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あれから十年が経ちました

「はぁ……」



 ヴァルトハイネセン王国王都レグリオン。

 その貴族街区に邸宅を構えるラーデンハイド公爵家の大門前で、俺は溜息を吐いていた。



「どうしたんだい? 兄さん」

「ぃや、何……少々昔のことを思い出してな……」

「昔のこと……?」



 不思議そうに首を傾げる弟のクラウスだったが、俺はそれ以上の説明はしなかった。

 正確に言うと、これ以上何も思い出したくないといった方が正しいのかもしれない。



 ――ともかくだ。



「……あれから十年か。ときが経つのって早いよな」

「なんだよ、爺さんみたいな言い方して」



 ――前世の記憶を取り戻して早十年。俺は十五歳になっていた。



 俺たちが住まうここ、ヴァルトハイネセン王国では十五歳で成人となり、一月十日から一週間にわたって開催される新年祭に合わせて、成人の儀が執り行われることとなっている。


 そして、それと同時に行われる最も重要な式典。


 それこそがまさに、『運命の三女神』様から女神スキルと呼ばれる特殊技能を授かることになる洗礼の儀だった。


 この儀式は三女神様に体力や魔力といった身体機能の一部を捧げることで、初めて女神スキルと呼ばれる特殊技能を授かれると言われており、王国人であれば誰もが必ず受けなければならないともされていた。


 なぜ受けなければならないかというと、その理由は至って簡単。


 ここより北にある大陸最北端に『魔の領域』と呼ばれる死の大地があり、そこから湧き出る妖魔どもと戦うためには必須の力とされていたからだ。


 だからこそ、この国の者たちはみんな、妖魔に対抗するために編み出された神術、女神洗礼によってスキルを授かることが慣例となっていた。


 ――しかも、俺にとってはただの通過儀礼で終わらない。文字通り、今日が運命の分かれ道となるんだからな。


 幼き日に見た予知夢によれば、俺は洗礼の儀にて体力の一部を捧げた結果、『調理スキル』などという竜騎士にとってはまったくもって使い物にならない、どうでもいいスキルを手に入れてしまうらしい。


 そのせいで、その場に居合わせた大勢の人間に揶揄(やゆ)された挙げ句、ここぞとばかりに親父の政敵である宰相――リッチ公爵に問題視されるようになる。


 しかもこのとき既に、なんの因果か知らないが、未来視で見た俺も現在の俺もこの国の守護竜にして白焔の古代竜(ホワイト・ブラーナス)ジークリンデ本人から名指しで、『彼女』の背に乗ることが唯一許されている白焔の竜騎士ブラナス・デ・ドラグナーとして竜騎兵契約させられていたから、余計に質が悪かった。


 何しろジークリンデは竜種の中では最上位種に当たる存在なのだ。


 この大陸に一頭しかいないとも言われ、更に、彼女の強さは尋常ではなく、ただの人間ではとてもではないが、太刀打ちできない。


 それゆえに、彼女は王国人から神にも等しい存在として崇められていたのである。


 俺は改めて、自分の置かれた状況を見つめ直して溜息を吐いてしまった。


 どう考えたって、そんな凄い奴と契約なんかしてしまったら、目の敵にされても仕方のないことだった。


 最高の竜騎士と称えられている親父すら差し置いて、事実上、竜騎士の最高位に上り詰めてしまったんだからな。

 何より、その事実は宰相すら抑えて女王に次ぐ第二位の権力を掌中に収めたも同義だった。


 だからこそ、宰相閣下殿(あのやろう)はポンコツ女神スキルをきっかけに、ずっと目障りだった俺だけでなく、家ごと俺たちを潰しにきたんだろうけどな。


 このままいくと、本当に未来視で見た転落人生通りの未来が待ち構えていてもおかしくなかった。



 ――だったら、そうならないようにするしかない。



「あ、兄さん来たよ」



 物思いに耽っていたら、いつの間にか目の前に馬車が到着していた。

 俺はこれからこの馬車に乗って、王都郊外にある大聖堂へと赴かなければならない。

 そこで、文字通り運命の三女神洗礼が行われるのだ。



「じゃぁ、行ってくるよ」

「うん、がんばってきなよ」



 二つ年下の弟クラウスは、人懐っこい笑顔を向けてきた。

 馬車に乗った俺は、御者によって閉じられた扉の窓から外を眺めた。


 ゆっくりと走り出した馬車。

 徐々に見えなくなっていくクラウスの笑顔を見つめながら、俺は一人気合いを入れた。

拙作をお読みいただき、誠にありがとうございます!

『ブックマーク登録』や『☆☆☆☆☆』付けまでして頂き、本当に嬉しく思っております。

皆さんの応援が、執筆の励みとなっておりますので、今後ともよろしくお願いいたします(笑

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