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転生して未来視に目覚めた俺。追放や破滅の未来を変えようとしていたら、俺のことが好きすぎる幼馴染女王様に拉致された挙げ句、旅のお供にされてしまったんだが?  ~転生竜騎士と愛の重い逃亡剣姫  作者: 鳴神衣織
第12章 帝国編 ~断ち切られた絆と生まれる憎しみ~

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モレクス

 数十メートル先でひたすら死骸をむさぼり食っている三メートルほども背丈のある巨人。

 相変わらず奴の周囲には瘴気のような黒い靄が立ち込め、その全貌がまったく掴めなかった。



「あいつはいったいなんなんだ……?」



 先刻飲んだ回復薬のお陰で大分傷も塞がってきている上に、失った体力、気力、魔力もすべて全快していると思え、色んなものが漲っていたが、反面、全身が粟立つ感覚に悪寒が走って仕方がなかった。

 あんな敵、今までに一度たりとも遭遇したことがなかったのである。

 竜騎士として任務についていた頃、色んな妖魔や魔獣と戦ったことがあるが、そのどれとも一致しなかった。



「イリス。王家に伝わる伝説や禁書の中に、あいつみたいな奴って見かけたことあるか?」

「あるはずがないわ。あんな生き物が存在しているだなんて、聞いたこともないわよ。もしかしたら、お姉様なら知っているのかもしれないけれど」



 俺たち同様停車していた馬車の御者台に座っていたデールも眉間に皺を寄せた。



「いったい全体何がどうなっている? なんでいきなりあんな化け物が現れた?」

「それがわかったら苦労しない。だが――」



 俺はそこで言い淀んでしまった。

 夢の中に、確かにあいつが出てきたのだ。しかも、セルフリードによく似た黒騎士がそのすぐ側にいて、一人立っていた俺を見つめていた。

 あれが何を意味しているのかもわからないし、そんな夢を見たなんて言えるわけがない。

 しかし、



「一つだけ思い当たることがある。それは、奴が瘴気をまとっているってことだ」



 俺たちはこの旅の最中、何度もおかしな連中を見てきた。そのほとんどが瘴気に当てられたような姿となっていた。

 イリスもそのことに思い至ったらしい。愕然と俺を見る。



「もしかして、リヨンバラッドで見た暴漢って、まさか……」



 絶句する彼女のあとを継ぐように、エルレオネが口を開いた。



「暴漢が直接絡んでいるかどうかはわかりません。ですが、泉での邪霊や、鉱山の村で出会ったあの死人。あれも異常な存在でした」

「あぁ。そして、目の前の化け物は、あの骸骨野郎がいた森の中から出てきた」

「じゃぁ、全部あいつが犯人だってことなの?」

「わからない。だが、一つの可能性として言えることは、あんなおかしな生き物が普通に存在しているはずがないってことだ。そして、奴がまとっているのは瘴気。そうなれば、自ずと答えは見えてくる」

「……妖魔」



 そう誰かが呟いたときだった。



「ガアアアアア~~~!」



 死骸をむさぼり食っていた巨人が突如、天に向かって吠えた。その瞬間、口のような穴から何かを吐き出したのである。



「バカなっ。なんだあれはっ」



 俺は奴が吐き出したものを見て、思わず叫んでいた。

 次から次へと吐き出されるどす黒い生物。

 それは先程まで地面に転がっていた魔獣の骸や王国兵だったのである。

 しかも、そのどれもが腐った動物の死骸のような姿をしていて、俺たちの方へと歩き始めた。



「やはり、あいつが原因だったのか? 一連の異常事態は」



 呆然と呟く俺に、エルレオネが首を振った。



「そうではないかもしれませんよ?」

「どういう意味だ?」

「見てください。あれを」



 そう言って彼女が指さした場所。

 薄暗くなり始めている草原に浮かび上がっていたどす黒い巨人を包んでいた靄が、死人や死せる魔獣が吐き出される度に徐々に薄くなっていた。

 そして――



「なんだあれは……? 雄牛……なのか……?」



 遂にその姿を俺たちの目の前に晒した巨人。

 そいつは全身をどす黒い獣毛に覆われた二足歩行の雄牛だった。

 頭の左右には二本の長大な角を生やしていて、一見、魔獣として知られるミノタウロスにも似ていたが、決定的に違うところがある。それが、人型ではないということだ。



「妖魔の中にはモレクスという種類の巨大な雄牛が存在しているという話を聞いたことがあります。彼らは通常は四足歩行で移動しますが、敵と戦闘を行うときには二足歩行となって、特殊な技を使うこともあるそうです」

「てことは、やっぱり、妖魔ってことかしら?」

「どうでしょうか? モレクスに似ていますが、まったく別物のようにも思えます。ですが、今問題にすべき場所はそこではありません。あのおかしな生き物の肩に乗っている化け物です」



 目を細めるエルレオネの示す先。

 そこには、黒い甲冑の上にボロボロのローブを羽織った鬼が座っていたのである。



「……あいつは……!」



 俺はそいつを目にして息を飲んでいた。

 夢に出てきた空に浮かぶ甲冑男。

 てっきり、俺たち同様離れた場所で様子を窺っていたセルフリードの異端児だとばかり思っていたが、そうではなかった。



「あいつは……間違いない……! 妖魔だ!」



 俺のその叫びが合図となった。

 赤く目を光らせゆったりとこちらへ向かって歩いてきていた死せる化け物どもが、一斉に駆け出した。

本作に興味を持っていただき、誠にありがとうございます!

とても励みとなりますので、【面白い、続きが気になる】と思ってくださったら是非、『ブクマ登録』や『★★★★★』付けなどしていただけるとありがたいです。

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