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21コマ目 労力

DPの消費を少なくして菓子類の生産をする方法を発見した。

そこまでは良かったのだが、やはり問題は加工の部分となってくる。

チョコレートなどであれば形を整えることもそう難しくはないのだが、主な商品となるクッキーなどは切り取るなどして綺麗な一定の形に保つという事が難しい。

そこまでこだわる必要がないと考えるかもしれないが、できるだけマイナスな印象を持たれるような要素は減らしたいのだ。以前の方がおいしかったから戻してほしいなんて言われればたまったものではないのだから。


という事で加工用の機材が必要かとも思われたのだが、そこでDPを使う必要はないと待ったをかけるのが骸さんであり、


『余の配下ならそこまでバラつきなく加工できる。スキルの鍛錬にもなるだろうからまずはそれで解決できないか試してみるとしよう』


骸さんが加工に持ち出すのは、魔法が使えるタイプの配下。

その中でも特に風などの属性を得意とする配下を呼び出してスキルのレベル上げも兼ねた加工を始めさせて、次々とドロップアイテムと同形のクッキーから食べ物らしい形をした円形のクッキーを削り出させていく。


さすがに今までのようなまるっきり同じクッキーにするという事はまだ難しいようではあるが、それでもぱっと見では違いが分かりにくい程度にはなっていた。


「これなら問題ないでしょうか?」


「うぅん。これでも文句が出てくる可能性を考えるのであれば、新しいメリットを増やすことも考えた方がいいでしょうね。いっそのことクッキーの大きさを変えて今までより少しお得になったなんて言えばこれくらいの違いなら気にされるようなこともないのでは?」


『なるほど。形が違ってしまうのも大きくする関係上の問題としておけばそこまで批判も強くはならんか』


いないとは思うが文句を言ってくる人間がいる可能性も考えて、多少の形の違いなど気にならないような新しいメリットをくわえてみることにした。

ただ削り出す大きさを変えるだけであればそこまで手間も変わらないため加工する時の問題はさほどない。


こうした問題点の洗い出しとその対策をしばらく話していった後、新しくDPを消費せずに出すことのできるクッキーは一般のプレイヤーたちが購入可能なものとなり、


『ん?クッキーのリニューアル?』

『大きさが変わったのか』

『味もそんなに変わらないし…………お得になってるんじゃないか?最強ダンジョン、マジで最高!』


「ふむ。一通り音声を聞く限りは不満を口にする人数はあまり多くなさそうですね」

「今までの味が好きだったという人がいないわけではないですけど、人数としては極少数。切り捨ててもいいでしょうし、気になるようであれば少ししたところで今までのクッキーも購入可能にしておいてもいいかもしれないですね」


『味も問題がないと分かれば、相当なこだわりでもなければ新しい方に手を出すか。そうなれば今までの菓子類にかかっていたDPも0にはできないがそれでも大きく減らせはするであろうな』


「なるほど。ではそうしましょう。一度の不満は無視してもいいでしょうけど、そうした不満が少しずつ溜まって行ってどこかのタイミングで爆発につながってしまうわけですし」


かなり慎重な方向性で決定が行われる。

言ってしまえばここに来るようなプレイヤーは不満が溜まってもダンジョンに何かするのではなくただこのサーバを使用しなくなるだけだと思われるのだが、それでも少しでも不満を持たれないようにと動くわけである。


こうした慎重論を唱えるのは炎さんが主なのだが、ここで伊奈野は少し思うところがあった。

炎さんも普段ここまでの慎重さを見せるという事はないため何か裏があるように感じられ、


「実は何か不満を言っている人の中に目をつけてる人とかいました?」


「は?何の話ですか?特に目をかけているような人はいませんけど」


「普段と比べ物にならないくらいの慎重さなので、てっきり来なくなったら困る人がいるのかと思いました」


「特にそういう人はいませんねぇ。確かにクッキー目当ての人は攻略してくることもなくDPを落としてはくれますけど、逆にそれ目当ての場合そこまで落とす量も多くありませんし」


伊奈野はこれに何かしら炎さんの個人的な感情があるのではないかと考えていた。それこそ、もしかすると恋なのではないかと言う考えもあったくらいである。

しかしどうやらそんなことではないらしい。

炎さんには首を横に振られてしまった。

では、炎さんが気になる人がいるわけではないと言うのなら何が理由なのか。


「では、何か大事な計画を進めているとかですか?今は大きな動きをこっそりと進めているから、少しでも不確定要素を減らしたい、みたいな?」


「バレましたか」


どうやら伊奈野の感じていた違和感は間違いではなかったらしい。炎さんは何かやりたいことがあったようだ。

自分の観察眼に狂いはなかったと考えると同時に、伊奈野は若干の不満も覚えて、


「なんでそれを私に通達されてないんでしょうか。構わないと言えば構わないんですけど」


「ハハハッ。成功するかどうかわからなかったため成功したらサプライズで見せて驚かせようと思っていたんですよ。失敗すれば何事もなかったようにしていればいいだけの話ですしね」


『余もこんな事態が同時に発生することは予想外であったからな。どこで報告を挟むべきか迷っていたのだ。炎からはサプライズにしたいとも聞いていたしな』


「あんまり細かく報告されても特に何もできないので問題ないと言えば問題ないんですけど…………サプライズのためって言う理由で躊躇するのはやめてくださいよ」


伊奈野はあきれた表情を見せるが、炎さん達がそれを気にした様子はない。どちらかと言えば、サプライズに失敗して残念とでも言いたげな雰囲気だ。

そんな様子を見れば余計に伊奈野も言いたいことが増えてくるのだが、それをぐっと飲み込んでもう少し有益な話題へと転換させていく。

やはり1番気になる点は、


「結局、何をやるつもりなんですか?ここまで気を遣うってことは、ダンジョンの改装みたいな話になるんですよね?」


「はい。そうなりますね。実は呪術師が無限も劣化版みたいなものを作ってとある階層に設置したので、それを使えないかと考えていたんです」


「無限の劣化版、ですか?」


「はい。効果は単純に一定空間が本来の物よりも広くなるというだけのものなんですけど、今回試したいのはそういう事ではなく単純に移動させても禁忌は保った状態になるのかという事なんです」


「ぇ?そんなことをして大丈夫なんですか?禁忌って下手なことをするとダンジョンの崩壊につながりかねないんですよね?」


「ええ。ただ、自分の知識が増えてその辺りの事も分かるようになったので問題ないと思うんです」


「知識が増えた?どうして急に?」


「一応自分はサポート役として配置されているので、ある程度新しい事態にも対応できるように定期的に知識が更新されるようにはなっているんです」


「え?そうだったんですか?」


まさかの新事実に伊奈野は驚愕。

正直試しているサプライズを知ることよりもこちらの方が断然驚きは大きいだろうとすら思えるほどだった。

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