19コマ目 権限
怪しい服の人に渡された権限。
それはやはり特定の植物をダンジョンのある階層に群生地として出現させるという風にできるようなものであったのだが、まず渡す段階から問題がいろいろとあった。
ダンジョン側の仕様を知られるわけにはいかないため渡す権限をかなり厳密に定めておく必要があり、骸さん達も管理基準などをかなり細かく作ることになった。
そしてさらに言えば、ここで怪しい服の人はそれ以外の権限も一部求めてきたためそれも受け入れる必要が出たのである。
例えば、
『この装置が大量に欲しいので、これを購入する権限をもらえますかぁ』
『待っておれ。必要な金額を調べる』
『ではついでにこれとこれとこれの購入権限も欲しいんですけどぉ』
『それらを買えるほど所持資金は残っているのか?権限だけならば問題ないかもしれんが…………』
管理をさせるのにあたり、当然ながら怪しい服の人にもいくらかのDPは初期費用として渡してある。そこから先に追加で払うかどうかは先の展開次第だが、まず群生地を作る段階においてはDPが不足するという事はなかった。
ただ欲しい物を手に入れられると分かれば植物以外にも色々と手を出したいものはあるようで、怪しい服の人も新しく購入できる品目として追加するものをいくつもねだってくるようになる。
ダンジョン側としてもそれを断ることはないのだが、さすがにそれは想定した額のDPを用意できていないため購入には数が限られそうであった。
なお、怪しい服の人に対してDPの詳しい説明などは行っていない。
あくまでも購入するにあたり費用が掛かるという説明をしているだけで、入手方法など詳しいことは教えない。
さらに言えば使っているのは一般に使用されるお金と同じものだと怪しい服の人が誤解するような説明までしていた。嘘は極力つかないようにしているが、それでも誤認させるようなことはいろいろとしているわけだ。
幸い怪しい服の人はたいして資金を持ち歩いていなかったようであるため自分の金を使うように言ってくるという事もなく、しばらく誤解が解けることもなく進められるだろう。
「ダンマスのクッキーを売ってるのもいい材料になってそうですね」
『うむ。菓子類と言うたいして回復量が多いわけでもないものを大量に販売することで、こちらが金儲けをしているのだと誤認させることには成功しているだろう。もちろんただ金を集めるだけと言うのならばもっとやり方があるだろうからただ金を使えばそれでいいというわけではないことくらいは理解しているだろうが、逆にその理解が奴の思考を沼にはまらせる』
「そうして悩み始めると、前提を疑うのはきつくなりますからね。そこまですると考えることが多くなりすぎますし」
今の状況はダンジョン側にとっては都合がいい。
もし怪しい服の人が敵に回ったとしても、ダンジョン側は金を使っていると誤認させることができるかもしれないのだから。怪しい服の人の誤った情報が敵に広まれば、そのぶん本命の対策が減っていくことになる。
DPを得ることもそこまで難しくはないのではないかと思うわけだ。
なお、他の部分に関しても全てダンジョン側にとって都合が良いかと言われると必ずしもそうとは言えない。
細心の注意を払っているため仕様がバレると言ったことにはなっていないと考えられるが、何も制限がないと考えられることはないだろう。
ダンジョン側が急に許可を出した理由がバレないようにしなくてはならない。
ただ、そうしてリスクを取っただけのことはあるようで、
「グリモワールの知識量はかなり増えたみたいですね。植物以外にもいくつかモンスターなども追加されているみたいですし、ダンジョン側にも全くメリットがないというわけではないですか」
『初めて見るようなモンスターが多いな。とはいっても、余たちが知らぬものはリストに無いのだからそれも当たり前ではあるか』
怪しい服の人の知識はかなりうまく探ることができている。黒い本が目的としていた植物系の知識を吸収することはもちろん、モンスターや機材の知識もかなり増えている様子である。
ダンジョン側としてもダンジョンに配置できるモンスターと骸さんが配下にできるモンスターの種類が増えることは悪くないため、メリットはハッキリと感じられていた。
さすがにすぐに配置されるという事はないが、黒い本がそれらのモンスターに関しては調べて後日報告をしたのちに配置の検討が行われる予定である。
「アイテムの方はどうなんですか?反射とか無敵とかのアイテムがありました?」
『うむ。さすがに数は多くなかったがそういったものも確認できた。さすがに高すぎて大量に購入するという事は難しいが、余や一部のボスが装備しておくのはいいかもしれぬ』
「ボスもそういうモノって装備できるんでしたっけ?」
『可能だ。装備させるのにもそれなりのDPは使用することになるが、それでもあるのとないのとでは大違いであるな』
「それはそうでしょうね」
「ちなみに浅いところのボスにはかなり前から弱点への耐性がつくアクセサリーを装備させてますよ。あれがあるだけで突破法が実力をつけての力押ししかできなくなるのでかなり有用だと思います」
怪しい服の人が持っているのではないかと骸さんが考えていた、反射機能付きの装備。
これらもDPで交換できる欄に増えていた。
骸さんとしてはやはりあったのかと納得する程度だが、伊奈野や炎さんからすれば驚きは大きい。骸さんの話を完全に嘘だと思っていたわけではないが、複数種類備えているとは思っていなかったのだ。
なお、もちろんこうして表示されるアクセサリーなど装備に関しては全て知識にあるものが表示されるという仕様でもないため(日本サーバで使えるようにした武器などは出てこない)、これだけが全てでないこともまた恐ろしい。
出るものが複数個あるのだから、ダンジョン側では獲得できないようなタイプのアイテムはそれ以上あると考えて良いだろう。
怪しい服の人の評価は数段階上昇させなければならないようだった。
「1回反射するだけでは足りないでしょうか?」
「この数を見るとそう思いますよね。反射の使用で消費するものなどを考えれば反射させればさせるだけ追い込めることも間違いはないと思いますけど…………それでも消耗しきる前にこちら側が全滅しかねないというのが恐ろしいところではありますね」
「しかも、無限の応用での大した制限のない反射まで備えてますからねぇ。あれはいったいどうすれば突破できるのやら」
アイテムに技術に。怪しい服の人の手札はかなり多い。
真正面から襲うときはもちろん、奇襲を仕掛けたとしても簡単に終わらせてはくれなさそうだ。反射にしろ他の手段にしろ、骸さんの配下が攻撃してもそれをほとんど無効化し逆に利用されてしまうような手段は大量にあるわけだ。
「あの~。ここにあるペット用のアイテムって………」
『触手に使えるかもしれぬな』




