9コマ目 根本
使える攻撃手段が少なくて困ったよ~と伊奈野が嘆いていたところ上位存在さんが新たなスキルを与えると申し出てくれた。
どうやら上位存在さんは知り合いから貰ったもののようなのだが、
『そのものが言うには、妾の攻撃に憧れて作ったスキルのようなのじゃ。妾のものより数段劣るが似たような攻撃ができるようになるらしい。妾に憧れるというのも嬉しくはあるんじゃが、数段劣るものをわざわざスキルで持っておく必要が特にないじゃろ?』
『それは確かにそうですね。必要な機会は全く思いつかないです…………でも、スキルって作れるものなんですか?』
『うむ。作れるぞ。1000年に一度くらいじゃがそういう人間が出てくるときがある。本人の才能とたゆまぬ努力によって、大概は寿命が来る10年くらい前から作れるようになることが多いのぅ。これを作った輩は渡してきた20年後に老衰しておったから、それなりに優秀だったんじゃないじゃろうか?』
上位存在さんが言葉にする者は伊奈野とスケール感がかなり違うが、それだけにこのスキルを作ったという人の優秀さがよく分かる。
ただ逆に考えると、その優秀な人の力をもってしても再現することまではできなかったと言うわけだ。出来た物は、本物に数段劣るまがい物であるということでこれもまた上位存在さんの上位存在らしさが分かるエピソードだろう。
ただ上位存在さんはどうやら別の事が気にあるようで、
『それこそ、今の英雄だとか準英雄だとか言われている者達であればできるものもあるのではないか?寿命を免除されていたり克服していたりするものが多いのじゃろ?』
『どうでしょう?そういわれるとそんな気もしてしまいますけど、スキルが作れるだなんて話は聞いたことがないですよ?』
ただ忘れているだけかもしれないが、そういう話であれば誰かしらから聞いていてもおかしくはない。
それこそ伊奈野の知り合いには英雄か準英雄がいるという事なのでそういうところから話が出てきてもおかしくないように思うわけだが、聞いた記憶がない。
だが、納得できる部分がないわけではない。
何でも店などでスキルの取り扱いはしているらしいし、それこそスキルのスクロール伊奈野も店主さんから貰ったり贈り物としてもらったりしている。
そうしたものの出所はダンジョンやモンスターからのドロップアイテムだと考えてみることもできるが、その場合供給が安定しない。それこそ同じスキルを販売するという事が非常に難しくなるような気がするわけだ。
しかし人工的にスキルを作ることができるというのならば話は別。
作ることができるペースやリソースにもよるが、安定的に販売しそれなりの利益を確保することができるように思うわけだ。スキルがやすいとは到底思えないし、販売する側としても悪くない収入源となるだろう。
『そういう人もいるなら納得ですね。私も作れるようになれば、こうして攻撃手段に困るという事はないんでしょうか?』
『どうじゃろうな?妾はスキルをどうやって作るのかなどは知らんし、何とも言えん。もしかすると自分の持っているスキルしか獲得できんかもしれんしのぅ』
『でも、それだと貰ったスキルのように新しいスキルを開発するというのが難しいんじゃないですか?』
『いやいや。妾に憧れて練習しておったらたまたまそういうユニークスキルを獲得したという可能性もあるぞ。数段劣るにしても完成させられたのなら十分認められるものになるじゃろ』
『なるほど?』
ユニークスキルの話にあると伊奈野は理解があまり進んでいないため何も言えない。
ということで、スキルを作れるだとかの話は一旦ここで終わり。
そちらに関しては本題でも何でもないため終わらせても問題なく、どちらかと言えばスキルを獲得する方が大事であり、
《スキル『黒流波1』を獲得しました》
『『黒流波』ですか?」
『そんな名前じゃったかのぅ?妾のものは通常攻撃程度じゃから特に名前もつけておらんかったが、スキルになっているなら名前もつくものか」
特に何も問題はなく伊奈野はスキルの獲得に成功した。
名称は『黒流波』。
名前からは黒い何かが出るのだろうという事は予想できるのだが完全には分からない。
そういうわけで、すぐに試してみようという流れになる。
伊奈野も目的はかなり忘れてきているが自分の無限迷路対策ができると乗り気であり、すぐにその場で試すことになって、
「小籠包(『黒流波』)」
『うぅん。掛け声がダサイのじゃ』
上位存在さんに笑われながらもスキルを発動する。
即座に伊奈野のMPは一瞬ではあるものの4分の1ほど消え去り、代わりにその手から予想通り黒っぽい物が飛び出る。
そしてそのまま奥の暗闇へと消えていった。
これはつまり、
『な、なにが起きたんでしょう?遠くが見えないのでサッパリどうなってるのか分からないです』
『そういえばそうじゃったな。すっかり忘れておった。とはいっても、そう難しいことは起きていないぞ?予想通りになっただけじゃ。特に問題もなくまっすぐ黒い物が進んでおる。実際に妾が受けたわけではないから正確なことは言えんが、威力も特に低くはないじゃろう。並の人間であれば3回当てれば確実に消し飛ばせるはずじゃ』
『お、おぅ。結構な威力ですね』
『妾のに数段落ちるという程度じゃからそれくらいはな。逆にこの程度もできんようでは妾の攻撃に近いなんて言えんのじゃ』
伊奈野は全く手元から出て行った後の事が認識できなかったため、上位存在にその先で起きたことの説明を求めた。
解説された内容は想定内の内容であり、威力の高さに驚きこそするもののそれ以外に特に気になる物はない。これは使えるだろうという確信が伊奈野にはあった。
『…………で、これって何に使うんでしたっけ?無限の対策として使うんですよね?』
『そうじゃな。負荷をかけるために当たらぬ限りどこまでも進み、なおかつそれで相手の禁忌を崩壊させた後集中砲火によって発動者を確実に仕留められる威力を求めたんじゃろ?』
『ということは、私が無限を対策することはできたという事ですか。でも、なんでそんな風に私が対策をする必要があったんでしたっけ?』
『それは…………何でじゃろうな?というか、どうしてお主がそれを忘れておるのじゃ?』
上位存在さんと伊奈野はそろって不思議そうにする。
しかし、これも仕方のない事ではある。
ここに行きつくまで様々な話の脱線がおこなわれたため、本質的な部分を忘れてしまうのも無理のない事なのだ。
伊奈野はしばらく考えた後、
『無限の対策が必要なことは間違いないんです。ダンジョンに一緒にいる人 (?)から案をもとめられたので上位存在さんに意見を聞きたいなと思ってきたわけですし。しかし、それはその人 (?)が求めていたのであって特に私が必要としていたわけではないんですよね』
『ふむ。そういわれるとそうじゃったような気もするのぅ…………どうにかする手段がないかと問われただけで、お主が突破したいという事を最初は言っていなかったような気がしてきたのじゃ』
『ですよね?』
ここで2人ともやっと気づく。
本題である、骸さんがどう無限を突破するのかという部分には全く回答を出せていないのだという事を。
『そういうことなら、お主が代わりに戦って倒せばよいのではないか?今の使えるようになったスキルがあればさして困難もなく倒すことはできよう』
『そこまでしてあげる理由がないんですよね。これは結局のところダンジョンの外で戦う場合を想定しているので、できれば私が戦う以外の方法を取りたいんです。私は、そもそもダンジョンのある世界だとダンジョンから外に出るつもりはあまりないですし』
『うぅむ。それは難しい話じゃな。その知り合いにスキルを習得させられるなら解決するかもしれんが、世界が違うとなるとちと面倒なんじゃよなぁ』
結局のところ、糸口は視えたものの基本的には伊奈野が強化されるというだけの結果で終わるのであった。
黒流波は「邪王炎○黒龍○」をイメージしています
スキルのレベルが上がるとあんな感じになる予定です




