめおめと逃がすわけにはいかん! なんとしてでも奴の首を取らねば気がすまん!」

「クフ。まぁまぁ、落ち着きなさいな、坊ちゃん。何も国境を越えられないとは言ってないでしょう?」



 そう言って、ヒースは手をパンパンと叩いた。

 それが合図となり、数人の男たちが店の中に入ってきた。



「なっ……!」



 レンディルはそれを目撃し、声を失ってしまった。

 二人の聖騎士に抱えられるように入ってきたひらひらした服を着た男。彼は全身血塗れで、半死半生となっていたからだ。



「どういうことだっ、なんだあいつはっ」

「クフ。元幻魔屋だった、ただの犯罪者ですよ。奴には密輸密売の嫌疑がかかっているのですよ」

「幻魔屋? 密売だと?」

「えぇ。奴は実に面白いことを教えてくれましたよ。逆賊どもが奴の店で何を買っていったのか。クフフ。どうです? 坊ちゃん。ここは一つ、演じてみてはいかがでしょうか? 我らも奴から幻魔を()()()()してもらい、ハンターとして越境するというのはいかがでしょう?」



 そう口にする黒騎士は、レンディルがこれまでに見たこともないほどの悦楽に歪んだ笑みを浮かべていた。

本作に興味を持っていただき、誠にありがとうございます!

『ブックマーク登録』や『☆☆☆☆☆』付けまでして頂き、本当に嬉しく思っております。

皆さんの応援が執筆の励みとなり、ひいては大勢の方に読んでいただくきっかけともなりますので、今後ともよろしくお願いいたします(笑

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