12コマ目 反射活用
『そういえば以前にも余の配下の防具に付与をしてもらっていたな』
「すっかり忘れてましたね」
実験結果を見た骸さんが自分の配下のにも反射の効果を持たせようと思って調べたところで、以前にも伊奈野が『反射』を『設置』した防具などを渡していたことが発覚した。
それにより伊奈野達も何となくそういえばそんなこともあったなと思い出し、さらにその『設置』されたものがあまり有効活用されていないのだという事も認識した。
忘れていた言うことは、今まで使ってこなかったという事なのだから。
そこまで覚えてすらいないようなものが本当に大事で必要なのかと伊奈野が不審に思い骸さんへと視線を向けると、気まずそうに視線をそらされる。
悪いことをしたという自覚はあるらしい。
「でも、これを覚えておけば無限の突破されそうなときの最後の足掻きとして使えましたよね。惜しいことをしました」
「最後の足掻き、ですか?そんなに使うようなところありましたっけ?」
「人数を多くして負荷をかけるという場合ではなく、強力な攻撃をして負荷をかけるというやり方をしてくるときには有効ではないですか?負荷をかけて崩壊させられても、逆にその攻撃を反射して攻撃の主は倒してしまうという事ができますから」
「なるほど。確かに場合によっては使えそうですね」
『反射なんてあるだけで強いからな。使いどころなど考えれば幾らでもあるだろう』
「ふぅん?で?骸さんはどういう風に使われたんですか?私が渡していた反射付きの防具」
『いや、それはその、な。何かあった時のための保険としておったのだ』
「ふぅ~ん?」
伊奈野はジト目を向けて骸さんを見ているが、骸さんの言葉自体は間違っていない。反射なんて考え用によってはどこでも使えると言って良いほどの万能なモノなのだ。
それがあるだけで、敵が火力を出し過ぎないようになるという大きなメリットがあるのだから。
そして、攻撃力を下げて突破してきたとしても、確実にダメージはいくらか与えられるというメリットもある。
長いダンジョンを持っている伊奈野達からしてみれば、そうしたダメージを積み重ねられる反射と言う力はあって損はないようなものだ。
特に、強力な攻撃を誘発させる仕組みとセットにしてしまえばかなり防衛能力が向上するだろう。
ということで、更にまたダンジョンの防衛能力強化のための検討会が開かれることとなった。
当然、議題はどうやって反射を使うか。
こうしていつの間にか無限対策からは思考が逸れていくのだった。
「1番楽なのはボスに反射機能付きの防具を着させてしまうことだと思いますが。あとは、確かギミック系のフィールドでは信じられないくらい高威力の攻撃も放てるものがあったはずなのでそれが反射出来るようにしてもいいかもしれませんね」
「それが1番簡単で1番ダメージは出せそうですよね。特にステージギミックにそういうものを仕込んでおくと確実に初めての人は失敗する機構になりますし」
『初めてではクリアできなくなっていてもう一度上からやり直させられるというのは誰にとってもつらいものであるからな。このダンジョンを本気で攻略しようと思っている存在がいるなら心を折るために使えるかもしれん』
このダンジョンにもいわゆる初見殺しの罠やギミックは大量に存在する。
使い方次第ではそうしたものがいくつか増えるだけという事になりそうではあるが、ダンジョン側からすればそれだけで攻略側の周回回数を増やせるのだ。決して悪い事ではない。
何せ時間が稼げるというだけではなく、相手のメンタルにもかなりのダメージを与えることができるのだから。
何度も襲い掛かる初見殺しの面倒なギミックと言うのはそういうものとしての楽しみ方ができない限りつまらないものに感じてしまうだろう。
そしてそれ以外にもボスなどにつけておくことで純粋に攻略を難しくすることもできる。
当然ながらここまでやってくる敵となると伊奈野ほどとまではいかずともかなりの量と速度の自然回復能力を持っているとは考えられるが、それでもタイミングがかみ合い回復が間に合わなければ反射の後のボスの攻撃で倒せてしまうなんて言う可能性もある。
ボスの攻撃と自分の攻撃のタイミングをしっかりと見極めなければならないという時点で厄介なことは間違いないだろう。
そしてまだまだ出てくる案は終わらず、
「気になったんですけど、床や天井に反射機能をつけておけば爆発のトラップの威力を高められたりしないでしょうか?爆風とか直接相手にぶつからないものをいくらか跳ね返すことで与えるダメージの効率を上げるみたいな形で」
「なるほど。それはいろいろなところで使えそうですね。爆発以外にも何かしらの被害を大きくするという使い方の物を考えればいいわけですし」
『それこそ、ばねを使うようなフィールドに上から反射も付与しておけば余計に跳ねるようになって攻略しにくくすることができるのではないか?』
「そういえば跳んだりするような能力がないと突破しづらくなっているばねのフィールドがありましたね。さらに跳ねやすくすればあそこの難易度をさらに上げることもできますか」
「それ、私が『設置』できるんでしょうか?そんなに難しい物だと私がいけない可能性がありますけど」
「あっ、それは~…………」
「おそらく問題ないだろう。転移を使えばどうにかなるはずだ。攻略側とは違って、わざわざそこまで跳ねていく必要もないのだからな』
小さいものから大きいものまで、新しい物から改良案まで。
様々な活用方法が出てくる。また少しダンジョン攻略が面倒なモノへと変わるのだった。
ダンジョンの難化と強化は留まることを知らない。
ちなみにかなり案が出始めると想像の翼を広げ過ぎて、
「ガラスに『反射』を一方だけ『設置』しておくことで、マジックミラーみたいにできたりしないでしょうか?」
「よく分かりませんけど、魔法みたいな鏡ですか?」
『反射』にできる限界を超えたことを始めようとしていた。もちろん、その辺りになると実験してみて失敗するという事が多くなるわけだが。
さすがに伊奈野が考えたような方法でマジックミラーを作ることは難しいのだ。そもそも、『設置』された『反射』が光だけを反射するという理由もないうえに、一方からだけのものを反射するような機能だってついていないのだから。
そして、こうした反射の流れはダンジョンの事が終わった後でも終わらず続く。
一旦ダンジョンの改装を終わらせたところで、再度骸さんは無限の突破法を考え始めて、
『ダンジョンマスターが使ったと言っていたからマネして、魔導銃でも持たせてみようかと考えたのだ。が。予想より威力が低くてな』
「あったんですか?貴重なものだって聞いた気がしますけど」
『あるにはあったのだ。余のコレクションの中に数個程度だがな』
魔導銃の威力不足。
伊奈野が持っているものとはまた違った構造ではあるのだが、魔力を消費して弾(レーザーでも可)を撃ち出すところは変わらない。
これを『反射』を使って改良し、
「銃口の内側に「反射」を『設置』しておけば、銃口内で威力が分散することを防げますよね」
『ふむ。確かに少し威力が上がった気がするな」
《スキル『武装改良1』を獲得しました》
骸さんが求める水準にまでは達しなかったものの威力を高めることにも成功しスキルまで獲得した。
間違いなく、反射とは使い勝手がいい部類に入る力なのである。
「…………どうやったら勉強に活かせるかな?これで私の速度があげられる気がしないよね」
誰が何と言おうと使い勝手がいい部類なのである。




